光沢があってツルツルした肌触りのレーヨンは、高級衣料やおしゃれ着などに使用されています。ドレープが美しく、なめらかな着心地なので夏用の服にもよく使われています。
シワになりやすく、濡れると弱くなって縮んでしまうデリケートな生地なので、クリーニングに出すことも多いのですが、レーヨンは自分で家庭で洗えます。レーヨン素材のおしゃれ着は、クリーニング店に出すと1枚500円から1000円、高いものになると数千円する場合も。
クリーニング代を節約するためにも、レーヨンを家庭で洗えるようになりたいですよね。ここでは、シルクにとてもよく似たレーヨンの家庭での洗濯方法についてまとめました。
レーヨンはどんな生地か知っておく
レーヨンは、人工的に絹(シルク)に似せて作られた素材なので「人絹(じんけん)」と昔は呼ばれていました。
レーヨンはフランス語の「光」という意味の「レイ(Ray)」という言葉が語源です。
シルクに似た美しい光沢や、なめらかな手触りがあるため、シャツや服の裏地などによく使用されています。
アロハシャツやネクタイ、スカートなどにも利用されているのを見ますね。
ポリエステルなど石油からできた化学繊維とは違って、木材のパルプやコットンに含まれているセルロースという繊維を化学的に加工して糸にしています。
植物由来のためレーヨンは土に埋めれば自然に還るので、環境に優しい生地でもあるのです。
レーヨンの弱点は、水に塗れると縮むことと、強度が半分以下になってしまうことです。
雨の日などは、うっかり破ってしまわないように気をつけたほうが良いでしょう。
また、塗れると水による輪染みもできやすいので、洗濯する時は注意しましょう。
光沢がある生地なので、輪染みが他の生地よりも目立ちやすいのです。
水に塗れると形が不安定になる素材なので、濡れた瞬間から縮んでしまいますし、逆に伸びてしまうケースもあります。
レーヨンを形成しているセルロースは、綿や麻と同じ成分です。
綿や麻も洗濯すると縮みますが、レーヨンも同じく縮みやすいのです。
レーヨンは一度縮んでしまうと、もう元には戻りません。
また、小じわができやすい生地なので、雑巾をしぼるようにギュッとしぼるとシワがついてしまいます。
洗濯機で脱水させる時もタオルで包んでネットに入れ、脱水時間も30秒程度にしておくなど注意が必要です。
1 レーヨンを洗う前に服のサイズを測っておく
洗濯のプロであるクリーニング店では、洗うと縮みやすい生地の場合、洗う前に採寸をしておきます。
そして、もし縮んでしまった場合は、アイロンの蒸気を当てるなどして優しくゆっくり伸ばしていくのです。
自分で洗濯する時も、レーヨンの生地がどの程度伸び縮みするか、採寸しておきましょう。
測るべき場所は
・方から袖口までの腕の長さ
・肩から肩までの肩幅の長さ
・首の後ろから裾までの背中の長さ
・袖口の直径
・裾の周囲
などです。
もし極端に縮んだり伸びたりしてしまったら、アイロンの蒸気で修正するのはプロでないと難しいので、クリーニング店にお願いしましょう。
レーヨンにアイロンをかける時は、生乾きの時に行うと小じわが取れて良いのですが、レーヨンは水に濡れると弱い生地です。
そのためアイロンの蒸気を当てながら引っ張ると破れやすいので、プロでないと型くずれの修正は難しいのです。
2 レーヨン用の洗剤を選ぶ
■洗濯できるレーヨンか「洗濯表示」をチェックしておく
レーヨンなら何でも洗える、というわけではありません。
洗える生地かどうかは、服にタグについている「洗濯表示」を確認しましょう。
「△」「○」「X」のような図形で描かれているマークです。
ちなみに「△」は漂白剤について、「○」はクリーニング店に出す時の表示、「X」は洗えない、漂白できないなど、不可を示す表示です。
このように、洗濯表示は見ただけでは何を示しているのかわからないものが多いため、衣料品メーカーや洗剤メーカーでは洗濯表示を解説しているサイトを立ち上げています。
レーヨンでも、非常にデリケートな作りであったり、装飾が多い服などは家庭で洗うのが難しいのでクリーニング店に出したほうが良いでしょう。
レーヨン100%ではなく皮や羊毛といった他の素材とミックスして作られた服も、素材によって吸水性や伸縮率が違うので、クリーニング店で洗濯を頼んだほうが良いです。
洗濯表示を自分で調べることができるサイト
・花王の洗濯表示用ページ
https://mykaji.kao.com/washing_guide/32319/?_ga=2.183386982.1148189831.1504682390-1018301089.1503726187
それぞれの洗濯記号について、イラストと説明、そして由来など詳しい説明が書かれています。
・ライオンの洗濯表示用ページ
http://acron.lion.co.jp/washtag/
新しい表示と、古い表示がイラストとともに説明されているので、とてもわかりやすいです。
・洗濯表示アプリ
https://play.google.com/store/apps/details?id=exciton.jp.laundrysymbol&hl=ja
Android用の洗濯表示検索アプリです。
新洗濯表示も、旧洗濯表示も両方調べることができます。
・これ洗える?
https://itunes.apple.com/jp/app/%E3%81%93%E3%82%8C%E6%B4%97%E3%81%88%E3%82%8B/id858102421?mt=8
ライオンが出しているiPhone用の洗濯表示検索アプリです。
■レーヨンは弱アルカリ洗剤で洗う
洗剤を選ぶ時に気をつけることは、「アルカリ性」「中性」「酸性」のどの性質かということです。
洗浄力の強さや、生乾きのニオイを防いでくれるといった機能も気になりますが、それ以上に注意すべきなのが洗剤の性質なのです。
レーヨンは弱アルカリ性の洗剤だとよく汚れが落ちます。
しかし、アルカリ性の洗剤では強すぎるのです。
また、中性や酸性の洗剤では、汚れが落ちません。
洗剤にはそれぞれ得意な汚れや生地があります。
裏の説明書きをよく読んで使用しましょう。
■高級洗剤 オブリージュ
オブリージュ 120ml 高級衣料用洗剤 無香料
おしゃれ着洗い用の洗剤はいくつかありますが、「オブリージュ」はその中でも高級衣料とシルク用に作られた日本製の洗剤です。
何と、江戸時代から続く老舗呉服店が、日本油脂と一緒に開発した洗剤なのです。
汚れがしっかりと落ちて、大切な衣類も痛まないのでリピーターも多く見られます。
オブリージュは、汚れを落とす機能と、衣類をガードしてくれるリンスの機能の二つの機能を持っています。
使用方法は、他のおしゃれ着洗い用洗剤とほぼ同じなので難しくありません。
オブリージュの場合は、30度位のぬるま湯5リットルにつきキャップ2杯を溶かします。
ぬるま湯がなければ、水でもかまいません。
キャップ1杯が5mlですので、使用する水量が少ないようでしたらオブリージュの量も調節してください。
優しく押し洗いしたら、10分程度つけ置きます。
生地が痛むので、あまりゴシゴシ押し洗いしないよう気をつけてくださいね。
水が透き通るまですすぎ洗いをしたら、軽く絞った後、タオルに挟んで水分を取ります。
洗濯機で脱水する場合は衣類をタオルで包んだ後、ネットに入れて30秒ほど脱水します。
「オブリージュ」はシルクやレーヨンのほか、羊毛や獣毛、アセテート、麻、合成繊維、綿など生地を洗うことができます。
日本一高い洗剤とも言われていますが、使用した方々のブログや口コミを見ると大変満足感のある使い心地であることが伝わってきますよ。
■コスモ工業 コスモドライDX
家庭用ドライクリーニング洗剤 コスモドライDX
「コスモドライDX」は、ヤシ油やオレンジオイルなど、天然成分で全てできている洗剤です。
蛍光剤や漂白剤、柔軟剤やりんは配合していないので、肌の弱い方やこども用の衣類にも安心して使えます。
レーヨンの洗濯は浸け置き洗いが基本です。
浸け置き洗いは汚れがよく落ちるのですが、一度衣類から出た汚れが再び衣類にくっついて再汚染する危険性もあります。
「コスモドライDX」は一度出た汚れは寄せ付けない機能があるので、スッキリ綺麗に洗えます。
また、洗う水の温度がぬるま湯でなく水の場合でも、洗うパワーは落ちません。
オレンジオイルで繊維の奥に入り込んだ嫌な臭いも脱臭してくれます。
レーヨンの他、シルクや麻、羊毛、獣毛、ポリエステル、テビロンなどの天然繊維、化学繊維に使用できます。
■サンワード社 ハイ・ベックゼロ
ハイ・ベックゼロは熊本に本社がある会社で、30年以上に渡ってドライマーク製品を家庭で洗うための洗剤開発をしてきました。
基本の洗剤となる「ハイ・ベックゼロ」のほかに、仕上剤やお試しサイズの「ハイ・ベックゼロ ビギンズ」もあります。
ハイ・ベックゼロは、お湯ではなく水に溶かすのが特長です。
約15度から25度の水温にして、ハイ・ベックゼロを入れてください。
5度以下の水では洗浄力が落ちてしまいますので、冬に使用する時には水温に気をつけてください。
水30リットルに対し、ハイ・ベックゼロをスプーン1杯(10グラム)入れます。
洗濯機で使う場合はハイ・ベックゼロを入れた後に10秒ほど洗濯機を回して、水に十分に溶かしてください。
水の量は、レーヨンの服全体が浸る量であれば十分です。
洗剤水に浸け置く時間は、わずか5分です。
じっとハイ・ベックゼロ水の中に浸け置くだけで、洗濯機は回さないでください。
その後十分に洗いだら、軽く脱水をして完了です。
ハイ・ベックゼロは柔軟剤はいりません。
また、光沢が落ちてきてしまった服や、型崩れしてしまったレーヨンには、「ハイ・ベックゼロ仕上剤」を使うと良いでしょう。
■アスパイラル社 プロ・ウォッシュ
「プロ・ウォッシュ」は、大阪に本社のあるアスパイラル社が開発した、おしゃれ着洗い用洗剤です。
アスパイラル社のホームページから申し込む通販のみの販売で、1リットルで税抜2,500円で販売しています。
「プロ・ウォッシュ」はレーヨンをアミノシリコンでコートするので、洗った時の縮みを防いでくれます。
元々はクリーニング店専用の特殊洗剤でしたが、通販で一般でも購入できるようにしています。
アスパイラル社では「わが家のシミ抜き&洗濯術」という本も出版しているほか、シミ抜きを研究しているホームページも立ち上げるなど、洗濯技術の普及に努めています。
3 レーヨンを洗う時間は全体で1分から2分以内で
レーヨンは水に濡れると縮んでしまうため、洗濯は短時間勝負です。
洗剤で特に注意書きが無いものについては、水で1分、長くても2分で洗いあげます。
水につけている時間は、なるべく最小限にしましょう。
コツとしては、大きめの洗面器を2つ用意します。
時間勝負なので、一つの洗面器で洗っていると水をためるまでに時間がかかり、レーヨンが伸縮してしまうのです。
一つの洗面器に、おしゃれ着洗い用の洗剤を溶かしておきます。
もう一つの洗面器は、すすぎ洗いのための水をためておきます。
洗剤をいれたほうの洗面器に服を入れたら、洗剤水の中を泳がせるようにして洗います。
レーヨンは水に濡れると弱くなる繊維なので、くれぐれもゴシゴシ洗わないようにしてください。
1分経過したら、真水が入った洗面器のほうにサッと移し替えます。
すすぎ洗いも数十秒から1分程度で終わらせます。
この後は、大きめのタオルでレーヨンの服の両側をサンドして水分を取ります。
縮んでしまわないように、早く水分をレーヨンから取るようにしましょう。
■レーヨンは洗濯機ではなく手洗いで
レーヨンの洗濯は時間勝負なので、洗濯機を使っていると水でどんどん縮んでしまいます。
そのため、レーヨンの洗濯はサッと洗濯水にくぐらせて、サッと水ですすぎ洗いします。
洗濯機を使うとしたら脱水の時だけです。
乾いたタオルに包んで、ネットに入れて30秒ほど脱水にかけてください。
洗濯機の脱水機能を使わなくても、大きなタオルではさんで水分を取れば十分ですよ。
4 レーヨンは形を整えながら干す
レーヨンを洗濯する上で、最後の難関が乾燥です。
レーヨンの服は、洗ったら平らな場所で平干しします。
100円ショップで売っている、上から吊り下げる網のようなものの上で乾かすと良いでしょう。
100円ショップの網は1段のものが多いですが、Amazonでは3段のものも販売しています。
梅雨時や台風シーズンは、何段かあるほうが乾かす時に楽になりますよ。
レーヨン素材でできた服は、ハンガーにかけると肩はハンガーの形になってしまいます。
また水分を含んで重くなった状態で乾燥させるため、身頃の部分は伸びてしまうことも。
せっかく上手に洗濯できたのに、乾かす時に型くずれしないよう最新の注意を払ってください。
■アイロンは生乾きのタイミングで
アイロンは、まだレーヨンが十分に乾ききっていない時に行います。
レーヨンは乾くのが遅い素材です。
汗や水をよく吸いますが、乾きが遅いのです。
アイロンをかける時は生地を痛めないように、日本手ぬぐいのような薄手で綿素材の布をあて布として使ってください。
レーヨンは乾ききってしまうと、アイロンを当ててもシワが取れにくい生地です。
うまくシワが取れなかったり、アイロンがけでシワを作ってしまったら、再びぬらしてから再度アイロンがけをしてください。
■レーヨンの洗濯をプロに頼んだ場合の相場はいくら?
宅配クリーニングの場合を見てみましょう。
ネクシーは、シャツの場合は普通料金で300円です。
シルクやカシミヤなど上質素材の場合、プラス270円になります。
レーヨンの場合の料金は書かれていませんが、絹や麻と扱いが似ているので270円プラスと思っておいたほうが良いでしょう。
その他に、ビーズやレースなどの装飾品がついている場合は、デリケートな洗濯方法になるのでプラス270円になります。
他のクリーニング店でも、1点につき1,000円程度は料金がかかります。
失敗を覚悟で自分で洗濯できるのか、プロでないと難しい服なのか、一度クリーニング店に質問してみるのも良いでしょう。
まとめ
今回は、レーヨンの洗濯方法について調査しました。
レーヨンは汗や水を良く吸う吸湿性のある生地ですが、水に弱く縮みやすい生地であることがわかりました。
また、シワになりやすいので、生乾きの時にアイロンをかけると見栄えも良くなります。
大変デリケートな生地なので、洗濯する時は手洗いが基本です。
縮まないよう洗剤を入れた水につけてから、すすぎ洗いが終わるまで、2分以内に終わらせなくてはいけません。
洗濯機で脱水する時には、30秒以内の短時間で終わらせる必要があります。
昔は、レーヨンは大変に縮みやすく洗濯が難しい生地のため、クリーニング店でさえじょうずに洗える店は少なかったのです。
生地は繊維の種類ごとに膨張率や伸縮率が違います。
とても大切な服で洗濯に失敗したくない場合や、表はレーヨンではない生地で裏にレーヨンが使用されているといった場合は、クリーニング店で洗濯をお願いしましょう。