「きちんと洗って乾かしているし、香りつきの柔軟剤も使っているのに生乾き臭がする。」タオルを使ったとき、ふとこんな風に思うことってありますよね。実は普段の洗濯だけでは目に見えない汚れや雑菌は落としきれていません。
この記事では一風変わった「煮洗い」という洗濯方法を紹介。煮洗いすることで洗濯機では落としきれなかった雑菌やしつこい黄ばみまで落とすことができます。煮洗い後のタオルや布巾は、普段の洗濯とは比べものにならないくらいの白さ。
記事の後半では煮洗いするのにおすすめの鍋、煮洗いする際の注意点も解説。「何をしてもニオイや黄ばみが取れない!」と悩んでいるなら、ぜひ一度煮洗いを試してみてください。
鍋を使った煮洗いとは?
煮洗いは煮沸消毒に似ています。「煮洗い」という名前のとおり沸騰したお湯で洗濯物を煮て洗う。煮沸消毒とちがうのは、粉石けんや漂白剤を入れることで洗浄力がアップしている点。ここでは煮洗いでニオイやしつこい汚れが落ちる理由を解説します。
【ニオイが落ちる理由】
洗濯物の嫌なニオイは「モラクセラ菌」という雑菌が原因だと知っていますか?実はこの菌は水と洗剤だけでは落とし切れません。さらに、増殖するとバリアのように積み重なってますます洗い流せない最悪のループに。そんなモラクセラ菌ですが実は60℃以上の温度で死滅。つまり煮洗いすれば、水では落とせないニオイの原因菌を簡単にやっつけることができるのです。
【しつこい汚れが落ちる理由】
洗濯物をお湯に入れると、繊維の隙間に入り込んだ汚れが緩みやすくなります。煮洗いで黄ばみや汚れが落とせる理由はまさにここ。緩んだ汚れは洗剤で簡単にからめ取ることができるため、煮洗いだとしつこい汚れも簡単に落とすことができます。
煮洗いするのに適したアイテム
どのような物でも煮洗いできるのかというと、それは間違い。煮洗いに適しているのは布巾やタオル・雑巾のように綿や麻でできた素材のもの。なぜなら煮洗いは100℃以上の高温にさらすため、普段の洗濯とは違い生地に負担のかかる洗濯方法です。綿や麻のように丈夫な素材でなければ生地にダメージを与えることになりかねません。
また顔や体を拭くタオルや、汚れている場所を拭く雑巾はモラクセラ菌がとても繁殖しやすい環境。生乾きの嫌なニオイが発生しやすいアイテムなので煮洗いで殺菌するのが最適です。
そして意外かもしれませんが、ベビーの肌着やスタイも煮洗いに適しているアイテムの1つ。なぜなら赤ちゃんはとても汗かき。さらに脂肪分の多いミルクや母乳を頻繁に吐きもどしてしまうため、肌着はとても汚れやすいのです。ベビーの肌着は肌への負担をおさえるため、綿100%で作られているものが多数。こすり洗いでも落ちにくいガンコなシミや黄ばみも、煮洗いで解決してあげましょう。
煮洗いのやり方4ステップ
煮洗いの具体的なやり方を4ステップで紹介します。多少準備は必要ですがやり方は簡単です。なお、煮洗いする物はあらかじめ洗濯機で目立つ汚れを落としておきましょう。
■①準備
煮洗いに必要なものは以下の4つ
・大きめの鍋
・粉石けん
・酸素系漂白剤
・トング
アイテム詳細や代用品など以下にまとめました。
【鍋の大きさ】
洗濯物がスッポリと入るくらいの大きさが理想です。汚れを落とすポイントはたっぷりのお湯を使うこと。あまり大きい鍋がないときは、洗濯物があふれないよう数回に分けて煮洗いしましょう。
【粉石けんと酸素系漂白剤】
粉石けんがない場合、普段使っている粉末洗剤や液体洗剤でも代用可能です。
粉石けんだけもしくは酸素系漂白剤だけでも煮洗いはできます。しかしここでは両方を使用することをおすすめ。なぜなら粉石けんと酸素系漂白剤を一緒に使うことで、汚れ落ちがグッと良くなるからです。
※注意※塩素系漂白剤は他の洗剤に混ぜると危険。必ず酸素系漂白剤を使うようにします。
【トング】
菜箸でも代用できますが、できればトングを使う方が良いでしょう。煮洗いでは洗濯物を煮ているあいだにしっかりとかき混ぜる必要があります。このとき洗濯物は水を含んでかなり重い状態。菜箸や短いトングより、長めのトングの方が安全に取り扱うことができます。
■②粉石けん・酸素系漂白剤を溶かす
準備が整ったらお湯で粉石けんと酸素系漂白剤を溶かします。
まずは鍋の7~8分目くらいまで水を入れ火にかけましょう。入れた洗濯物が鍋の中で泳ぐくらいたっぷりのお湯がいいですね。ただし洗濯物を入れても水がこぼれないように調節してください。
ぬるめの温度になったら粉石けんを溶かします。粉石けんを一気に入れるとモコモコと泡があふれ危険なので、少量ずつ入れてください。
ポイント:粉石けんは合成洗剤よりも洗浄力が高いのがメリット。しかし溶け残ると石けんカスの原因になります。少量ずつ加え、しっかり溶かすことが汚れ落ちを良くするポイントです。
粉石けんが溶けたら酸素系漂白剤も少量ずつ入れて溶かします。酸素系漂白剤は泡立つタイプと泡立たないタイプがありますが、どちらを使ってもOK。酸素系漂白剤を溶かしつつ、お湯が沸騰するのを待ちましょう。
■③洗濯物を投入する
お湯が沸いたら吹きこぼれないよう弱火〜中火に落とします。コトコト沸いているお湯に洗濯物を1枚ずつ入れてください。お湯があふれないよう静かに浸しましょう。
全ての洗濯物を入れたら、次はトングで洗濯物をかき混ぜる行程。
沸騰していると、気泡と一緒にお湯の表面に洗濯物が浮き上がってきてしまいます。するとお湯に浸かっていない部分の汚れが落ちにくくなることに。洗濯物全体がお湯に浸かるように気をつけながら、洗濯物の上下を入れ替えるように混ぜるのがポイントです。線維にからまった汚れを浮かすイメージでかき混ぜてください。
10〜20分が煮込む目安ですが、汚れの程度に応じて調節OK。ベットリとした油汚れがついていたり、汚れや黄ばみを数年放置していたりする場合は長めに煮込むと良いでしょう。
■④すすぎをして干す
煮込みが終わったらしっかりとすすぎをしてから干すのが鉄則。お湯には酸素系漂白剤が溶けています。すすぐときは手荒れ防止のため必ずゴム手袋をつけて作業してください。
数十分間煮た洗濯物はかなり熱くなっているので、いったん火から降ろして冷まします。手でさわれるくらいの温度まで下がったらバケツやザルに洗濯物をうつしましょう。洗濯物をしぼっても汚れた水がでなくなるまで軽くもみ洗いします。
通常は手洗いのすすぎで十分。しかし気になる場合は、手洗いのあとに洗濯機ですすぎと脱水を行っても大丈夫ですよ。粉せっけんを使用した場合すすぎ残しがあると石けんカスが残りやすいので、洗濯機で念入りにすすぐことをおすすめします。
すすぎが終わったら洗濯物を干しましょう。しっかり殺菌・消毒されているため部屋干しでも良いですが、せっかくなら天日干しがおすすめ。日光に当てることで紫外線による殺菌効果も期待できます。
煮洗いにおすすめの鍋3選
煮洗いに適しているのはステンレス製もしくはホーロー製で、ある程度大きさのある鍋。条件を満たしているおすすめの鍋3つを紹介します。
■①パール金属 NEWだんらんステンレス大型鍋
【サイズ】幅39.5cm×奥行29.0cm×高さ17.0cm
ステンレス素材の大型鍋。タオルや布巾はもちろん、バスタオルのような大サイズでも入る大きさが魅力。満水容量約6.1Lなのでたっぷりのお湯で煮洗いすることができます。ガス火とIH両方に対応しているためどのようなご家庭でも使用可能。
大型の鍋だと高価になりがちですが、さすがのパール金属。税込2,000円以内と手の出しやすい価格設定も嬉しいですよね。
■②パール金属 ホーロー両手鍋
【サイズ】幅31.0cm×奥行24.0cm×高さ16cm
ル・クルーゼなどの鋳物ホーローとは違い、鋼を板状にしたものを加工して作る鋼板(こうはん)ホーロー鍋。同じホーローでも鋳物より軽く、安価に買うことができるのも嬉しいところ。オール熱源に対応しています。
ホーローの魅力はなんと言ってもツルンとした見た目の可愛らしさ。パール金属のホーロー両手鍋は色も豊富で、赤・白・ピンクの3色から選べます。ステンレスに比べるとお値段はしますが、置いているだけで気分が上がるオススメのアイテムです。
■③野田琺瑯 楕円型洗い桶
【サイズ】幅38cm×奥行28.7cm×高さ12.6cm
ホーロー製品の老舗である野田琺瑯の楕円型洗い桶なら、普段は食器の洗い桶としても活用できます。そのため収納スペースの心配もいりません。
煮洗いするときはそのまま直火にかけることができる優れたアイテム。同タイプの丸型洗い桶もありますが、煮洗いに使用するのなら楕円型をオススメ。フチが広いため安全に持ち運びができます。
お値段は少し高いですが、野田琺瑯の製品は一生モノとして使えるくらい丈夫。置く場所を選ばないシンプルなデザインも長く使える秘訣です。
鍋で煮洗いする際の注意点3つ
煮洗いする際の注意点をまとめました。失敗しないために、以下3つの注意点をよく読んでから取りかかってください。
■注意点①煮洗い専用の鍋を使う
煮洗いに使う鍋は料理用の鍋とは分けるようにしましょう。料理と煮洗いで同じ鍋を使うと、煮洗いで出てきた汚れが料理に付いてしまったり、食材のカスが洗濯物についてしまったりする可能性があります。
いくらキレイに鍋を洗っても目に見えない汚れまで完全に落とすのは難しいもの。鍋についている傷やサビに汚れがこびりつく可能性もあります。実際に煮洗いをすると分かるのですが、洗濯物を煮たあとのお湯は黒っぽく変色します。線維の奥に絡みついていた汚れが溶け出した鍋。そんな鍋で食べ物を調理するのは気が引けますよね。衛生面を考え、煮洗い用の鍋は調理用とは分けた方が良いでしょう。
鍋につく食材のカスも、完全に洗い落とせるかというと考えものです。落としきれていない汚れは洗濯物に付着。そうなると煮洗いの効果も十分には現れにくいです。
「料理に使っていた鍋を煮洗い用におろしたい」という場合は、煮洗いに使う前に鍋の汚れを落としきることが大切。重曹とお湯で鍋の焦げつきをしっかり綺麗にしてから使うようにしましょう。
■注意点②アルミの鍋は使用しない
安価で使いやすいアルミ鍋は持っている方も多いかと思います。しかしアルミの鍋は煮洗いには適していないので、使用するのはやめておきましょう。
アルミは熱伝導率が高いので短時間で済ませたい料理に向いている素材です。逆にいえば「長時間煮込む」という作業は苦手。ステンレスやホーローのように丈夫な加工がされておらず、変形する可能性があります。
またアルミの鍋を煮洗いに使うと、思った以上に黒ずむ場合があることを覚えておきましょう。
アルミはもともと黒ずみやすい素材。そのためアルミの鍋にはアルマイトという人工皮膜がコーティングされます。しかしこのアルマイトは酸やアルカリで剥がれやすい性質。洗濯物の汚れの原因である油汚れや汗などは酸性、粉石けんや酸素系漂白剤などはアルカリ性です。両者が入り混じる煮洗いではアルミ鍋のコーティングが一気に剥がれ、黒ずみを加速させます。
■注意点③煮洗いに向かない素材だと失敗する
そもそも煮洗いに向いていない素材もあります。
・化学繊維
・シルクやウール
・色柄もの
上記の素材は煮洗いしないほうが良いでしょう。順番に理由を解説していきます。
【化学繊維】
化学繊維はもともと高温に弱い素材。そのため煮洗いすることで変色や型崩れの原因になります。特にナイロンが含まれている場合には要注意。高温で溶けてしまう可能性もあるため煮洗いには適していません。
【シルクやウール】
もともとデリケートなシルクやウールも煮洗いには不向き。シルクやウールの原料である動物性タンパク質はアルカリで溶ける性質があります。煮洗いで使う粉石けんや粉末洗剤はアルカリ性。よってシルクやウールを煮洗いすると独特の風合いを失い、生地を傷めます。
【色柄もの】
色柄ものも煮洗いは避けたほうが無難です。普段の洗濯では色落ちがなくても、高温で煮ることで線維から色が抜けてしまう可能性大。「色つきのタオルや布巾をどうしても煮洗いしたい」という場合は、色移りを避けるため必ず単体で煮洗いするようにしましょう。
まとめ
洗濯物のしつこい黄ばみや生乾き臭をスッキリ落としてくれる煮洗い。普段の洗濯にプラスすることでタオルや布巾類を清潔に保つことができます。
たしかに、洗濯機での洗濯とは違い時間と手間がかかることはデメリットです。しかし煮洗いした洗濯物の白さは格別。1回に煮洗いする洗濯物を少量にすれば実はそこまで労力もかかりません。
「週末は煮洗いの日」と決めて、まずは小さめの布巾類から挑戦してみてください。いつでも清潔なタオルや布巾で気持ちよく生活できますよ。