ゴミ屋敷の原状回復費用は特殊清掃に依頼することで決まります。費用を負担する人については、貸主と借主が話し合って決めていくのが一般的。本記事では原状回復費用の内訳と相場や業者の選び方、安くするコツなどを解説します。これから原状回復を始める人には必読の記事となるでしょう。
ゴミ屋敷の原状回復費用は誰が支払う？
ゴミ屋敷を解決する作業は「ゴミの片付け・整理」と「リフォーム等で住む前の状況に戻す原状回復作業」に分かれます。
特殊清掃に依頼すればどちらも一緒に進めてくれるので、悪臭がしみついているようなお部屋の場合は依頼しましょう。
- 生ごみなど腐りやすいゴミが放置されている
- ペットの糞尿被害がある
- 悪臭やシミなどが取れない
- 探さなくても害虫が見つかる
特殊清掃を呼んだ時に問題になるのは「どこまでが通常の使い方に入るのか？」ということ。通常の使い方と認められた部分と経年劣化の修繕費用については貸主負担※になります。
※貸主…部屋や家を貸している方。
ここで国土交通省が発行している「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を確認していきましょう。
A:通常の住まい方、使い方をしていても発生すると考えられるもの
出典: https://www.mlit.go.jp
B:賃借人の住まい方、使い方次第で発生したりしなかったりすると考えられるもの（明らかに通常の使用等の結果といえないもの）
A(+B)：基本的には A であるが、その後の手入れ等賃借人の管理が悪く、損耗等が発生または拡大したと考えられるもの
ゴミ屋敷になってしまったのは借主（部屋を借りている人）の責任ですので、ゴミ屋敷の整理・処分に関わる費用は借主負担です。
カビや腐敗した部分に関しても「通常の使い方ではない」として借主負担になることが多いでしょう。
しかし経年劣化のために傷んだ部分の回復や通常の生活でも発生するレベルの汚れは、次の住人のために貸主（部屋を貸している人）が回復させる部分。
そのためリフォームによる修復費用に関しては、話し合いを挟んで貸主が部分的に負担するのが一般的な流れになります。
| 借主負担 | 貸主負担 |
|---|---|
| ゴミ屋敷の整理・処分費用 カビや腐敗した部分の修繕 | 経年劣化で傷んだ部分の回復 通常の生活で発生する汚れ 次の住人のためのリフォーム |
この負担額に関しては入居前に結んだ契約書によって変わる部分もあるので、話し合いの前に契約書を確認しておきましょう。
原状回復費用に関しての話し合いが長引き裁判に発展した事例もあります。ゴミ屋敷の原状回復費用を貸主・借主のどちらが負担することになるかは、入期間や状態によって異なるでしょう。
ゴミ屋敷の原状回復費用の相場
ゴミ屋敷の原状回復費用に関してはゴミ屋敷の程度によって変わります。
| 費用の 目安 | 備考 | |
|---|---|---|
| 大規模な ゴミ屋敷 | 数十万 | 一軒家や長期間放置していた場合などは50〜80万程度。 |
| 中規模の ゴミ屋敷 | 15~50万 | 一軒家のひと部屋だけや、マンションなどのゴミ屋敷。 |
| 小規模の ゴミ屋敷 | 3万円前後 | 床だけにゴミが散らばったり衣類が溢れているようなゴミ屋敷。 |
大まかな目安を見ていきましょう。
大規模なゴミ屋敷解決の費用の目安
重度のゴミ屋敷の場合は片付けとリフォームに数十万円の費用がかかります。重度のゴミ屋敷例は次のとおり。
- ゴミが天井まで積み上がっている
- トイレ・台所がゴミで埋まり本来の使い方ができない
一軒家で長期放置していた場合などは50～80万円程度必要になる可能性もあります。費用が決まる基準は放置時間とゴミの種類です。
悪臭が家にしみついていたり通常の方法で落とせない汚れがあるのであると、解体・リフォームが必要なので高額になりがち。
また害虫が大量に発生している場合も「害虫が好む臭い」がしみついている可能性が高いのでリフォームで対処する必要があります。
とはいえ重度のゴミ屋敷に関しては業者に現場を見てもらい、見積もりを取るまで正式な費用は予想できません。複数の会社に相見積もりを取り相場を把握していきましょう。
特殊清掃に依頼する費用については基本的に借主負担です。ただし経年劣化による原状回復に当たる部分も入って来るので、後日貸主側と話し合いの場を持つことになります。
中規模のゴミ屋敷解決の費用の目安
一軒家のひと部屋だけがゴミであふれていたりマンションがゴミ屋敷になっていたりする場合、15〜50万円ほどの現状回復費用が必要です。
放置時間が長く悪臭がしみついてしまっているのであれば、解体やリフォームが必要なので現状回復費用が50万円近くになるリスクも。ゴミを片付けるだけでいいのであれば、そこまで高額になることはないでしょう。
この場合も業者に現場を見てもらい、見積もりを取った方が正確な費用が分かります。複数の会社に見積もりを頼み相場を把握していくことをおすすめします。
重度のゴミ屋敷と同じく、費用の負担に関しては基本的に借主です。経年劣化による原状回復に当たる部分も入って来るので、後日貸主側と話し合いの場を持つことになります。
小規模なゴミ屋敷解決の費用の目安
部屋の床にゴミが散らばったり衣服をうまく収納できていない程度のゴミ屋敷ならば、家事代行業者・片付け業者などに片づけてもらえばOK。
腐ったゴミの放置がなかったり害虫が発生していないのであれば３万円前後で終わります。
この場合は清掃業者への依頼費用が借主負担です。貸主の負担は借主撤去後の通常の原状回復費用のみになります。
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ゴミ屋敷で損害賠償は起こせる？
賃貸をゴミ屋敷にされたことに対して、貸主側が損害賠償を請求したり借主側の費用負担を増額させたりするために裁判を起こすことは不可能ではありません。
しかし貸していた期間や生活の仕方などで貸主側の要求が却下された判例もあります。一方で貸主側の主張が認められたケースもあるので、一概に「勝てる・勝てない」とは言い切れないのが現状です。
確実に言えるのは、裁判には弁護士などに依頼する費用や時間・気力が思った以上に必要になるということ。
貸主と争うだけのメリットがあるのか考えてからにしましょう。
もし賃貸でゴミ屋敷が発生してしまった時、貸主側がとるべき行動についてはこちらの記事で解説しています。
ゴミ屋敷のための特殊清掃の選び方
ゴミ屋敷解決のために特殊清掃を呼ぶ時はまず相見積もりをとります。
ゴミ屋敷清掃や原状回復の費用は業者の料金表のみでは分かりづらいため、実際に現場の様子を伝えて見積もりを作成してもらうことで相場を把握するのが重要です。
最低でも3社程度には依頼し、作業内容や担当者の対応・料金を比較していきましょう。各社の見積もりで比較すべきチェックポイントは下記の4つ。
どのように確認するのかも解説します。
ゴミ屋敷解決における
見積書のチェックポイント
- 解体やゴミ処理のための専門資格があるか
- 明確な料金体系と無料見積もり対応有無
- サイトに汚部屋清掃の実績が掲載があるか
- 大家・管理会社と依頼人のあいだの連絡をサポートしてくれるか
解体・ゴミ処理の専門資格について
ゴミ処理のためには一般廃棄物収集運搬許可証が必須になるので確認しておきましょう。
部屋に悪臭や落とせない汚れが染みついている場合は解体・リフォームが必要になり、解体工事登録を持っていることも大切です。
料金体系について
業者が資格を持っていることを確認した後は、料金体系をチェックしていきます。ゴミ屋敷の清掃は高額なので安い業者を選びたいですよね。
しかし、見積書に片付けの合計金額のみを安く提示するような業者は悪徳業者の可能性が高いです。
契約を結んだあとに高額請求を受けるトラブルがよくあるので、トラブルを防ぐためには合計金額だけではなく料金体系に注目しましょう。
見積書の作業内容についてキチンと説明してくれる業者が安全です。
大家や管理会社との連絡サポートについて
最後に確認しておきたいのが、依頼主であるあなたと大家・管理会社との連絡をサポートしてくれるサービスはあるかということ。
賃貸の原状回復作業はトラブルになりがちですが、第三者を挟むとスムーズにすすみます。
特殊清掃業者の料金相場はこちらの記事で解説しています。相見積もりを取る前はぜひご一読ください。
ゴミ屋敷の原状回復費用を安く抑える方法
ゴミ屋敷の原状回復にかかる費用を安く抑える方法は下記の2つ。
- 自分でできる範囲の片付けは自分で行う
- 不用品を売りに出す
たとえ自分で全てを片付けることができなくても、途中まで作業を進めていれば業者の作業時間が短縮され依頼費用を安くすることができます。
また片付け中に状態のいい家電や家具が見つかれば、売りに出して費用を回収することも可能です。
タスくん少しでもいいので自分で作業を進めておくと結果的にお得ですね！
注意
重度のゴミ屋敷になるほど上記の方法は使えません。
なぜならカビ・腐敗・害虫の発生があるような重度のゴミ屋敷は自力での掃除はそもそも困難で、売れるレベルの不用品はまず見つからないからです。
重度のゴミ屋敷の場合、頼りになるのは各自治体で制定されている条例や補助金。自治体の規模に関わらず設定されていることがあるので、一度役所に問い合わせてみましょう。
自治体によってはゴミ屋敷解決のために活動している地域の団体を紹介してくれるケースもあります。
ゴミ屋敷の原状回復に関するトラブルの相談先
ゴミ屋敷の片付け・リフォームではトラブルがおきやすいもの。ここでは、おすすめの相談先と事例について解説していきます。
自治体の役所
ゴミ屋敷の片付けのために使える条例・補助金について知りたい場合は各自治体の役所に相談します。条例がなかったとしても、市役所の総合窓口に相談すると状態に合った団体を紹介してもらえる場合もあります。
補助金や条例の範囲に関しては、ゴミ屋敷の住人本人だけでなく、ご家族・友人でも質問することができます。住人本人が片付けを渋っている段階ならば、説得の材料として相談してみましょう。
賃貸物件のオーナーがゴミ屋敷に対処する場合も、自治体に相談することで対応を代わってもらえる場合があります。ゴミ屋敷の対処は一人では難しいため、第三者を挟むのがおすすめです。
自治体への相談が
必要な人は？
- ゴミ屋敷に住む本人
- ゴミ屋敷住人の家族や友人
- 賃貸物件のオーナー
賃貸物件のオーナー
もし近所の物件がゴミ屋敷になって困っているのであれば、その物件の大家さんや管理会社に連絡しましょう。
「悪臭で困っている」「ゴキブリが増えて困っている」こんな風にゴミ屋敷に文句を言いたい人もいるかもしれませんが直接会いに行くのはやめましょう。必ずオーナー側を頼るようにしてください。
今ゴミ屋敷に住んでいるという人は、基本的に特殊清掃に依頼すればOKです。
特殊清掃のあとに退去する場合、原状回復作業の費用分担については賃貸物件のオーナーと話し合う必要があるかもしれません。
賃貸物件のオーナーに
相談が必要な人は？
- ゴミ屋敷の近所に住む人
- ゴミ屋敷住人の家族や友人
弁護士
ゴミ屋敷の原状回復費用に関して話し合いの場を持つ時は、弁護士を挟むのがおすすめ。特にトラブルに発展している時や協議が必要な時は早めに依頼しましょう。
この時注意したいのは、弁護士は法律に関わらない部分については積極的に動けないということ。「悪臭で近隣から苦情が出た」などのケースは、立証がなかなか難しいという意見があります。
ただし金銭のからむ問題は貸主側・借主側だけで解決するのは困難です。最初は無料相談を利用して、自分にあった弁護士を探しましょう。
弁護士に
相談が必要な人は？
- ゴミ屋敷に住む本人
- 賃貸物件オーナー
カウンセリング
もしゴミ屋敷の住人が片付けを嫌がっているのであれば、カウンセリングを受けてもらうのがおすすめ。
オンラインでゴミ屋敷専門のカウンセリングを行なっている先生もいるので、合ったものを選んでいきましょう。
ゴミ屋敷に関しては精神的な病気が原因の場合もあるので、再発防止のために受ける人もいます。
カウンセリングへの
相談が必要な人は？
- ゴミ屋敷に住む本人
- ゴミ屋敷住人の家族や友人
ゴミ屋敷とか関わるが深い病気に関しては、こちらの記事で解説しているので、ぜひご覧ください。
警察・消防署
ゴミ屋敷のゴミが道路に出てしまっているレベルならば、警察に相談するという手もあります。道路までゴミがあふれているのであれば、交通の妨げになるという理由で注意することができるのです。
ペットの飼い方が不適切なケースも、動物愛護法に反するため動いてもらえるケースがあります。
とはいえ警察には民事不介入という原則があり、ゴミ屋敷を片付けるためには基本的に動けません。相談するとしたら「道路までゴミがはみ出て危ない」というケースになるでしょう。
またゴミ屋敷の解決には役立ちませんが、ゴミが外からも見えるレベルであれば消防署への報告もおすすめです。
ゴミ屋敷は火災や放火の可能性が高いので「近所にゴミ屋敷があって不安」と伝えておくことはできるからです。
ゴミ屋敷の近くで火災が起きたときには気を配ってくれますし、ゴミ屋敷の住人に注意してくれるケースもあります。
警察・消防署への
相談が必要な人は？
- ゴミ屋敷の近所に住む人
- ゴミ屋敷住人の家族や友人
ゴミ屋敷の原状回復に関してよくある質問
- 原状回復費用を支払うのは誰？
-
特殊清掃を呼ぶための費用は、原則ゴミ屋敷の住人が払います。
場合によっては、依頼費用の中のいくらかが「次の住人のための修復作業」に該当する可能性があるので、貸主負担になることもあります。
- ゴミ屋敷の原状回復を安くするためにはなにが必要？
-
ゴミ屋敷を片付ける際には、できる限り自分で片付けをし、その中で出た不用品を売りに出してから業者に依頼するのがおすすめです。
原状回復にかかる費用そのものは相見積もりで安い業者を探していきましょう。
ただし、安さを優先して業者を選ぶと悪徳業者と契約してしまうので、作業内容や対応についてしっかり確認することが大切です。
- ゴミ屋敷の清掃はどの業者に頼むべき？
-
害虫が出たり、カビや腐敗が出てしまっているレベルの重度のゴミ屋敷であれば特殊清掃がおすすめです。
自分でも整理できる程度の軽度のゴミ屋敷であれば、家事代行業者・ハウスクリーニングでも構いません。
ゴミ屋敷の片付け業者に関しては、こちらの記事で詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。
タスクル
汚部屋の片付けを業者に依頼する料金相場は？サービス内容も必ずチェック 汚部屋は放置しておくとリスクもあるので早めに片付けをする必要があります。片付けはプロに任せてしまうのがもっとも効率的でおすすめです。この記事では汚部屋の片付けを… - 賃貸のゴミ屋敷を防ぐためにはなにができる？
-
賃貸物件のオーナーは、定期的に住人とのコミュニケーションをとることでゴミ屋敷の早期発見・予防につながります。
「定期的に部屋を人目にさらす」ことそのものがゴミ屋敷の予防になるので、家賃の集金などを直接行うのも効果的です。
賃貸物件のオーナーがゴミ屋敷問題に関してできることに関しては、こちらの記事でも解説しています。
タスクル賃貸物件がゴミ屋敷になってしまったら？賃貸オーナーが取るべき行動4選 – タスクル 自分が所有する賃貸物件がゴミ屋敷になってしまったら、早めに対処する必要があります。ゴミ屋敷になってしまった物件を放置すると数多くのリスクがあるので注意しましょう…
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