着物に食べ物や化粧品等が付いて困っている方はいませんか? 人によっては着物に汗や泥はね、墨汁やインク等が付いている方もいるでしょう。着物に付いたしみは、できるだけ早く落とすのが染み抜きのポイントです。
そのため着物にしみが付いたら、まず、応急処置をしましょう。「応急処置をするか? しないか? 」で、その後の染み抜きを左右します。
今回は着物の染み抜きについてまとめました。「着物にしみが付いた場合の応急処置」「洗剤別の着物の染み抜き方法6つ」「原因別の着物の染み抜き方法15タイプ」「自分で着物の染み抜きをする時の注意点3つ」「着物の染み抜きをプロに頼んだ場合の料金相場」をチェックしましょう!
着物にしみが付いた場合の応急処置
着物にしみが付いた時は、一刻も早く応急処置をすることです。2つの応急処置のやり方をチェックしましょう。
■1 ティッシュに水をつけ、汚れを吸い取る
食品等、着物に何か付いてしまった時はティッシュに水をつけて、ティッシュに汚れを吸収させましょう。ただし着物にティッシュを強く押しながこすると、繊維の奥までしみが浸透します。必ず軽く押す程度にして、ゴシゴシこすらないようにしましょう。
ある程度しみをティッシュにシミを吸収させたら、乾いたティッシュで優しく水気を取ります。
■2 染み抜き用洗剤や食器洗剤で落とす
着物のしみの応急処置には、染み抜き用洗剤や食器用洗剤を使いましょう。食器用洗剤は油性系等は落ちますが、ジュースや水性ペン等水性系の汚れには不向きです。
万能なのは染み抜き用洗剤のため、1本あると重宝します。例えば「エコベール」は食品以外にも泥汚れも落とし、ニオイもキツくありません。「レオニス」は持ち運びに便利なペンタイプで、どんなしみも落ちると評判です。
洗剤別の着物の染み抜き方法6つ
着物の染み抜きは、しみに合わせて洗剤等を使い分けると落ちやすいです。洗剤別の着物の染み抜き方法を6つ、ご紹介します。
■ 1 ベンジン
着物にファンデーション等の化粧品が付いた時は、ベンジンで染み抜きをします。まずは「ベンジン・汚れてもいい布を2枚・脱脂綿」を用意しましょう。
ベンジンで着物が色落ちする可能性があるため、目立たないところで色落ちチェックをします。
しみの下に1枚目の布を敷き、脱脂綿にたっぷりベンジンを含ませましょう。しみの上にベンジンを含ませた脱脂綿を載せたら2枚目の布でしみと、しみの周辺を叩き、水ですすぎます。
■2 酸素系漂白剤
着物にタンパク質系の食べ物(肉や魚介・卵・大豆・乳製品)が付いた時は、酸素系漂白剤で染み抜きをします。「酸素系漂白剤・汚れてもいい布・綿棒」を用意しましょう。
しみの下に布を敷き、綿棒に酸素系漂白剤を含ませて着物に塗布します。できればドライヤーの熱風を2分程度当てましょう。染み抜き効果が高まります。しばらくしたら水ですすぎましょう。
■3 重曹
重曹は特にワイン等、色がつく食べ物の染み抜きに向いています。ただしシルクは着物を傷めてしまうため、使用できません。
「重曹・熱湯」を用意したら、しみの上に、しみが隠れるくらい重曹をかけます。次に熱湯を上から注ぐと、赤ワインのしみ等もスッキ落ちます。
■4 歯磨き粉
墨汁の染み抜きは歯磨き粉を使います。墨汁が着物に付いたら、できるだけ早く染み抜きするのがポイントです。「歯磨き粉・歯ブラシ・汚れてもいいタオル・お湯」を用意しましょう。
歯ブラシに水を含ませたら歯磨き粉を付けて、しみをこすります。歯磨き粉が足りなくなった時は足しましょう。墨汁が浮いてきたら、タオルにお湯を浸して絞り、墨汁を拭き取りましょう。
■5 クレンジングオイル
着物に付いた口紅やチョコレートは、クレンジングオイルで染み抜きします。用意する物は「クレンジングオイル・歯ブラシ・汚れてもいいタオル」です。
歯ブラシにクレンジングオイルを塗布したら、しみの上を叩きます。しばらくしたら乾いたタオルで拭き取りましょう。再度、歯ブラシで叩いたり、手で着物を揉みます。
しみが浮いてきたら歯ブラシに水を含ませて叩くか、手で揉みながら水ですすぎ、タオルで拭き取りましょう。
■6 台所用洗剤
着物についた醤油のしみは台所用洗剤を使って染み抜きをします。用意する物は「台所用洗剤・歯ブラシ・汚れてもいいタオル」です。
しみの下にタオルを敷き、歯ブラシに水を含ませて叩きます。次に台所用洗剤を歯ブラシに付けたら、しみを叩き着物をすすぎましょう。しみが、まだある場合は説明した工程を繰り返します。
原因別の着物の染み抜き方法15タイプ
次はコーヒーやインク等、原因別の染み抜き方法を15個ご紹介します。
■1 コーヒー
コーヒーの染み抜きをする時は「ティッシュや不要な布・歯ブラシ・タオル」を用意します。
ティッシュに水をを含ませたらしみを叩き、さらに歯ブラシに水を含ませて叩きましょう。その後タオルで拭き取ります。
■2 紅茶のシミ
中性洗剤(エマール等)で紅茶の染み抜きをします。用意する物は「中性洗剤・歯ブラシ・綿棒・汚れてもいいタオル」です。
しみの下にタオルを敷きます。次に紅茶のしみに中性洗剤をつけ、歯ブラシで叩きましょう。小さなしみは綿棒を使います。水ですすぎ、しみが落ちていない時は再度、染み抜き作業をしましょう。
■3 ソース
ソースの染み抜きも作業も、紅茶の染み抜きと全く同じです。紅茶の染み抜きの方法を参考にして下さい。万が一、しみが落ちない時は、酸素系漂白剤や消毒用オキシドールで染み抜きをします。
ただし着物が色落ちする可能性があるため、目立たないところで色落ちチェックをしましょう。用意する物は「酸素系漂白剤や消毒用オキシドール・ナイロン素材の筆・ドライヤー・いらないタオル」です。
しみの下にいらないタオルを敷き、ナイロン素材の筆に酸素系漂白剤や消毒用オキシドールを含ませて、しみに塗布します。次にドライヤーの温風を、着物から15cm程度から離して当てます。しみが落ちたら水ですすぎましょう。
■4 ケチャップ
ケチャップの染み抜きも、紅茶と全く同じ方法です。紅茶の染み抜き方法を参考にして下さい。
またどうしてもしみが落ちない時は、ソースの染み抜きで説明した酵素系漂白剤や消毒用オキシドールを使った方法を行いましょう。
■5 ワイン
ワインを着物に付けてしまった時はティッシュに水をつけて、優しく叩き、乾いたティッシュで拭き取ります。
どうしても染み抜きできなかった時は、クリーニング店で染み抜きをお願いするのが一番です。通常のクリーニング店ではなく、着物専門のクリーニング店にお願いします。着物を購入した場合は、購入した店舗で相談するのもいいでしょう。
■6 インク
特に水性インクの染み抜きは厄介で、油性インクよりも染み抜きが難しいと言われています。「ティッシュ・汚れてもいいタオル3枚・台所用洗剤」を用意しましょう。
着物に水性インクがたっぷり付いている時は、上からティッシュを載せて、水性インクを吸収させます。ポイントは手でティッシュを押さえたり、こすらないことです。しみが広がる原因になります。
1枚目のタオルに台所用洗剤を垂らし、しみを優しく叩きましょう。タオルにインクが移ってきたら、2枚目のタオルに水を含ませて、さらに叩きます。インクが落ちてきたら3枚目のタオルで、優しく押して水分を取り除きましょう。
■7 墨汁
墨汁の染み抜きはお米と歯磨き粉を使います。用意する物は「温かいお米(炊いてあるもの)大さじ1杯程度・歯磨き粉・台所用洗剤・お米を入れる容器・歯ブラシ・汚れてもいいタオル」です。
お米を入れる容器にお米と台所用洗剤を入れて、歯ブラシ等で混ぜながらお米を潰しペーストにします。しみの下にタオルを敷き、ペーストを墨汁に載せて叩きましょう。次に歯ブラシに歯磨き粉を載せて、さらに叩きます。そして墨汁の手で揉みながら水洗いしましょう。
■8 ボールペン
ボールペンの染み抜きをする時は、「エタノール・タオルやキッチンペーパー・台所用洗剤」を用意します。
エタノールをタオルやキッチンペーパーにたっぷり含ませたら、しみを叩きます。しみが落ちない時は、しみに直接、台所用洗剤を垂らして手で揉みましょう。最後に水で着物をすすぎます。
■9 口紅のシミ
口紅の染み抜きをする時は、「いらない布・脱脂綿やガーゼ・消毒用アルコールやベンジン」を使います。消毒用アルコールやベンジンは着物が色落ちする可能性があるため、目立たないところで色落ちチェックをしましょう。
脱脂綿やガーゼに消毒用アルコールやベンジンをたっぷり含ませたら、しみを叩きます。しみが落ちたら、着物を水ですすぎましょう。
■10 ファンデーション
着物に付いたファンデーションを落とす時は、「ベンジン・いらない布を2枚・歯ブラシ・ドライヤー」を用意します。ベンジンを使う前に目立たないところで、色落ちチェックをしましょう。
1枚目の布にベンジンをたっぷり含ませたら、しみをベンジンで濡らすように叩きます。2枚目の布で着物の織目に沿って優しくこすりましょう。着物の織目は縦が基本です。布を滑らした時に引っかかる感じがする時は織目と逆らってこすっている可能性があります。
しみが落ちたら2枚目の布で拭き取りましょう。ドライヤーの冷風を着物の裏と表に当てて乾かします。
■11 血液
血液の染み抜きは「水酸化アンモニウム(アンモニア水)・脱脂綿やガーゼ・中性洗剤」です。水酸化アンモニウムはツーンとくるような匂いがするため、喚起やマスクをするといいでしょう。
脱脂綿やガーゼにたっぷり水酸化アンモニウムを含ませたら、しみを叩きます。血液が落ちない時は20分以上(最長でも1時間)置いてから、着物に中性洗剤をつけて水ですすぎます。
■12 汗のシミ
汗の染み抜きをする時は、汗が着物に浸透する前にタオル等に吸収させるのがポイントです。「タオル・霧吹き・水やぬるま湯」を用意します。
霧吹きの中に水やぬるま湯を入れて、しみに噴きつけましょう。噴きつけたところにタオルを当てたら、手で押さえて水気を取ります。最後の着物を陰干ししましょう。
■13 泥はねのシミ
泥はねのしみは乾いてから手で揉むか、爪でこする等して落ちることもあります。落ちない時は布で染み抜きをしましょう。用意する物は「汚れてもいい布・中性洗剤・歯ブラシ」です。
泥はねのしみの下に布を敷き、歯ブラシに中性洗剤を塗布したら叩きます。水ですすぎ、しみがある時は再度、染み抜き作業をしましょう。
■14 カビのシミ
カビの染み抜きは「洋服用ブラシ・着物用ハンガー・空気清浄機」を使います。カビを用服用ブラシでこすり、着物用ハンガーに着物をかけましょう。空気清浄機のある部屋や風通しのいい部屋に、着物用ハンガーにかけたまま数週間~数ヶ月放置します。
カビの染み抜きはセルフで行うのは限界があるため、着物専門のクリーニング店にお願いした方がいいでしょう。
■15 古いシミ
着物の古いしみは繊維の奥深くまで浸透していることが多いため、セルフで落とすのは難しいでしょう。でも着物の生地が傷んでいない場合、着物専用のクリーニング店であれば、染み抜きできる可能性があります。
自分で着物の染み抜きをする時の注意点3つ
自分で着物の染み抜きを上手に行う時は、3つのことに注意しましょう。
■1 お湯でなく水を使う
着物を染み抜きをする時は基本的に水を使います。理由はお湯を使うと、しみが着物の繊維に入り込み、さらに落ちにくくなることがあるからです。ただし染み抜き方法によっては、熱湯やぬるま湯を使うこともあります。
■2 汚れの周辺から落とす
着物の染み抜きは、しみ部分から責めるのでなく、しみの周りから行いましょう。何故ならしみ部分から染み抜きをすると、しみの周りに汚れが広がるため乾いた時に輪じみになるからです。
■3 汚れをゴシゴシこすらない
着物の染み抜きはゴシゴシこすると、汚れが着物の繊維の中に入り落ちません。必ず優しくこする、叩くのが基本です。また無理に染み抜きをすると着物を傷めるため、無理をせずクリーニング店にお願いしましょう。
着物の染み抜きをプロに頼んだ場合の料金相場
着物の染み抜きをプロにお願いした時の相場を説明しましょう。しみの大きさや変色、カビ等によって異なります。
「変色がない場合は1600円~3800円以上」「変色がある場合は2000円~4300円以上」「カビは3800円以上」です。
まとめ
着物の染み抜きは時間との勝負です。まずは応急処置をしてから染み抜きをしましょう。是非、参考にして下さい!