ゴアテックスは一年中使用可能な優れた素材ですが、実際にその手入れ方法は知らないという人も多くいるのではないでしょうか。しかし正しい洗濯方法を知ってしまえばとても簡単です。
本記事では、ゴアテックスの正しい洗濯方法から洗濯後の仕上げ方法まで詳しく紹介しています。どのようなことに注意したら良いかということも確認できるので、本記事を参考にゴアテックスの手入れを始めてみてはいかがでしょうか。
ゴアテックスとは
ゴアテックス(GORE-TEX)とはアメリカのゴア社が販売してる素材の商標名です。防水透湿性を持っている素材で、外部からの水は撥水するが内部からの汗などは水蒸気として外へ出してくれます。つまり、水を通さない防水機能と、透湿という湿気を通す機能の2つを併せ持っている素材ということになります。アウトドアなどではかなり重要な性能ということになります。
また雨天時に運動をする場合にも重宝します。雨天時に体を動かす場合、防水効果のある雨具を着るか、撥水効果のある運動着を着るかという選択をするのが常であったところに、その両方の性質を持つ素材を開発したのがゴア社となります。この素材でできた上着などを着ていることで雨天時でも蒸れずに動き続けることが可能となりました。
ゴアテックスを洗濯しないとどうなる?
ゴアテックスを洗濯しないと生地が劣化することがあります。劣化すると防水透湿性能に影響が出てしまいます。例えば汗や泥、皮脂などが付着した状態が続くと縫い目に防水加工するためのシームテープが剥がれてしまうことがあります。これによって防水効果が無くなってしまうだけでなく、シームテープを再接着しても防水効果が戻らない場合があります。
また、生地の表面に汚れがたまると、生地の撥水性が低下してしまうことがあります。撥水性が下がると生地の繊維に水がたまることで膜を作り、この膜によって内部からの蒸気が外部へ発散されることなく留まり、透湿性が失われてしまいます。これによって内部が蒸れてゴアテックスの利点が損なわえる事態に陥ってしまうので注意が必要です。これらを防ぐために洗濯が必要になります。
ゴアテックスを洗濯する前に確認する事
高価なゴアテックスを洗濯する際には生地の劣化などを心配する人もいますが、実際には洗濯することが可能です。しかし、製品によっては洗濯の方法に制限を設けている場合もあるので、製品タグを確認してどのような方法でなら洗濯が可能なのか確認をする必要があります。また染み抜き剤や漂白剤は程度はあれども生地を傷める原因になる可能性がありますので使用しないようにしましょう。
ゴアテックスを洗濯する際には液体洗剤が必須です。粉洗剤では粉末が残ってしまう恐れがあるので使用を避けましょう。しかし、液体洗剤は残留洗剤によっても撥水効果や透湿性質が低下する可能性があるので、ゴアテックスを洗濯する場合には他の洗濯物と分けて、通常よりも洗剤の量を半分程度にして洗濯をするようにしましょう。
ゴアテックスの洗濯に使用する洗剤は?
ゴアテックスは通常の液体洗剤で洗濯が可能ですが、やはりそれぞれの素材には適切な洗剤があり、適性のある洗剤の方が生地を傷めにくく長持ちさせてくれます。こちらではゴアテックスの洗剤に使用するのにおすすめな洗剤を紹介します。
■1. エマール
エマールは家庭用洗剤で広く知れ渡っている有名な衣類用洗剤です。価格も安価のため最も大衆向けの洗剤とも言えるでしょう。基本的にはおしゃれ着用洗剤として認知されていますが、ゴアテックスに使用しても問題がありません。理由は、ゴアテックスに使用するための条件である「液体であり、漂白剤や柔軟剤が含まれていない」という全てをパスしているからです。
エマールはゴアテックスの専用洗剤ではありませんが、どこでも購入可能であることや、特売品などになりやすいなどの条件が揃っているので愛用している人も多くいます。ランニングコストが低いのでゴアテックスを割と頻繁にキレイにしたいという人にも大変おすすめです。また中性であり蛍光剤などの添加物も含まれていないのでより安心して使用できます。
■2. アラウ
アラウは無添加の衣類用せっけんです。無添加なので合成界面活性剤、蛍光剤、合成香料、着色料、保存料などが入っていません。そのためゴアテックスに使用可能な洗剤の条件を十分に満たしているということになります。手洗いをする際にも他の洗剤と同じようにつけおき洗いをして優しく擦るようにしましょう。肌に優しい洗剤なので手に付着しても安全な洗濯用せっけんになります。
アラウをゴアテックスのために使用する際には、規定量の半分から1/3程度の量を使用すれば十分に洗浄力があります。パーム油やヤシ油など植物由来の成分のみで配合されているので、安全な洗濯用せっけんです。100%植物由来ではありますが、ナイロンや合成繊維にもしっかりと働きかけてい汚れを落とします。
■3. アタックZERO
アタックZEROは洗浄力が高く有名な衣類用洗剤です。しかしながらゴアテックスに使用できる条件を満たしているので安心してゴアテックスの汚れを落とすことができます。アタックシリーズはしつこい汚れもしっかりと落としてくれます。またすすぎ効果も定評のあるアタックですが、ゴアテックスに使用する場合は念のため二度のすすぎを行うようにしましょう。
アタックは一般家庭に多く普及している衣類用洗剤です。しかし専用洗剤に比べると価格が安価であるというので人気があります。洗浄力が高いのでゴアテックスに使用する際には規定量の半分程度に減らして洗濯を行いましょう。またこちらのシリーズは弱アルカリ性でしたがアタックZEROは中性に変更されているのでそちらも注目すべき点となります。
■4. パフォーマンスウォッシュ
Grangersというアウトドア用品向けの防水スプレーなどを販売している会社から出されている防水・撥水ウェア専用の洗剤です。表面に付着した汚れだけをうまく洗浄し、防水・撥水性能を低下させないよう特別に成分配合がされています。一般的な家庭用洗剤と比べると多少価格は高くなりますが、性能とその安全性が高いため広く人気があります。
ブルーサインマーク認定商品のため、絶対的な信頼をおくことができるゴアテックスに最適な洗剤の一つであり、グルーバル基準でその安全性が認められています。使用時はウェア1着に対してキャップ1杯(50ml)を目安にして洗濯しましょう。それ以上の使用は生地の劣化などの心配はないですが効力が上がるわけでは無いので無駄になってしまいます。
■5. プロクリーナー
プロクリーナーは化繊シュラフ(寝袋)、登山靴などあらゆる防水透湿素材に使用可能な高機能アウトドアウェア専用の洗浄剤です。撥水成分を低下させる一番の原因は、洗剤のすすぎ残しが生地に付着してその成分によるものであります。そのすすぎ残しを限りなく0にすることができる洗剤がこのプロクリーナーです。すすぎ残しに重点を置いて開発されました。
また既に低下してい閉まった撥水性能を回復させることもできるので、登山やアウトドアの専門家も御用達の洗剤になります。家庭用の洗剤と比べると値は張りますが、それを差し置いても効果は最大限に発揮してくれます。また容量も296mlと少なめですが、一本で20着のゴアテックスを洗うことができます。
ゴアテックスの洗濯方法5ステップ【洗濯機】
実際にゴアテックスを洗濯機で洗う場合にはどのようなステップで行えば良いのでしょうか。こちらではその詳細を一つずつ丁寧に紹介します。
■ステップ1:ゴアテックスのファスナーを閉じる
ゴアテックスを洗濯する前に必ず、付いているファスナーを閉めるようにしましょう。ベルクロが付いているゴアテックスの場合はこちらも閉める必要があります。前面のファスナーを閉める理由は、ファスナーを閉めないまま洗濯機で洗濯をしてしまうと型が崩れてしまう可能性があるからです。
またベルクロや前面以外についているファスナーは生地に引っかかり傷つけてしまう恐れがあるため同様に必ず閉めるようにしましょう。フードが付いているタイプのものは広げるようにしておくと洗濯ムラができにくいため、広げて洗うようにしましょう。
■ステップ2:洗濯用ネットに入れる
ゴアテックスを洗濯する際には必ず洗濯用ネットに入れるようにしましょう。フードなどを広げたまま洗濯したいので洗濯用ネットに入れることでそのままの状態をキープすることが可能になります。またゴアテックスが絡んでしまうことを防ぎます。
■ステップ3:洗剤の投入
洗濯機に洗剤を入れます。洗濯ラベルを確認しておき、指定がある場合は指定通りの温度の水を用意するようにしましょう。指定がない場合は、40度以下のぬるま湯で洗濯すると汚れが落ちやすいので、おすすめです。この際洗剤以外の漂白剤や柔軟剤などを使用しないように注意しましょう。
洗濯のパワーを選べる場合は弱流を選択すると生地を傷める心配が減ります。洗濯機の種類は縦型でもドラム式でもどちらでも問題ありません。また洗剤の量にも注意が必要です。必ず通常の適量よりも少なめに入れましょう。
■ステップ4:すすぎは必ず2回行う
洗濯後に洗剤が残っていると撥水性能と低下させてしまうというのは上述しました。そのようなことにならないためにはすすぎ工程を必ず2回行うようにしましょう。洗剤を入れすぎてしまった場合にはすすぎ工程を3回行わなくてはならない場合もあります。洗濯後に洗剤が残っていないかのチェックも怠らないようにしましょう。
■ステップ5:脱水する
脱水をする際には少し注意が必要です。洗濯機に備わっている脱水機能で脱水はしてはいけません。洗濯機の脱水方法は遠心力で衣類に含まれている水分を飛ばす機能になります。しかしゴアテックスは水を通さないので強力な遠心力が洗濯機に掛かり、洗濯機の故障に繋がりかねません。
ゴアテックスの脱水方法として適切なのは、ゴアテックスに付いているタグを確認した上で乾燥機に入れる方法です。温度設定は標準の設定で行いましょう。乾燥機程度の高温はゴアテックスに対して撥水効果を回復させてくれるので問題ありません。この方法である程度乾燥させる必要があります。
ゴアテックスの洗濯方法【手洗い】
一番良いのはゴアテックスを手洗いする場合専用の洗剤を使用することです。こちらもゴアテックスを最大限引き出し効果を高めてくれます。しかし上述したような衣類用洗剤か無ければ中性洗剤でも代用することができます。
まず手洗いがしやすいように大き目の桶を用意しましょう。そこにゴアテックスが十分に浸かる量の40度程度のお湯を注ぎ入れましょう。そこに洗剤を混ぜれば準備完了です。
ゴアテックスを入れたら泡立てを意識しながら全体をよく洗いましょう。この際モミ洗いをしないように気を付けましょう。生地同士が擦れて傷がついてしまう可能性があります。洗い終えたら15分程度つけ置きましょう。
つけ置いたらぬるま湯を使用して何度もすすぎを行いましょう。手洗いだと流しきらなかった洗剤が残りやすいのでしっかりと泡立たなくなるまですすぐ必要があります。すすぎ終わったらぬるま湯から出して水が滴らなくなるまで待てば水切り完了です。
ゴアテックスを洗濯したあとのケア
ゴアテックスを選択した後にはその性能を維持するためのケアが必要です。この工程があることでより良い状態を保つことができます。
■水が切れたら日陰干し
洗濯機で洗った場合も手洗いの場合も簡単に水を切ったらそのまま日陰干しをしましょう。ゴアテックスは水を通さないため脱水が必要ありません。水が滴らなくなったらそれで水切りが完了になります。日干しをすると色落ちなどの原因になるので必ず風通しの良い日陰で乾かすようにしましょう。
■あて布をしてアイロンがけ
アイロンをかける理由は、生地の撥水性が劣化していなければあて布をして中温でアイロンがけすることでその撥水性が回復するからです。熱を全体にしっかりと加えるようにアイロンを掛けましょう。高温すぎると生地の劣化を引き起こす可能性がありますので注意が必要です。
もしアイロンが手元にないという場合には乾燥機に入れて乾かすというのも一つの方法になります。乾燥機でこまめに出しながら十分な熱を加えることで撥水性が回復します。しかしゴアテックスの製品によっては乾燥機の使用が不可の場合もあるので確認が必要になります。
■撥水処理を行う
撥水処理を行う方法はいくつかありますが、一般的なのは溶剤につけ込むタイプになります。こちらは洗濯後、洗濯機でそのまま行うことが可能です。手洗いの場合は手洗いが終わってすすいだ後にそのまま溶剤をぬるま湯に溶かし入れてゴアテックスをつけ込みます。この方法で撥水処理を行ったら乾燥させた後にアイロンがけをすると撥水性がしっかりと定着します。
またエアゾールタイプで簡単に撥水処理をすることも可能でです。こちらは乾燥処理が完全に終わった後の仕上げとして行います。しかしこの方法はムラができたり全体に撥水加工がされていなかったりシミになったりという可能性もあるので注意が必要です。
ゴアテックスの靴(シューズ)の洗濯方法
最近は登山靴などによくゴアテックスが使用されています。長時間山道を歩いても蒸れにくいその性質は大変便利ですが、靴になるとハードルが上がってしまうと考えている人もいるでしょう。しかし洗濯方法を知ればさほど難しいことではありません。
【靴を洗う準備】
ゴアテックスの靴の中敷きと靴ひもは通常のものと変わりありません。なのでまずはそれらを外して靴を洗う準備を行いましょう。次に山道を歩いてきたばかりだと泥や砂が沢山付着しています。これらを靴専用ブラシなどでしっかりと落としましょう。ソール部分は割りばしなどを使用すると挟まった砂や小石をきれいに外すことができます。
【専用クリーナーで洗う】
ゴアテックスの靴を洗う場合は専用のクリーナーを使用するようにしましょう。このクリーナーで洗うのは基本的に表面だけになります。外側をしっかりと水で濡らして専用クリーナを押し付けるようにして汚れを取ります。泡でしっかりと汚れが落ちたら水で洗い流します。
【撥水加工を施す】
ゴアテックスの靴の場合、塗るタイプの撥水剤を塗り込むと良いでしょう。この手の撥水剤は水性の物が多いため濡れた状態で使用することができます。しっかりと全体にムラなく塗り込みましょう。撥水加工が終わったら日陰干しをして完了になります。
ゴアテックスの洗濯のおすすめの頻度
ゴアテックスを通常の防寒具として使用する場合は、普通のジャケットなどと同程度の洗濯頻度で問題ありません。数回野外で着た程度では大した汚れも付着しないでしょう。しかし、雨具として雨天時に野外で使用した場合はゴアテックスの表面に雨と一緒に降ってきたほこりなどが付着しています。
また山へ行ったりなどのアウトドア目的で使用した場合、目に見えている以上の汚れが付着している可能性があります。これらの汚れを放置すると撥水効果や透湿性能に悪影響を与えてしまいかねません。そのためこのような用途で使用した場合は毎回洗濯することをおすすめします。洗濯して受けるダメージよりも汚れを放置した場合の方が深刻なダメージを受けます。
まとめ
ゴアテックスの洗濯方法は知らないと複雑だというイメージを持ちやすいですが、知ってしまうとシンプルで要点だけ守れば問題なく洗濯が可能です。本記事を参考に正しいゴアテックスの洗濯方法を確認しましょう。