相続した親の家を解体して建て替える、古家付の土地を購入して古家を解体後に注文住宅を新築する、住まなくなった家を解体して月極駐車場として有効活用する………など家を解体する理由は様々ですが、そこでネックになるのが解体費用のことです。
本記事では、家の解体工事の費用相場や費用を安く抑える方法などをご紹介します。
解体工事の費用の内訳とは?
家屋の解体工事には、人件費や重機の使用料、解体した廃材の搬出処分費など以外にも様々な費用が発生します。
解体工事を依頼する際にはまず解体業者から見積もりをとるところから始まると思いますが、解体工事に必要な工事項目を理解していないと、 見積書が適正なものなのかどうかをチェックすることができません。
そこで解体工事の費用の内訳にはどの様なものがあるのかを見ていきましょう。
【足場、養生費用】
家屋を解体する際には、粉塵や騒音、振動の発生は避けられません。
鉄筋コンクリート造や鉄骨造の建物に限らず、木造家屋の場合でも近隣の住民に対して迷惑をかける恐れがあります。
こうしたことから解体現場では、解体する建物の周囲に足場を組み、防音パネルや防塵シートで覆って、近隣への対策を施します。
そしてこれらの費用は、見積書の中に「仮設工事」として記載されます。
【解体工事費用】
家屋本体の解体費用です。
解体工事にかかる人件費や廃材の搬出処分費などが含まれます。
多くは坪単価×坪数で算出され、坪単価は建物の構造や立地条件、周辺環境などによって異なります。
【付帯工事費用】
ブロック塀や門扉、カーポート、物置、植栽などの家屋本体を除いた部分の解体費用は、付帯工事費用として記載されるのが一般的です。
後から追加工事として請求されてトラブルになるケースが少なくないので、あらかじめ解体する範囲を取り決めしておくことが大切です。
【埋設物の撤去費用】
浄化槽や便槽などの地中に埋まっているものの撤去費用になります。
あらかじめ存在が確認されているものについては、はじめから見積書の中に記載されていますが、解体工事中に地中から想定外のコンクリートガラや木片、ゴミなどが発見される場合があります。
実際に地面を掘り起こしてみないとわからないので、この様な場合には追加工事費用を請求されます。見積書には、「別途工事」として記載されるのが一般的です。
【重機回送費】
家屋の解体工事では人力だけでなく、油圧ショベルなどの大型の重機が使用されます。
こうした重機を現場に搬出入するためには、運搬車両のリース代やドライバーの人件費、ガソリン代などがかかるので、見積書に重機回送費として記載されるのが一般的です。
【整地費用】
家屋の解体後に重機等で地面を平らに整地するための費用です。
解体業者によっては解体工事費用の中に含めて見積書を作成する場合があります。
【諸費用、諸経費等】
家屋の解体では、各都道府県に届け出が必要になります。
この様な申請手続き費用や、解体業者の諸経費が見積書に記載され、現場によってはアスベストに関する調査費やアスベストの撤去費用が別途必要になる場合があります。
解体工事費用が決まる要因4つ
家屋の解体には費用の目安があるといっても、実際には様々な要因によって費用が増減します。
そこで解体工事費用が決まる要因にはどの様なものがあるのかを見ていきたいと思います。
【解体する家屋の構造、規模】
木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造などの建物構造や、階数、建物の面積などによって解体費用に差が出ます。また、地下室がある場合には費用が増大します。
【立地条件】
解体する家屋の現場周辺の状況によって、たとえ同じ構造・規模の建物であっても、解体費用が大きく変わります。
たとえば、閑静な住宅街である、周辺に家屋が密集している、前面道路と敷地に大きな高低差がある、狭小敷地である、などといった場合です。
この様な場合には、特別な防音対策が必要になったり、重機が搬入できずに手作業での解体が必要になったり、解体に手間がかかったりするので、費用が割高になります。
【周辺道路の状況】
解体工事中には、大型の重機の搬出入や、産業廃棄物を搬出するための車両の出入りなど、周辺道路には頻繁に大型車両が通行する様になります。
そのため周辺道路の状況によっては、交通誘導員の配置が必要になったり、車両規制があって大型車両が進入できなくなったりする場合などがあります。
またそうした場合には、小型車両での廃材運搬や小型重機での解体作業になってしまうため、解体費用が割高になります。
【付帯工事費用の発生】
家屋の解体には時々、通常のケースにはない特別な事情が伴う場合があります。
その中のひとつが有害物質として指定されているアスベスト(石綿)の存在で、築年数の古い家で使用されていることが多い建材です。
人体に健康被害をもたらす可能性が高いアスベストの除去には、特別な対策を施す必要があるため費用がかさみます。
また、地面の下に以前の建物のコンクリート躯体などの地中障害物が残っている場合があります。
地中の障害物まで撤去するとなると高額な費用がかかるので、昔の建物の地下部分がそのまま地中に残っていたという事例は決して少なくありません。
こうしたものが解体工事中に見つかった場合には、解体工事費用が膨らんでしまいます。
【解体工事業者】
工事を依頼する解体工事業者によっても費用が大きく変わることがあります。
また解体費用相場は、地域や解体する時期によっても変わります。
ハウスメーカー、住宅会社に解体工事を依頼すると住宅会社の利益や経費が見積金額に上乗せされるので、費用が割高になります。
したがって解体工事は繁忙期(12月や2~3月)をできるだけ避け、解体工事業者に直接依頼するのが解体費用を安く抑える秘訣です。
20坪の解体工事の費用目安
家屋の解体工事費用は、躯体の構造によって解体のしやすさが異なるので、目安となる金額が変わります。
つまり構造が頑丈になるほど解体に手間や時間がかかって廃棄物の処分費が高くなるので、一般的には木造<軽量鉄骨造<重量鉄骨造<鉄筋コンクリート造の順に解体費用が高くなる傾向があります。
因みに軽量鉄骨造と重量鉄骨造の違いは、骨組みとなる鉄骨に使用されている鋼材の厚みによるもので、厚さ6mm以上の鋼材が使用されているものが重量鉄骨造で、6mm未満の鋼材が使用されているものを軽量鉄骨造といいます。
解体費用の相場は、1坪(畳2畳分)あたりの解体費(坪単価)で表されるのが一般的ですが、解体する家屋が小さくなるほど狭小地や住宅密集地などの手間のかかる地域が多くなるので、坪単価が高くなる傾向があります。
解体する家屋の坪数が20~30坪程度の場合には概ね以下の様な目安になります。
・木造 4~5万円/坪
・軽量鉄骨造 6~6.5万円
・重量鉄骨造 6.5~7万円
・鉄筋コンクリート造 7~8万円
坪単価の目安がわかれば、解体費用は、解体費=坪単価×坪数で計算することができます。
したがって20坪の解体工事費用の目安は以下の通りです。
・木造 80~100万円
・軽量鉄骨造 120~130万円
・重量鉄骨造 130~140万円
・鉄筋コンクリート造 140~160万円
しかしこれらの費用相場には地域差があり、首都圏と地方などでは坪単価が1~2万円ほど違ってしまうこともあります。
50坪の解体工事の費用目安
解体工事の坪単価は建物の坪数にも関係し、一般的には解体する家屋の坪数が大きくなるほど坪単価が下がる傾向があります。
したがって解体する家屋の坪数が50坪の場合には、20~30坪程度の場合と比較して若干坪単価が下がるのが一般的です。
また50坪くらいになると、軽量鉄骨造と重量鉄骨造の価格差もほとんどなくなります。
よって解体する建物が50坪程度の場合の坪単価の目安は以下の様になります。
・木造 3~4万円/坪
・鉄骨造 4~5万円/坪
・鉄筋コンクリート造 5~6万円
したがって50坪の解体工事費用の目安は以下の通りです。
・木造 150~200万円
・鉄骨造 200~250万円
・鉄筋コンクリート造 250~300万円
100坪の解体工事の費用目安
坪数が増えると坪単価は徐々に下がる傾向がありますが、100坪程度になる場合は、階数が3階建て以上になることが多くなります。
坪数が100坪程度の場合の解体費用の坪単価の目安は以下の通りです。
・木造 2.5~4万円/坪
・鉄骨造 4~5万円/坪
・鉄筋コンクリート造 5~6万円/坪
したがって100坪の解体工事費用の目安は以下の通りです。
・木造 250~400万円
・鉄骨造 400~500万円
・鉄筋コンクリート造 500~600万円
尚、解体費用を相場だけで判断してしまうのはリスクがあります。
作業にかかる日数や、必要な準備、解体作業中の近隣対策などが立地条件によって大きく異なるため、条件によっては相場の2倍近い金額がかかってしまうこともあります。
したがって費用について正確に知るためには、解体業者に現地を確認してもらった上で見積もりを出してもらう必要があります。
上記費用は、あくまでも目安として参考にする様にしましょう。
解体工事の費用を安く抑える方法2つ
解体工事は建築工事と異なり、後に残るものが何もないので、費用はできるだけ安く抑えたいものです。そこで解体工事費用をできるだけ安く抑える方法をご紹介します。
【自分でできることは自分で行う】
解体工事で発生したゴミは「産業廃棄物」として扱われる様になるので、一般の家庭ごみとして処分することができなくなり、処理費用が割高になります。
そのため家電や家具などの家財は、あらかじめ粗大ごみとして自治体に回収してもらったり、リサイクルショップなどの不用品買取サービスを利用したりすることで、処分費用を節約することができます。
また不要になった日用品や衣類なども、家庭ごみとして自分で「一般廃棄物」として処分することで解体費を削減できます。
【相見積もりを取得する】
解体工事は、業者によって費用のバラツキが非常に大きくなる傾向があります。
適正な価格で発注するためには、複数の業者から相見積もりを取得して比較することが大切です。
解体工事には補助金が使える?
家屋の解体工事には国の助成制度はありません。
しかし多くの自治体では、古い家の解体についての助成制度を設けています。
近年深刻な社会問題になっている空き家問題の対策として、多くの自治体が「空き家解体補助金」「老朽危険家屋解体撤去補助金」などといった呼び名の補助金制度を設けているので、該当する各自治体のホームページなどで確認してみると良いでしょう。
補助金を受けられる条件や補助金の額などは自治体ごとに異なりますが、補助金は概ね解体費用の1/5から1/2程度が支給されるケースが多い様です。
ただし事前に申請が必要なケースもあるので、適切な時期に自治体に申請手続きを行わなければなりません。
また解体工事後に新築住宅を建てる場合には、解体費用を住宅ローンに組み込むことが可能です。
その他、売却を前提に家屋の解体を行う場合には、空き家解体ローンやフリーローンの利用が可能になります。
解体工事を依頼する時の注意点
解体工事には、騒音や振動の発生、粉塵の飛散、廃材搬出車両の駐停車などが伴うので、工事中に近隣住民とトラブルになってしまう事例が少なくありません。
近隣とのトラブルが発生すると、その後のご近所づきあいにも大きく影響します。
また、廃材などの産業廃棄物の処理についても、適正に処理する様に法令で定められているので、解体業者には許可や申請などが欠かせません。
さらに解体現場では作業員の労災事故も多いので、現場の管理をしっかりと行うことができる解体業者に依頼することが大切です。
したがって見積金額の安さだけで選ぶのではなく、数多くの施工実績がある信頼できる業者を選ぶことが重要になります。
自分で解体業者を探して直接依頼することもできますが、ハウスメーカーや不動産会社などから信頼できる解体業者を紹介してもらう様にすると、より安心できるでしょう。
解体工事をして売るメリット・デメリット
古家があったままではなかなか買い手が見つからないという理由で、仲介不動産業者に古家の解体を勧められることがあると思います。
それでは、古い家屋を解体して更地にしてから売却する場合には、どんなメリットとデメリットがあるのでしょうか。
【解体工事をして売るメリット】
家が古くて価値がない場合には、「古家付土地」として土地の値段だけで売りに出すことができます。
しかし買主の立場から考えると、購入後に自分で古家を解体しなければならないので、余分な手間やコストがかかってしまいます。
したがって、購入するのを躊躇してしまうことにもなりかねません。
すなわち、早期に売却するためには、古家を解体して更地にしておく必要があります。
【解体工事をして売るデメリット】
古家を解体して更地にしてから売りに出しても、解体費用を土地の値段に上乗せして売却できるとは限りません。
すなわち解体費用を自分で負担することになってしまう可能性があります。
また、更地にしてから売却できるまでに時間がかかると、解体した建物へは固定資産税が課税されなくなりますが、土地の固定資産税は最大6倍になってしまうので、結果的に固定資産税が跳ね上がってしまうことにもなりかねません。
まとめ
家の解体費用は、100万円以上の高額になるのが一般的です。
解体工事費用にはある程度の金額の目安はあるものの、建物の構造や規模、立地条件、周辺道路の状況、付帯工事、工事時期、地域性、解体業者などの様々な要件によって費用が大きく変わってしまうという特徴があります。
また、アスベストや地中障害物の有無によっても金額が大きく変わるので、事前の調査などをきちんと行うことが大切です。
しっかりと現場を調査した上で、わかりやすい見積書を作成してくれる業者が信頼できる業者と言えます。
一方、事前に粗大ごみや家庭ごみを処分しておくなど、自分でできるコストダウンの手法もあります。
いずれにしても、信頼できる解体業者を探すことが最も重要になるので、スケジュールに余裕を持って計画を進めることが大切です。