冬の汗を吸い込んだウールのニットやマフラー。「クリーニングに出すほど汚れてないけど、ウールは縮みやすいと聞くし…」と家庭での洗濯に迷いますよね。
結論から言うと、ウールに「家庭洗濯禁止」や「水洗い不可」の表示がなければ自宅で洗濯可能です。
とはいえ、本記事で紹介する「ウールの洗濯」は手洗い一択!ゴワゴワになったり縮ませたくないのであれば、洗濯機OKと表示のあるウール以外は手洗いが断然安心です。
本記事ではウールの洗濯にまつわる以下の内容を徹底解説!
- 家庭でウールは洗える?チェックポイント4つ
- ウールの洗濯で絶対してはいけないこと4つ
- 洗濯前に確認しておきたいウール縮みの直し方
- ウールの洗濯7ステップ
- ウールのきれいを守る日頃のお手入れ
ウールが縮む原因である「やってはいけないこと」が分かれば、家庭でも縮みを気にせずウールをきれいに洗濯できます。
正しい洗濯方法でウールについた冬の汗や臭いをすっきり落としましょう!
ウールは家庭で洗濯できる?チェックポイント4つ
「家庭洗濯禁止」や「水洗い不可」のマークがなければウールは家庭でも洗濯できます。そのほかにも家庭でウールを洗濯するときにチェックしておきたい以下のポイント4つを確認しておきましょう。
- 洗濯表示の見方
- ウールが水に濡れると縮む理由
- 洗濯機を使わない方がいい理由
- 洗濯頻度は1シーズンに1回
ウールを洗濯するときのチェックポイント|その1 ■①洗濯表示の見方
2016年、50年ぶりに日本の洗濯表示が新しくなりました。新しい洗濯表示は海外で広く使われている表示と同じものとなっています。
以下のようなマークがラベルに書いてあれば家庭での洗濯は不可。色落ちや縮み・風合いの変化の可能性が大きいため、クリーニングに出すようにしてください。
下の画像は新しいバージョンの「家庭洗濯不可」の記号ですが、旧表示も似たような「水の入ったタライに×マーク」で「水洗い不可」を表しています。
逆に以下のいずれかのマークがあれば弱い手洗いが可能です。本記事を参考に家庭でウールを洗濯してみましょう。
これらの例以外にも洗濯表示にはさまざまなものがあります。洗濯表示は世界共通のマークになるように「◯」「△」「□」といった形で描かれているので、見ただけでは理解できないものも多数。
各衣料メーカーや洗剤メーカーでは洗濯表示が検索できるサイトを作っていますので参考にしてください。
・【パソコン用ページ】無印良品
https://www.muji.net/mt/contact/img/laundrysymbols201612.pdf
・【パソコン用ページ】三陽商会
http://www.sanyo-shokai.co.jp/brand/img/washing/comparison.pdf
また、洗濯表示を検索できるスマートフォンアプリもあります。
・【スマートフォン用】洗濯表示アプリ
https://play.google.com/store/apps/details?id=exciton.jp.laundrysymbol&hl=ja
Android用の洗濯表示検索アプリです。新洗濯表示も、旧洗濯表示もどちらも見ることができます。
・【スマートフォン用】これ洗える?
https://itunes.apple.com/jp/app/%E3%81%93%E3%82%8C%E6%B4%97%E3%81%88%E3%82%8B/id858102421?mt=8
iPhone用の洗濯表示検索アプリです。洗剤や薬品で知られているライオンの公式アプリで、自分のお気に入りの服を登録することもできます。
ウールを洗濯するときのチェックポイント|その2 ■②ウールの特徴|水に濡れると縮む
ウールは「水に濡れると縮む」という特徴があります。家庭での洗濯に躊躇してしまうのも、この特徴があるからこそですよね。
ウールの縮みやすさは繊維の構造が原因。ウールの表面を顕微鏡で見てみると、ギザギザとしたウロコ状です。この構造は「スケール」と呼ばれており乾燥状態では閉じてからみにくいのですが、水分を含むと開きます。
スケールが開いた状態で動かすとがっちり絡み合い、乾燥しても元のように離れた状態にはなかなか戻りません。
結果としてウールが縮んだり固くなってしまう「フェルト化」という現象が起こってしまうのです。
出典:東京都クリーニング生活衛生同業組合
ウールを洗濯するときのチェックポイント|その3 ■③洗濯機を使わない方が良い理由
たしかに洗濯機には衣類をやさしく洗う「ソフト」「おしゃれ着洗い」などのコースが用意されています。水流を穏やかにした洗い方で、手洗いに近いのが特徴です。
しかしご紹介したようにウールは構造上とても縮みやすい素材。縮みを防ぐためには、スケールが開いた状態で刺激を与えないことが重要です。
ウールの縮みを防ぎたいなら、力加減を調節できる手洗いで優しく押し洗いするのが1番でしょう。
※ウールの中には「ウォッシャブルウール」という、洗濯機で洗えるよう特別な加工が施されているウールもあります。上記で紹介した「洗濯機可能」のマークがついていれば自宅の洗濯機で洗濯が可能。表示の決まりに合わせて洗濯しましょう。
ウールを洗濯するときのチェックポイント|その4 ■④洗濯頻度は1シーズンに1回
もともとウールは汚れにくい素材なので、頻繁に洗濯する必要はありません。
例えばウールは保温に優れた繊維であると同時に、湿気を調節する機能にも大変優れています。そのため少し汗をかいても、正しいお手入れをすれば汚れや臭いが蓄積しづらいです。
またウール表面のスケールは普段はキュッと閉じており、水をはじく性質も持っています。多少飲み物をこぼしてしまっても、サッと拭けばシミになりにくいのもこの構造によるものです。
日常生活でかく汗程度ではウールの縮みは問題になりませんが、洗濯や雨のような大量の水は苦手。
そのためウールの洗濯は1シーズンに1回程度で充分です。普段のお手入れは記事後半で紹介している【ウールのキレイを守る日頃のお手入れ2ステップ】を参考にしてください。
ウールが洗濯で縮む原因4つ
ウールの洗濯で縮みの原因となる「やってはいけないこと」は以下の4つです。
- 「水洗い不可」マークを「ドライコース」で洗濯する。
- 中性洗剤以外の洗剤を使ってしまう。
- 洗濯機でしっかり脱水してしまう。
- ハンガーに吊るして直射日光に当ててしまう。
詳しく見ていきましょう。
ウールが洗濯で縮む原因|その1 ■①「水洗い不可」マークを「ドライコース」で洗濯する
洗濯機にある「ドライ」とは、クリーニングで行う「ドライクリーニング」とは全くの別物です。
以下にドライコースとドライクリーニングの違いをまとめました。
ドライコース
少ない水量で「ゆする」程度の動き。脱水時間も短く、通常コースと違い衣類同士が絡まないように洗濯する。
ドライクリーニング
水洗いできない衣類に使用される方法。油を原料とした有機溶剤を使い衣類の汚れを落とす。
家庭用の洗濯機に有機溶剤を入れる場所はないので、自宅でドライクリーニングを行うことはできません。
洗濯機の「ドライ」という表示を「ドライクリーニング」と思って水洗いできないものを洗濯すると高確率でウールが縮むことになります。
「水洗い不可」マークの衣類は基本的に自宅で洗濯はできないので注意しましょう。
ウールが洗濯で縮む原因|その2 ■②中性洗剤以外の洗剤を使ってしまう
ウールの原料である獣毛はアルカリ性に弱いという性質を持っています。汗や皮脂は酸性なので、洗濯洗剤はほとんどがアルカリ性。
つまり普通の洗濯洗剤でウールを洗うと、ウールの繊維が汚れと判断されてしまうことに。ゴワツキや型崩れ、風合いの乱れの原因になります。
ウールの繊維を傷めないように洗濯するには普段使っている「アタック」などではなく、おしゃれ着用の中性洗濯洗剤がベスト。おすすめの中性洗剤は「ウールの洗濯方法|必要な物」で紹介しているので参考にしてください。
ウールが洗濯で縮む原因|その3 ■③洗濯機でしっかり脱水してしまう
水分を含んでスケールの開いているウールは、ただでさえ繊維同士が絡みやすくなっている状態。
洗濯機の脱水機能をフル活用して脱水すると、摩擦で繊維同士が一気に絡み合います。
洗濯機の脱水機能だけを使う場合でも、一番弱いコースで1分以内を心がけましょう。
ウールが洗濯で縮む原因|その4 ■④ハンガーに吊るして直射日光に当ててしまう
ウールのような天然素材は吊るすことで繊維の網目が大きく広がります。水分を含んだ状態でハンガーに吊るすと、衣類と水分の重さで下に大きく伸びることに。
また直射日光による急激な乾燥は、縮みだけでなくウールの変色や劣化を引き起こすこともあります。
脱水後のウールは直射日光の当たらない風通しの良い場所で平干しが鉄則です。
洗濯前に|ウール縮みの直し方も知っておく
水洗い可能な洗濯表示のついているウール製品は、優しく手洗いすれば縮みを防ぎながら自宅で洗濯することが可能です。
しかし万が一に備えて、ウールを実際に洗濯する前に縮みの治し方も確認しておきましょう。
ウール縮みの治し方には「スチームアイロン」を使う方法と「トリートメント」を使う方法の2種類があります。
洗濯前に知っておきたいウール縮みの治し方その1 ■①スチームアイロンの蒸気を使う
スチームアイロンを使う場合、ラベルの品質表示で「どの程度の温度までアイロン可能か?」を調べてから行います。
品質表示は以下を参考にしてください。
アイロンを表示通りの設定温度にしたら、必ず当て布の上から作業します。
- アイロンを浮かしながらスチームをかけ、水分を含ませる。
- やけどに注意しながら形を整える。
- 再度平干しして乾かせば完成。
ウールの生地を傷めない大事なポイントは、設定温度を守ることと当て布をすることです。
洗濯前に知っておきたいウール縮みの治し方その2 ■②トリートメントで絡まりをほぐす
実は獣毛は人間の髪と構造がよく似ています。ウールが縮んだ状態は人間の髪の毛が絡まっている状態とそっくり。そのためウールの縮みをほぐして伸ばすには、トリートメントも効果的なのです。
トリートメントがウール繊維の滑りを良くして、絡まりをほぐしやすくしてくれますよ。
- 30℃のぬるま湯にトリートメントを少量だけ溶かし、ウールの縮んだ部分を浸す。
- 縮んだ部分を少しずつ引っ張って伸ばす。
- 伸ばし終えたらそのまま30分ほど放置。
- 乾いたタオルで包みしっかりと水気を取り、形を整えて平干し。
ぬるま湯とトリートメントがあればできるので、スチームアイロンを使うより簡単です。
ウールの洗濯方法|必要な物
ウールの洗濯に必要なアイテムは以下の4つです。
- ウールの衣類が入るタライや洗面器(洗面台や洗濯機で代用してもOK)
- 中性洗剤
- 平干し用のネット
- ゴム手袋
洗剤を使った手洗いになるので、手荒れを防ぐためにゴム手袋があると安心。
縮まないウール洗濯に必須の、おすすめ中性洗剤も合わせて紹介します。
ウール洗濯に必須|縮まない中性洗剤その1 ■①どこでも買える手軽さが魅力「エマール」
KAO/花王
エマール(EMAL)洗濯洗剤
おしゃれ着洗剤の定番!ドラックストアやスーパーなどで普段の買い物ついでに買える手軽さもいいですよね。
毛玉や縮みを防ぐだけでなくダメージリペア技術で繊維を内側から補修。ウールの伸びやヨレの戻りも期待できます。カジュアルウエアにも対応しているので一家に1本常備しておくと困りません。
ウール洗濯に必須|縮まない中性洗剤その2 ■②手洗いを考えて作られた優しさ「デリケート&ウールウォッシュ」
ecostore/エコストア
デリケート&ウールウォッシュ
多くの中性洗剤は洗濯機の弱水流で使うように作られていますが、デリケート&ウールウォッシュは手洗いでのウール洗濯が前提のおしゃれ着用洗剤。
天然ユーカリの香りは洗剤のムッとする臭いが苦手な方でも使いやすいです。ふわっふわのウールから時に漂う爽やかな香りで、周囲から「どこの洗剤?」と尋ねれるかも!
ウール洗濯に必須|縮まない中性洗剤その3 ■③着ているあいだもケアできる「アクロン」
LION/ライオン
アクロン おしゃれぎ用洗剤
ニットを着ていて困るのが、いつの間にか出来てしまった毛玉の処理。シルキータッチ成分の入っているアクロンなら、脇の下や裾の「こすれ毛玉」を予防してくれます。
アクロンで優しくウールを洗濯して、毛玉処理からも解放されましょう。
ウールの洗濯方法7ステップ
家庭でのウール洗濯は次の7ステップです。
- 洗濯する前の衣類のサイズをおおまかに測る。
- ぬるま湯に中性洗剤を溶かす。
- 長くても5分以内で押し洗い。
- 新しいぬるま湯ですすぎ洗い。
- バスタオルに包んで脱水(洗濯機でごく短時間脱水しても良い)。
- 形を整えて平干し。
- 乾いたらサイズを測り縮みがないか確認。
それぞれのステップを詳しく解説します。
ウールの洗濯方法|ステップ1 ■①洗濯前の衣類サイズをおおまかに測る
ウールの洗濯前後で縮みがないかを確認するために、洗濯する前に衣類のサイズをおおまかに測っておきます。
床や机の上などに衣類を広げてから作業するとやりやすいですよ。測っておく部分は以下の4か所です。
- 着丈(襟元から裾までの長さ)
- 身幅(左の脇下から右の脇下までの長さ)
- 肩幅(左の肩から右の肩までの長さ)
- 袖丈(肩から袖までの長さ)
ウールの洗濯方法|ステップ2 ■②ぬるま湯に中性洗剤を溶かす
ぬるま湯の温度は30℃がベストです。ぬるま湯をウールがしっかり浸かるくらい洗面器などにためたら、中性の洗濯洗剤を入れ溶かしこみます。
衣類を入れる前に洗剤をぬるま湯でしっかり溶かしておくのがポイント!
お湯の温度が途中で激しく変わると縮みの原因になってしまうので、素早く手洗いを開始しましょう。
ウールの洗濯方法|ステップ3 ■③軽く押し洗い
長くても5分以内でウールを押し洗いします。縮みの原因となるため、こすったりもんだりしないようにしましょう。
ウールは濡れた状態での刺激に弱いので、意外なことに「触りすぎないこと」が縮ませない洗濯のポイントとなります。
【押し洗いのやり方】
指を開き気味にして洗濯物を軽い力で押し、手を離す。洗濯物がふんわり浮いてきたら再度押すことを繰り返す。
ウールの洗濯方法|ステップ4 ■④新しいぬるま湯ですすぎ洗い
洗剤を落とすために新しい30℃のぬるま湯で再度押し洗いをしてすすぎます。
ウール洗濯のすすぎ目安は約1分間ですが、洗剤が出てこなくなるまで優しく押してすすぎましょう。
ウールの洗濯方法|ステップ5 ■⑤脱水
大きめのバスタオルでウールを包み、優しく水気を取り除きます。
洗濯機で脱水することも可能ですが摩擦が起きやすいので、できればバスタオルで脱水しましょう。
また雑巾やタオルのようにギュっと絞ることも縮みの原因です。
洗濯機を使う場合はネットに入れ30秒程度。網目の大きいウールの場合は15秒程度の軽い脱水に留めます。
ウールの洗濯方法|ステップ6 ■⑥形を整えて平干し
シワを伸ばし形を整えて平干しします。
襟元や着丈の伸びによる型崩れの原因になるため、ハンガーや物干しに吊るすのは避けましょう。
直射日光の当たらない風通しの良い場所に平干しして自然に乾かします。
ウールの洗濯方法|ステップ7 ■⑦縮みがないか確認
裏地や縫い目など乾きにくい部分まで乾いていることを確認したら、洗濯前に測った部分と同じ箇所を測り縮みがないか確認しましょう。
長さの変化が気になる場所は【洗濯前に|ウール縮みの直し方も知っておく】でご紹介したように、スチームアイロンかトリートメントを使って縮みを直します。
ウールのキレイを守る日頃のお手入れ2ステップ
上質な素材であるウールは日頃をお手入れをきちんと行うだけで長持ちします。
とはいっても、元々汚れがつきにくいウールのお手入れはとても簡単。次の2ステップでサッとお手入れできますよ。
- 風通しで湿気を逃がす
- 洋服ブラシでサッと払う
洗濯頻度を減らす|ウールのキレイを守る日頃のお手入れ1 ■①風通しで湿気を逃がす
元々湿気を逃がしやすいウールは風通しの良い場所に置いてあげるだけでOKです。このときの注意点は次の2つ!
- 変色や劣化の原因となるので直射日光には当てない。
- 伸びや型崩れを防ぐためハンガーは使わず平置き。
帰宅したらホコリやゴミをサッと払い、風通しをしてからしまうだけで長持ちしますよ。
洗濯頻度を減らす|ウールのキレイを守る日頃のお手入れ2 ■②定期的にブラッシング
定期的なブラッシングには
- 目に見えないチリやホコリを落とす。
- 毛流れを整え毛玉の発生を防ぐ。
- ウールの風合いを守る。
このようなメリットがあります。
専用の衣類ブラシを使い、以下の手順でブラッシングしてお手入れしてあげれば「いつもキレイなニットを着ている上品な人」というイメージがバッチリつきますよ。
- 繊維の流れに逆らってブラッシングし、ホコリやチリをかき出す。
- 繊維の流れに沿ったブラッシングでホコリを払い落とす。
- 繊維の流れに沿って風合いを整える。
どの工程でも力を入れず優しく行いましょう。