「孤独死」という言葉、大変恐ろしいですね。もし自分が孤独死したら、どうしようかと誰もが思う世の中になりました。
年間約3万人の方が孤独死していると言われています。交通事故の死者は1年間に全国あわせて約4100人前後ですので、いかに多いかがわかります。
ここでは、今回は孤独死とは何なのか、なぜ孤独死が起こるのか調べてみました。
データから見た孤独死
孤独だと死亡率が高くなる?
厚生労働統計協会によると、20歳以上の全ての年代の男女において、一人で暮らしている人のほうが、誰かと同居している人よりも自殺死亡率が高くなっています。
80歳以上の男性の自殺死亡率は、独居老人の場合と家族と同居している人と比べると約7倍でした。80歳以上の女性の死亡率は男性よりも低く、独居老人のほうが同居している人と比べると約3倍でした。男性の場合も女性の場合も、独居老人だと死亡率が高くなるのがわかります。
東京都観察医務院のデータによると、東京23区内で平成15年に孤独死した方の数は1441人でした。
その後、平成19年に2341人になり、平成24年には2727人になりました。このデータから10年前の約倍の人が孤独死していることがわかります。
孤独死するのは男性?女性?
東京都観察医務院のデータによると、東京都内での孤独死の件数をみると、昭和62年は男性が788人、女性が335人で、平成18年は男性が2362人、女性が1033人になっています。
20年前も20年後も、男性は女性の倍以上、孤独死している人が多いのがわかります。
孤独死の死亡リスクは何歳が多い?
日本少額短期保険協会のデータによると、男女とも60歳から69歳が3割以上を占めました。
その次が70歳から79歳です。
20歳から59歳までの現役世代も全体の3割で、孤独死が老人だけの問題ではないことが読み取れます。
東京都観察医務院のデータによると、東京23区に住む人の場合、孤独死のピークは男性の場合は70歳から74歳と、85歳以上に分かれていますが、女性の場合は年齢を重ねるごとに孤独死になる傾向があります。女性の場合、孤独死の割合は85歳以上が一番のピークでした。
死後何日経って発見されることが多い?
東京都観察医務院のデータによると、亡くなった後の発見日数は、昭和62年では女性の場合では3日程度、男性の場合は7日程度でした。それが平成18年には女性の場合が6.5日、男性の場合が12日となっています。このデータを見ても、20年間で亡くなってから発見されるまでの日数が多くなっているのがわかります。
また、日本少額短期保険協会のデータによると、孤独死してから発見までの日数は3日以内が35%、4日から2週間以内が31%、15日から29日が17%でした。90日以上の方も2.3%います。この回の調査では、発見まで1511日(4年以上)かかった方もいました。
一般的には亡くなってから1週間以上、誰にも発見されない場合を孤独死と読んでいるようです。
第一発見者は誰?
日本少額短期保険協会のデータによると、男性の場合の第一発見者は住まいの管理人や大家さんでした。その次が親族、友人、福祉の人と続いています。女性の場合の第一発見者は、4割が親族でした。その次が他人、友人、管理人と続いています。
男性と女性の暮らしぶりの違いが浮き彫りになる調査結果です。
何県が一番孤独死する?
日本少額短期保険協会のデータによると、日本全国の中で約26%が東京での孤独死でした。
東京以外の関東での孤独死は33%を占めます。
一番孤独死が少ないのが中部(新潟、富山、石川、福井、山梨、長野、岐阜、静岡、愛知の9県)でした。
孤独死したタレントは?
タレントの山口美江や飯島愛さん、女優の大原麗子さん、歌手の川越美和さんは、孤独死したタレントとしてよく知られています。
華やかに見える芸能界で活躍していた方たちだけに、世間に衝撃を与えました。
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そもそも孤独死とは
孤独死の定義
孤独死という言葉と聞くと、1人で住んでいる貧しい老人が、急に具合が悪くなって誰にも助けに来てもらえずに家の中で亡くなっている、というような何となくイメージすることはありますが、具体的には何を指しているのでしょうか。
実は、孤独死については警察や厚生労働省などでも定義がまだされておらず、それだけに近年にあらわれた現象と言えるでしょう。
孤独死ではない異常死
東京都監察医務院では、孤独死を「異常死の内、自宅で死亡した一人暮らしの人」と定義付けています。1人で部屋の中で死んでいたとしても、自殺や他殺、殺人などは孤独死には該当しません。
異常死とは、自殺や事故、病死の他、死因がはっきりしないけれども亡くなっていることを言います。東京23区の場合は、異常死の場合、東京都監察医務院が遺体を調べて解剖して死因を調査します。
そのため、孤独死についてのデータは東京都監察医務院が多く持っているのです。
孤独死が増加している原因…
40年以上前から問題はスタートしている
1970年代後半に「独身貴族」という言葉が流行しました。
結婚しないので、お金や時間を自分の好きなことに自由につかえるシングルをさす言葉で、うらやましくもあり、使い方によってはイヤミでもある言葉でした。
1970年代の独身貴族達が、今や孤独死をむかえているわけです。
1960年代から核家族という言葉が頻繁に使われるようになりましたが、これは夫婦と未婚の子供、もしくはDINKSと呼ばれる夫婦のみの世帯、そして父親もしくは母親と未婚の子供といった世帯を指しています。
日本の場合、1920年にはすでに核家族は人口の55%をしめていたため、核家族が孤独死の直接の原因ではないようです。
孤独死の原因となったのは、独身貴族という言葉が流行したのと同じ1970年代後半頃から、高齢の親と子が離れて住まなくては生活できないようになったからです。
例えば、地方では就職先が無く東京に出稼ぎに行く人が増えたことや、産業構造的に東京でないと仕事ができなくなったこと、そして転勤というシステムによって一時的でも家族が別れてすまなくてはいけなくなったことがあげられます。
離れて住む親の介護問題
かつては実家に兄弟姉妹のうち誰かがいて親の面倒を見ていたケースも多かったので、老人の孤独死を防ぐことができました。しかし、地方では仕事が無いことから、子ども世代が地方から都会に働きに行くようになり、孤独死が増えるようになりました。
また、親と離れて暮らすことで、親の病気に対して子供が気付くことができなくなっていることも確かです。毎日一緒に住んでいれば、ちょっとした様子の変化から脳梗塞の前兆など病気の兆候を感じ取る場合もあります。しかし離れて住んでいると、年に数日会う程度では、老いなのか病気の前兆なのかを見極めることができません。
ヘルパーさんなど福祉の方も、面倒は見てくれますが、家族のように長時間一緒には時間を過ごしていません。家族でないとできない細かい気づかいを、してあげられない遠い距離子ども世代が住んでいるのも孤独死の原因になっています。
近所付き合いがなくなった
自分の家が一軒家で代々住んでいる場合は、隣近所との付き合いが比較的多くあります。
町内会の回覧板や、近隣の公園の掃除など、付き合いがある分しなくてはいけない付き合いも比例して多くあります。
その付き合いの中には必ずしも楽しくないこともあり、そういったわずらわしさを避けて都会のマンションに移り住む人もいます。
都会の場合は、隣の部屋の住人の名前や職業、家族構成を知っている人のほうが少ないでしょう。
マンションの管理組合でイベントが頻繁に行われていれば知人もできますが、賃貸の場合は自分についても知られたくないし隣人について知りたくもないという人がほとんどです。
40年ほど前は都会のマンションや団地でも、近所付き合いがありました。
マンションであっても盆踊りや餅つきなど、町内会のイベントが住民の交流会であり、待ち遠しいイベントでもありました。
一戸建てだから、マンションだから、という住まいの形態の違いではなく、人と自分との区切りを明確につけてプライバシーを重要視する社会のあり方に問題があるのではないでしょうか。
孤独になったら死を待つだけ?
内閣府の高齢者の生活をまとめたデータによると、60歳以上で単身で住んでいる人の場合、誰とも話さずに一日終わる人が30%近くいます。短い人でも2日、3日は誰とも言葉を交わさかかったり、一週間に1回程度誰かと会話をする程度という人もいます。
親世代にはスマートフォンやパソコンを買い与えてあげても、使いこなせない人もおり、電話が連絡手段メインである親世代と、メールやLINEが連絡手段のメインである子ども、孫世代とでは、連絡ツールが違うことも疎遠になる理由の1つでしょう。
孤独になったら死ぬしか無いという状況にならないように、誰かと会話するよう心がけたいですね。
孤独死を防ぐために
孤独死を防ぐためのグッズ
象印では「iポット」というサービスを2001年から開始しています。
離れて住んでいる親が湯沸かしポットを使うと、子どもなど家族にメールが行くというシステムです。
ポットは毎日、比較的同じ時間に使うものなので、見守り機能を持たせてたわけです。
牛乳やヨーグルトを毎朝販売店から届けてもらうという方法もあります。
しかし配達地域に限りがあり、あまり乳製品が好きではない人にはお金がかさむだけという場合もあります。
「見守りくん」という製品もあります。
これは、トイレマットの下にセンサーをセットして、センサーが18時間以上反応しなかったら設定した3ヶ所にメッセージが送られるというものです。
センサーの電池は3年間で、一度購入すれば料金はほとんどかかりません。
ペンダント式やスイッチ式の孤独死防止グッズは、つけ忘れたり無くしたりしがちですが、トイレマットの下に置くスイッチなら紛失することもありません。
死にいたる病、心も体も健康に
孤独死が少しでも気になったら、今日から健康に気をつけましょう。孤独死は現役世代でも有りうることなので、年齢には関係ありません。健康に気をつけすぎるということは無いので、飲酒や喫煙、暴食などに気をつけて、適度な運動を心掛けましょう。
キルケゴールは「死にいたる病」とは絶望だと指摘しました。小林秀雄によると中原中也の死因は「孤独病」なのだそうです。肉体だけでなく心も健康でいたいですね。
温度差に気をつける
孤独死をした人は、トイレやお風呂で亡くなった方も多く見られます。
冬場になると居間とトイレやお風呂は温度差があり、ヒートショック現象になりやすいのです。
ヒートショックは急激な温度変化によって体に影響を及ぼすことを言います。
寒い風が吹いてくるとゾクッとするのもヒートショック現象の1つです。
温かい部屋から、急に寒い部屋に行くと心筋梗塞や脳梗塞で倒れる方がいるのもこの現象です。
トイレを暖房便座に変えたり、お風呂に入る前に風呂場を温めておくことで予防することができます。
暖房便座に変えられなかったら、トイレの窓にカーテンをつけるのも良いでしょう。
お風呂に入る前に、シャワーでお湯を高い位置からバスタブに向けて当てると、温かい蒸気が風呂場全体を包んでくれます。
段差に気をつける
年をとると、わずかな段差でつまづいたりします。
お洒落に気を使っている人は、靴を変えるのを嫌がりますが、ころんで怪我をするよりも歩きやすい靴にかえたほうが自分の健康のためでもあります。
また、敷居や延長コードなど、家の中にあるわずかな段差でころぶこともあります。
足元が弱ってくると、急激に老化するとも言われています。
怪我をして歩けなくならないように、段差の上はカーペットで覆ったり、部屋用のスリッパを歩きやすいものにするなど工夫をしましょう。
死にたくなるのをさけるために、地域の人と関わりを持つ
孤独死以前に、すでに今現在孤独を感じている人も多いものです。
インターネット上でチャットやメールをしていても、リアルな人との会話が無いと孤独感はますます広がっていきます。
SNSで気の合う仲間に出会ったら、オフ会に足を運んでみましょう。
いくつか違うオフ会に行けば、少しは話のあう人が必ずいるはずです。
町内会のイベントに参加してみたり、住んでいる地域のボランティアに加わってみたりするだけでも人とのかかわり合いが広がります。
忙しくて仕事以外は時間が無いという場合は、いつも行っているコンビニや飲食店で、あいさつ以上の軽い会話をしてみましょう。
話す内容よりも「誰かと話している自分」「孤独ではない自分」を感じることが大切です。
地元の店はスタッフが近所に住んでいることも多いので、人との輪が広がるかもしれません。
知らない人との話題は、天気の話題でも、昨日のニュースの話でも、近所に新しくできたお店の話題でも何でも良いでしょう。
孤独死の遺体処理現場
外国人も気になる日本の孤独死
2015年4月には、ジャパン・タイムズやメイル・オンラインといった海外向けのメディアで日本の孤独死のことが取り上げられました。「世界で最も悲しい職業」というタイトルで、孤独死した人の部屋をクリーニングする特殊清掃業者のことが特集されたのです。
記事には白い防護服にマスクをした特殊清掃業者の仕事ぶりが何枚もの写真付きで紹介されています。遺体は警察が搬送しているものの、ゴミだらけの部屋や、大量のハエ、台所で腐った食べ物といった衝撃的な写真ばかりで、思わず言葉を無くしてしまいます。
印象的なのが、部屋に上がる前に亡くなった方に対して手をあわせている特殊清掃業者の写真と、亡くなった方の個人情報を守るため、遺品の中身を一つひとつ丁寧にチェックしている仕事ぶりです。
もう死んだからといって、全てをゴミ扱いにするのではなく、亡くなった方の人間としての尊厳を守っている姿が心に残る記事でした。
孤独死はテレビやメディアも注目
2007年1月25日に「ひとり団地の一室で」という番組がNHKスペシャルで放送されました。40代から60代の男性が、家の中で孤独死するケースが増えているという内容でした。彼等は、裕福ではないけれどもある程度のお金も持っていました。しかし、街のボランティアの方々が心配して家に来てくれても、それを受け入れずに孤独を選んで暮らしていました。引きこもっている状態から孤独死したというわけです。
2010年1月31日にNHKスペシャル「無縁社会~“無縁死” 3万2千人の衝撃~」が放送され、こちらも大変な反響がありました。この「無縁社会」という言葉が2010年の流行語大賞のトップテンにも入っています。テレビ番組がきっかけとなって、孤独死は社会的な現象として次第に注目されるようになったのです。
日本の孤独死は「ジャパンズ・ロンリー・デス(Japan’s Lonely Death)」として海外でもたびたび報道されています。また、英語版のWikipediaには「Kodokushi(孤独死)」の項目も立てられています。こういった海外の反響は、先進国として豊かになった日本が、心の豊かさを置き去りにしてしまったことを物語っています。
まとめ
自分が孤独死するのではないかという心配以前に、自分の親が孤独死しないかも心配になります。
アパートやマンションを経営している方にとっては、住民が孤独死したらどうしようという不安もでてきました。
もし自分の家族が孤独死したら、もしくは貸している部屋の人が孤独死したら、どうしたら良いのでしょうか。
遺体だけは警察が搬送したとは言え、清掃はとても個人で行えるものではありません。
心情的にも耐えきれません。
そのような作業は、専門業者に清掃してもらいましょう。
清掃代金は数万円から数十万円と、亡くなった状態や場所、腐乱状態などによって金額に幅があります。
その上、フローリングや畳の張替え代金なども加わるので、決して安くはありません。
近年は、大家さんのための孤独死対策保険もできました。
まさに、一人ひとりがまわりの人や社会とどのように関わるかが、問われている時代とも言えるでしょう。
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