わたしたちは、いつ死が訪れるかわかりません。生きている限り、いつだって死は隣り合わせ。「わたしはまだ大丈夫」と思っていても、人生とは明日何が起こるかわからないものです。
もし明日あなたの身に何か起こったら、あなたは家族に迷惑をかけない自信がありますか? あなたの所持しているものたちが、あなたの家族に多大な迷惑をかけることになるかもしれません。家族には迷惑をかけるつもりはないけど、「まだ若いから」とか、「まだ元気だから」ということを理由に、身の回りの整理をしておかないことはナンセンスなのです。
簡単チェック!生前整理と遺品整理の違い

「生前整理」と聞いても、あまりピンとこない人も多いかもしれません。「遺品整理」であれば、なんとなくイメージができる人も多いのではないでしょうか。まず、生前整理と遺品整理の違いについて確認をしていくことで、生前整理についてイメージしやすくなるはずです。生前整理と遺品整理の違いをチェックしてみましょう。
生前整理と遺品整理は、「いつ行うか」「だれが行うか」「なんのために行うか」「なにを行うか」という観点からみて、それぞれ違いがあります。
1.いつ行うか
いつ行うか | |
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生前整理 | 自分が死ぬ前に行います。 |
遺品整理 | 自分が死んだあとに行われます。 |
2.だれが行うか
だれが行うか | |
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生前整理 | 自分ひとりで行う。 もしくは、自分ひとりで行うのが怪我や病気で困難な場合は、家族に手伝ってもらいながら行います。 |
遺品整理 | のこされた家族が行います。 |
3.なんのために行うか
なんのために行うか | |
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生前整理 | 残された家族が、相続でトラブルをおこしたり、なぜこのようなガラクタを取っておいたのかと、遺品整理で大変な思いをしないために行います。 |
遺品整理 | 残された家族が、故人の財産や所持品を、 故人のことを思いながら処理します。 |
4.なにを行うか
なにを行うか | |
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生前整理 | 相続争いなどのトラブルを未然に防ぐ環境を整えておいたり、不要なものをあらかじめ処分しておいたりします。 |
遺品整理 | 故人の遺品を処分したり、遺された財産を家族で分けたりします。 |
つまり、生前整理とは家族のためを思って自分が行なっておくもの、遺品整理とは、故人のことを考えて家族が行うものと言うことができますね。
生前整理のメリット

生前整理をしておくことによって、自分自身にとっても家族にとってもさまざまなメリットがあります。
1.残された人生のプランについて考えるきっかけとなる
生前整理とは、不要なものや、持っている財産の整理をすることだけを目的としているわけではありません。これまでに築いてきた人間関係や、自分の残された人生のプランについても今一度見つめ直し、整理をしていくこともその目的のひとつです。
自分にとってこれからも良好な関係を続けていきたい大切な人たち、そしてその人たちとやりたいことなどについてリストアップしてみましょう。そうすることで、自ずと残された人生をどのように過ごしていきたいかについて見えてくるはずです。
2.残された家族のトラブルを回避する
生前整理として、財産の相続についてしっかりと整理を行なっておくことで、残された家族が無駄な相続争いになってしまうことを回避することができます。自分の残した財産のせいで家族の関係がギスギスしてしまうのは、とても残念ですよね。残された家族の関係を良好にするために、財産の整理はしっかりと行っておきましょう。
財産の整理については、エンディングノート(のちに詳しく説明します)などに書き記しておいてももちろん良いのですが、それではあまり効力がありません。法的効力のある「遺書」として残しておいた方が安心かもしれませんね。
3.残された家族の負担を軽くする
遺品の整理をすることは、残された家族にとって、肉体的にも精神的にもとても大変なことです。不要なものを前もって自分で処分しておけば、残された家族の負担を軽減することができるのです。
4.思い出のものを大切にすることができる
生前整理を行うことは、自分の所持しているものについて改めて見直す良いきっかけとなります。必要なものと不要なものを分別しながら処理をしていくうちに、本当に残しておきたい「思い出のもの」の存在に気がつくことがあるでしょう。
思い出のものは、自分にとってとても大切なものであるにも関わらず、普段はタンスや引き出しの奥にしまいこまれていることが多く、なかなかそれらについて思い出す機会が少ないかもしれません。生前整理の作業をきっかけにそれらを掘り起こし、今後の人生で大切に扱っていくことができるでしょう。
5.片付け費用を安く済ませることができる
生前整理や遺品整理を行うとき、片付けに要する時間や手間のことを考慮した上で、それらを専門に行っている業者に依頼をするケースが増えてきています。その際、遺品整理よりも生前整理のほうがかかる費用が安く済む傾向があります。生前整理では、上手に業者を利用することによって、時間も手間も、さらにはお金もあまりかけることなく、簡単に身の回りの整理を行うことができるのです。
遺品整理になるとデメリットも

生前整理を行わないと、自分が死んだあとに残された家族が遺品整理を行うことになります。生前整理を行わずに遺品整理となってしまったとき、いくつかのデメリットがあげられます。
1.思い出のものもそうでないものも一緒の扱いをされてしまう
あなたの家族があなたの遺品を処分しきれずに「こんなガラクタいっぱい集めて!」と大変な思いをしていたら、悲しいですよね。
遺品整理では、当然あなた以外の人が整理を行うことになりますので、あなたの大切な所持品、とりわけ大切な思い出のものが、そのほかのものと同じように扱われてしまう恐れがあります。自分の死後、思い出のつまった大切なものが雑に扱われてしまうことは、とても残念なことです。
そうなってしまわないために、自分が生きている間に、自分の意思で大切なものや思い出のものをちきちんと仕分け、自分が死んだ後、それらをどのように処分をしてほしいかついて書き記しておくことが大切なのです。
2.残された家族に負担がかかる
遺品整理は、先にもあげた通り、家族にとって大変な負担です。特に生前に全く整理を行なっていなかった場合、所持品が増え過ぎてしまって、家族にとっては何が何だかわからないといった状態になってしまっていることもあります。その膨大な所持品の中から、あなたの大切なものを探し出そうとしても、探し出すことは至難でしょう。
また、財産についても生前からきちんと整理をしておかないと、残された家族にとって、それらの管理が大きな負担となってしまいます。売ることができる不動産や車などは自分でできるうちに処分を済ませ、財産はできるだけきれいな状態にしておきましょう。
3.片付け費用が高額に
遺品整理では、専門の業者に丸々任せているケースが多く見受けられます。子供が実家から離れて暮らしている場合は、なおさらです。
故人の遺品を整理することは大変な負担や手間がかかるため、専門の業者に丸投げしてしまったほうが遥かに楽なのです。そのため、片付け費用も生前整理をする場合と比べて高額になりがちです。残された家族に負担をかけないためにも、わたしたちは生前整理をしておくべきなのです。
生前整理のやり方とは

1.エンディングノートを作成しましょう
生前整理を行う上で、まずエンディングノートを作成することをおすすめします。エンディングノートとは、自分が生きているうちに、残された家族へ伝えたい事柄やメッセージを綴っておくノートのことです。家族への大切な思いや、所持品の管理・処分方法、財産や相続に関することまで、死んだあとに家族に残しておきたいさまざまな事柄を綴っておくことができます。
また、エンディングノートを作成することは、生前整理を行う上でその手順を確認したり、作業の意欲を向上させたりすることにも役立ちます。生前整理を行うことを決めたら、ぜひ一冊のノートを準備してみましょう。
コクヨやNHKマガジンムックなどから、書き込み式のエンディングノート、もしもの時の役立つノートが1,000円以下で販売されています。
2.不要なものを処分しましょう
エンディングノートを通して、自分の所持しているものを「不要なもの」と「必要なもの」に分けることができたら、早速不要なものの処分を行いましょう。不用品の処分については、量が多いようでしたら不用品回収業者に依頼をしても良いでしょう。一度で全ての不用品を引き取ってくれるため、とても便利ですよ。
また、不要なものは、なにも「物」だけとは限りません。人間関係で整理をしておきたい人物や、不要な財産、最近では不要なデータもありますよね。自分の所持している全てのものについて、きれいに整理をしておきましょう。
プロの専門家に遺品整理を頼んだ場合の料金相場

遺品整理をプロに頼む場合は、部屋の広さや部屋の数で金額が変わってきます。全国的な遺品整理の相場は、ワンルームマンションで5万円から10万円程度、2LDKで15万円前後、3LDKで20万円から25万円程度となっています。
もしも親が亡くなった時に、何もしていないとお金がこれだけかかってしまいます。元気なうちに家族で協力して整理したいものですね。
まとめ
生前整理とは、自分の死に向かって行うネガティブな行為というイメージを持たれやすいですが、実は残された家族のことを考えたとてもポジティブな行為。生前整理を始める時期に、若さも健康状態も関係ありません。大切な家族のためにも、今からでも生前整理を行っておくべきなのです。