スーツは革製品の次にカビが生えやすいと言われています。”スーツを着ようと思ったらカビが生えていた!”という方も、いるのではないでしょうか?
スーツは素材によって汗や水を吸収しやすく、カビが生えやすいのは仕方がないと言えるでしょう。例えば、天然素材であればウールやコットン、化学繊維はレーヨンなどがあります。吸湿性のあるスーツは繊維の奥まで水分が染み込むため、カビが生えるリスクは高めです。
しかし、スーツにカビが生えたからと言って肩を落とす必要はありません。スーツに生えたカビを取る方法はあるからです。今回は、スーツに生えたカビを取る方法の他に、カビの防止策、カビを取る際の注意点などご紹介していきます。
スーツにカビが生える原因4つ
カビの元となる胞子は室内の天井に付着していたり空気中に舞っています。カビの胞子は一定の条件を満たすとカビへと生長し、スーツに白カビなどが生えることは珍しくありません。では、スーツにカビが生える原因を4つ見ていきましょう。
1.【高温多湿】
カビは温度が高くジメジメした環境を好み、25度以上の温度、75%以上の湿度になると発生します。
2.【通気性が悪い】
スーツなどを詰め込み過ぎているクローゼットは、通気性が悪く高温多湿になりがちです。特に長期保管しているスーツはカビが大量に増殖し、カビだらけになることもあるでしょう。
3.【素材】
カビが大好きなものは炭水化物やたんぱく質で、スーツの素材もカビの栄養源(羊毛、綿、麻、絹、革の素材)になります。
4.【汚れ】
カビの栄養源になるものはスーツの素材だけではありません。スーツに、食べこぼし、飲みこぼし、水分、ホコリ、皮脂、汗、垢、などが付着しているとカビが生えます。
スーツに生えるカビ4種類
スーツに生えるカビの種類は、白カビ、黒カビ、緑カビ、茶カビの4種類です。代表的なカビは白カビと黒カビですが、緑カビや茶カビが生えることもあります。
1.【白カビ】
白カビは綿毛のようで生地の表面だけに生えていることが多いです。洋服ブラシなどで擦るとなくなり、スーツの繊維の奥まで根を張ることはほとんどありません。
2.【黒カビ】
黒カビはスーツの繊維の奥まで根を張ります。プロでも黒カビを完全に除去するのは難しく、キレイに落としても再び生えてくる可能性がある厄介なカビです。
3.【緑カビ】
緑カビは屋外にいるカビでスーツに生えることは少ないですが、可能性としてはゼロではありません。緑カビも黒カビと同じく厄介なタイプで、スーツの繊維の奥まで根を張ることがあります。
4.【茶カビ】
茶カビは最初から茶色いわけではなく、酸化して茶色く変色したものです。カビが生えやすい環境に、スーツを長期間保管している場合によく見られます。
スーツにカビが生えた時の応急処置
スーツにカビが生えてしまった時はカビの範囲を広げないことが重要です。『アルコール除菌スプレー』や『消毒用エタノール』で、カビを除菌して増殖を防ぎましょう。
【やり方】
1.)カビを室内に落とさないためにスーツを屋外へ持って行きます。アルコールやエタノールはスーツが変色する恐れがあるため、目立たないところで変色テストを行いましょう。歯ブラシにアルコールやエタノールを含ませたら、スーツを軽く叩いて染み込ませ約5分待ちます。
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2.)約5分後、スーツが変色しなければティッシュやタオルなどでカビを優しく払い落し、歯ブラシにアルコールやエタノールを含ませましょう。スーツが変色した場合は、水で洗い流して応急処置を中断してください。
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3.)カビを歯ブラシで優しく叩いて落とします。スーツに生えたカビを強く叩いたり歯ブラシで擦る行為は厳禁です(スーツの繊維の奥にカビが入り込みます)。最後にドライヤーで乾かしましょう。
スーツのカビの取り方3つ
スーツに生えた黒カビ、白カビ、緑カビと茶カビの取り方をご紹介していきます。白カビは他のカビに比べると取りやすいのが救いで、カビにまみれていたスーツもかなりキレイなるでしょう。
一方、黒カビ、緑カビや茶カビがスーツに生えている場合は、繊維の奥まで入り込んでいる可能性があります。白カビの取り方と違い、カビの根までしっかり取り除かないといけません。
スーツのカビの取り方|その1 ■①黒カビの取り方
スーツに黒カビが生えてしまった時は、熱湯で溶かした酸素系漂白剤を使うのが基本です。ただし、スーツの素材によっては、生地を傷める可能性があるため洗濯表示を確認しましょう。
【必要なもの】
・粉末や液体の酸素系漂白剤(粉末の方が洗浄力が高いです)
・洗面器やバケツなどスーツを入れる容器
・50度の熱湯
・マスク
・ゴム手袋
【カビの取り方】
1.)洗面器やバケツなどに、50度のお湯と酸素系漂白剤を入れて溶かし漂白液を作ります。
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2.)漂白液の中へスーツを浸して約1時間浸け置きしましょう。(カビが生えている部分だけ浸してもかまいません。)酸素系漂白剤はカビを除菌しながら取る一方で、スーツへの負担が大きいため放置時間は厳守しましょう。
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3.)スーツを取り出して洗濯機へ入れたら、おしゃれぎコースやドライクリーニングコースで洗います。
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4.)洗濯後はすぐにスーツをハンガーにかけ、風通しがいい場所で陰干しをしてしっかり乾かしましょう。
スーツのカビの取り方|その2 ■②白カビの取り方
白カビが生えたスーツは50度の熱湯で取ることができます。カビは50度の熱湯を直接かけると死滅することと、白カビは根が浅く熱湯だけでも取ることができるからです。
熱湯処理だけでは不安な場合、酸素系漂白剤を使ってもかまいません。では、50度の熱湯でスーツに生えた白カビを取る方法を見ていきましょう。
【必要なもの】
・洗面器やバケツなどスーツを入れる容器
・50度の熱湯
・マスク
・ゴム手袋
【白カビの取り方】
1.)洗面器やバケツなどに50度のお湯とスーツを入れます。スーツに生えた白カビがお湯にしっかり浸るようにしましょう。白カビを死滅させるためにお湯がぬるくまで浸け置きします。
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2.)お湯がぬるくなったらスーツを取り出して、洗濯機ですすぎと脱水を行います。脱水は遠心力によりスーツの繊維に負担がかかるため、5、6分にしましょう。
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3.)洗濯後はすぐにスーツをハンガーにかけ、風通しがいい場所で陰干しをしてしっかり乾かします。
スーツのカビの取り方|その3 ■③緑カビ・茶カビの取り方
緑カビと茶カビは、スーツの繊維の奥まで根を張ることがあるしつこいカビです。しつこいカビは50度の熱湯だけでは難しく、熱湯で溶かした酸素系漂白剤に浸け置きして取りましょう(酸素系漂白剤を使って緑カビや茶カビを取る方法は、黒カビの取り方をご覧ください)。
また、酸素系漂白剤の強みはカビの色を消してくれるのもポイントです。淡い色や明るい色のスーツに緑カビや茶カビが生えると目立ちますが、漂白効果のおかげでカビの点々もスッキリ消えます。
スーツにカビが生えたらクリーニングに出す?
スーツに生えたカビを応急処置で済ませる場合、クリーニングに出す方は多いでしょう。では、自分でカビを取り除いて元通りの見た目になった場合はどうでしょうか?クリーニングへ出さない方もいるかもしれません。
1度でもスーツにカビが生えたらクリーニングへ出すのが鉄則です。応急処置のみの場合はもちろん、自分でカビを取り除いてキレイにしたとしてもクリーニングへ出しましょう。
理由は、素人が行うカビ取りは限界があり、スーツの繊維の奥にカビが残っている可能性があるからです。スーツの繊維に少しでもカビが残っていると再び生えてくるため、プロに依頼して根こそぎ取ってもらう必要があります。
■仕上がるまでに要する日数は1日~1週間
カビ取りはシミ抜き扱いで仕上がり要する日数は1日~3日です。カビの状態によっては特殊な方法で行う場合もあり、1週間ほどかかることもあります。シミ抜きの日数は店舗によって違うため、急ぎの方は仕上がりにかかる日数を確認してから出しましょう。
スーツにカビが生えないための防止策
スーツを着る機会が少なくても、保管しているだけでカビが生える可能性はあります。スーツにカビを寄せ付けないための防止策を8つ見ていきましょう。
1.)クローゼットや押し入れはマメに扉を開けて高温多湿を防ぐ。除湿剤を使うのもおすすめです。
2.)クローゼットや押し入れの中は、掃除を行いカビの栄養源となるホコリをためない。
3.)クローゼットや押し入れはできるだけ空間を作り風通しを良くする。
4.)クリーニングの袋を被せたままのスーツは、湿気がたまりやすいため袋を外してから保管する。
5.)スーツにホコリを付けずに保管したい時は、通気性に優れている不織布を使う。
6.)濡れているスーツは完全に乾かしてからしまい、収納場所に湿気を持ち込まない。
7.)着用したスーツはしまう前に、ホコリ、フケ、髪の毛などの汚れを洋服ブラシで落とす(ブラシは屋外で使ってください)。
8.)着用頻度が少ないスーツは1、2週間に1回影干しして湿気を逃がす。
スーツにカビが生えた時の注意3つ
ご存知の通り服に生えるカビはよくありません。スーツに生えたカビは生地の劣化を早めたり、アレルギーなどの原因になります。スーツにカビが生えた時は、3つの注意点に気を付けながら対処しましょう。
1.【応急処置は必ず変色テストを行う】
必ず変色テストを行い、異常がないことを確認してから応急処置を行ってください。変色テストをしないで応急処置を行うと、変色の可能性はもちろん、生地にダメージを与え劣化する場合があります。
2.【他のスーツや服と一緒に保管しない】
カビが生えたスーツは個別に保管して、他のスーツや服にカビが生えないようにしましょう。カビが生えたスーツは胞子のかたまりのような存在で、他のスーツや服と一緒に保管するとカビが生えます。
3.【必ずクリーニングに出す】
スーツは自宅で洗濯することもできますが、カビの根が残っていると再発しやすいです。カビが生えたスーツは、必ずクリーニングに出して根を根絶させましょう。
スーツのカビ臭さ|原因と対策
スーツに生えたカビを取ることはできても、カビの臭いが残ることがあります。スーツから漂うカビ独特の臭いが気になる方も多いのではないでしょうか?では、カビが臭う原因と対処方法を見ていきましょう。
【カビが作る物質のせいで臭う】
本来カビは臭いがありません。しかし、生長や増殖する時に作られる物質により臭いが発生します。また、物質はカビの種類によって異なるため臭いも様々です。墨汁っぽい臭いや土っぽい臭いなどがあります。
【スーツのカビ臭さは除菌で落とす】
スーツから漂うカビ臭を落とすなら除菌することです。スーツにアルコール除菌スプレーや消毒用エタノールを噴射して、しっかり乾かしましょう。カビはアルコールやエタノールに弱く、スーツに吹きかけるとカビ臭さが消えます。
除菌と言えば、酸素系漂白剤や抗菌効果のある洗濯用洗剤もおすすめです。菌対策に効果があり、カビの臭いが気になるスーツを洗うと消臭することができます。
まとめ
カビやカビの胞子は室内に存在しており、スーツの保管状態でカビが生える可能性は十分あると言えるでしょう。クローゼットや押し入れに保管しているスーツにカビが生えた場合は、正しく対処して被害を最小限にすることが大切です。
まずは、応急処置を行いカビを増殖させないことが先決ですが、どうしてもできない場合は何もせずクリーニング店へ持って行きましょう。カビが生えたスーツは時間との勝負です。応急処置や自分でカビを取るなどして、できるだけ早くクリーニング店で対処してもらいましょう。