「シマトネリコ(島十練子)」は名前は聞き慣れない植物ですが、名前が知られていないだけで街路樹や庭木にとても良く使われる木です。大きくなると建物の4階から5階程度まで成長し、西日本では、よく道に植えられているのを目にします。
成長が早く、丈夫で日かげでも育つため、ガーデニングになれない人でも育てやすい木の1つです。家の前や店の前に一本だけ植えて、シンボルツリーにする場合もあります。ここでは、成長が早いシマトネリコの剪定方法について調べてみました。
シマトネリコの特徴
「シマトネリコ」の原産地は、中国や台湾、東南アジアや沖縄で、温かい地域でよく育ちます。木の高さは低いものでも5メートル、成長すると15メートルから20メートルほどの高さまで伸びます。別名を「タイワン(台湾)シオジ」とも言います。成長が早いので、夏の暑い時期の爽やかな木陰づくりにもピッタリです。
シマトネリコの剪定の時期
シマトネリコの剪定の時期は、梅雨が終わった後と、夏の終わりに剪定します。真冬や真夏といった、気温が寒すぎたり暑すぎたりする時期はシマトネリコの剪定に向いていません。剪定する時も、一気にバッサリと切るのではなく、少しずつカットするようにしてください。
ただし、シマトネリコの花が見たい、実をつけたところを見たいのであれば、梅雨が終わった後の剪定はしないでください。夏前に剪定してしまうと、花が咲かなくなってしまいます。
シマトネリコの剪定に必要な物
シマトネリコの剪定には『剪定バサミ』『癒合剤』が最低限必要です。
手元に剪定バサミが無くて、材木用のノコギリや普通の紙を切るためのハサミで剪定すると、効率が悪いばかりでなくケガをしてしまいます。シマトネリコには材木用のノコギリは大きすぎますので、両刃ではなく片刃のハンディタイプのノコギリがオススメです。
また、ハサミは剪定用のものを園芸店で購入してください。生花の時のハサミは、細い草木を切るものですので、無理に枝を切ると手をケガしてしまうので注意しましょう。
■癒合剤(ゆごうざい)
癒合剤(ゆごうざい)とは、樹木をカットした後に塗る薬です。昔の人は樹木をカットした後に雑菌や雨水が入り込まないように墨汁を塗っていましたが、今は便利な薬品になりました。
細い枝までは塗る必要はありませんが、ある程度の大きな枝を剪定したら、雑菌が入り込まないように癒合剤を塗ってあげましょう。ペンキを塗ったり、ロウソクの蝋を溶かして塗ったりすることもありますが、ペンキやロウソクは後から割れてきたり剥がれたりすることがあるので注意してください。
家庭で育てている樹木であれば、チューブ式の癒合剤が一番手軽です。癒合剤の多くは、オレンジ色だったり青色だったりと、少しびっくりするような色をしていますが、隅々まで濡れているか、塗り忘れが無いように色付けがされていますので目安にしてください。
■剪定バサミ
剪定をする時には、道具を選ぶことが大切です。
シマトネリコの剪定には、ガーデニングバサミよりも大きな枝を切ることができる「剪定バサミ」を用意してください。剪定バサミは180mm、200mm、225mmの3種類の大きさがあります。通常は180mmを選びますが、特に手が大きい方であれば200mmや225mmを選びましょう。
選ぶ時の目安ですが、中指の真ん中から手首と手のひらの境目までの長さと、剪定バサミの全長が同じであればジャストサイズです。
また、使用した後は樹液や汚れを取ってからしまってください。洗わずにしまってしまうと、次回切れ味が悪くなり手をケガする恐れがあります。使えなくなった剪定バサミは無理に使おうとせず、新しいものに買い替えましょう。
普通の鋏のような形の剪定バサミは、ガーデニングバサミと言って細い枝を剪定するためのものです。シマトネリコの枝になると、もう少し大きくなるのでガーデニングバサミだと切りにくくなりますし、力を入れないと切れません。
■剪定ノコギリ
剪定するためのノコギリで、刃と柄をあわせた全体で30センチ程度です。剪定バサミでは切るのが難しい、直径2センチ以上の枝の場合は剪定ノコギリを使ってください。また、剪定ノコギリを使った後は、癒合剤を塗るのも忘れないようにしましょう。切った直後は平気そうに見えても、雨やホコリで雑菌が入る可能性があります。
■高枝切りバサミ
シマトネリコは15メートルから20メートルになるので、脚立や高枝切りバサミが必要になります。木の高さが3メートル以上になったら、自分の手を伸ばしても切りにくくなります。シマトネリコの高さを決める時には、自分で世話するのか、プロに剪定を頼むようにするのかも考えましょう。
もし、シマトネリコが植えてある場所の足場が不安定だったり、高い場所が苦手な方の場合は、高枝切りバサミがオススメです。剪定作業は、ずっと手を上げて行うので、あまり上をむいているとクラクラしてしまいます。時々休みながら作業を行ってください。
■脚立
足場が良い場所での作業で、体力に自信がある方の場合は脚立がオススメです。高枝切りバサミは遠くから枝を切るので、今ひとつ自分の思い通りになりませんが、脚立に乗って自分で剪定バサミで切れば思い描いたとおりの樹形になります。
1点注意として、脚立での作業に熱中すると目に見える範囲のみを刈り続けるため、後で離れて全体像を見た時に思っていたバランスと異なっている場合もあります。そのため全体像にデザイン的な理想を立てている場合、脚立での作業の際は時々遠くから眺めて確認をしましょう。
あまり高さのある脚立を選んでも作業しにくいので、脚立を選ぶ時は作業にあったものを使うようにしてください。くれぐれも、ストッパーをかけるのをわすれないようにしてくださいね。
シマトネリコの剪定方法16ステップ
■1 枯れている枝を剪定
まずは、枯れている枝を剪定してしまいましょう。剪定に慣れていないと、どの枝を切るべきなのか残すべきなのか、わからないことも多いでしょう。迷うと必要な枝まで切りかねないので、最初は誰が見ても剪定すべき枯れた枝から切ってください。
どこまで枯れているか見てもわからなかったら、先のほうから少しづつ切っていきます。細い枝であれば、パキッと割れるくらい乾燥しています。樹液が出てきたり薄黄緑色の面が見えてきたら、その部分は枯れていないので残しましょう。
■2 「ひこばえ」を剪定
「ひこばえ(蘖)」とは、木の根本からツンツンと出てくる芽のことです。放置しておくと、根からの栄養を吸って地面から何本も生えてきてしまいます。下から栄養を吸われると、幹や枝葉に栄養がいきませんので、見つけたら早めに剪定してください。
■3 「胴吹(どうぶき)枝」を剪定
「胴吹枝」とは「幹吹き枝」とも呼ばれていて、幹からピョンピョンと出て来る細い枝です。「ひこばえ」を剪定したら、下がだいぶスッキリしたと思います。次は幹の周辺をサッパリさせるために「胴吹枝」を剪定しましょう。残すべきメインの枝がすでに成長しているのに「胴吹枝」が出てくると、そちらに栄養が行ってしまいます。こちらも見つけ次第剪定する必要があります。
■4 「内向枝」(逆さ枝)を剪定
「内向枝」とは、先のほうではなく幹のほうを向いて伸びている枝のことを言います。枝は本来は上方向、外側に向かって伸びるものなので、内側に向いて伸びてしまうと幹か他の枝にぶつかってしまいます。伸びても邪魔になる枝ですので、これも見つけ次第剪定してしまいましょう。
剪定する時に、あまりに大きく伸びていると剪定するのをためらってしまいますが、元気に伸びているほど他の部分に栄養がいかなくなっている証拠です。内向枝は早めに剪定してください。
■5 「下垂枝」を剪定
内側に向かう枝をカットしたら、今度は下に向かう「下垂枝」を剪定しましょう。枝は空に向かって上に伸びるのが基本です。枝垂れ桜やしだれ梅のように、わざと下向きの枝を残す種類の植物は別として、大半の樹木は「下垂枝」をカットします。
■6 「からみ枝」を剪定
出来上がりの樹形を美しくするためには、他の枝と違う方向に生えていたり、交差して生えていたりする枝は剪定しなくてはいけません。「からみ枝」は、他の枝に絡まるようにして伸びている枝のことです。残すべき主枝の成長を妨げてしまうので、枝の根本からバッサリと切ってしまいましょう。
剪定ビギナーの時には見えてこなかった「からみ枝」も、剪定に慣れるに従って見えてくる場合があります。そのような場合、「からみ枝」がだいぶ大きくなってしまっているケースがあります。もし成長した「からみ枝」を剪定してしまうと、大きく樹形が崩れてしまうようであれば残しておくのも1つの方法です。
家庭で育てている樹木の場合は、道路や隣の家にはみ出さないなど様々な制約がありますので、樹形も状況によって変えていきましょう。
■7 「徒長枝」を剪定
「徒長枝」というのは、主枝からはえている枝で、幹に近い部分から元気よく出ているもののことを言います。幹から近い場所から出ているので、先の部分に行くべき栄養を吸い取ってしまうのです。
「徒長枝」の特長は、何といっても元気なことです。元気なのでうっかりすると、主枝を切って「徒長枝」をのこしてしまいかねません。樹形を乱すので、なるべく早く切りましょう。
もしもシマトネリコが老木で、主枝が古くなっていて「徒長枝」のほうが元気なのであれば、「徒長枝」のほうを残す方法もあります。また、主枝を伸ばしていると道路にはみ出る、壁にぶつかるといった状況であれば「徒長枝」を活かしても良いでしょう。
絶対に「徒長枝」を切らなくてはいけない、というわけではありませんので、臨機応変に対応してください。
■8 「交差枝」を剪定
「交差枝」とは、他の枝とクロスしている枝のことです。重なっている枝のどちらを残すのか悩むところですが、元気なほうを残すと良いでしょう。また、どちらかの枝が「かんぬき枝」といって同じ位置に別の枝が生えていたら、「かんぬき枝」になっている枝を剪定します。
剪定は切るべき枝をどうするのか迷いますが、迷った時は遠くから樹形を見て、バランス良く枝を残すようにしてください。
■9 「かんぬき枝」を剪定
「かんぬき枝」は、左右とも同じ位置に枝が出ている枝のことです。同じ場所から枝がでていると幹からの栄養分を取り合うことになってしまうので、シマトネリコにとっては負担になってしまいます。樹形を見てバランスが良いほうを残して、反対側の枝は切りましょう。
「かんぬき(閂)」というのは、ドアが開かないようにするための木で、地面に対して並行に通している棒です。幹に対して左右同じ場所から枝が出ている様子が、かんぬきをかけた戸のように見えたのでしょう。
■10 「並行枝」を剪定
だんだん剪定する枝を選ぶのが難しくなってきました。この「並行枝」も見分けがつきにくい枝の1つです。「並行枝」とは、同じ方向に生えてる枝です。幹から同じ角度に出ているため、上の枝が下の枝の日当たりを悪くしています。
どちらを残すかは、樹形によって違います。どちらかが「かんぬき枝」であれば、「かんぬき枝」になっているほうを剪定してください。残す枝は、このまま伸びても他の枝の邪魔にならないものを選びましょう。
■11 「罹病(りびょう)枝」を剪定
「罹病(りびょう)枝」とは、病気にかかっている枝のことです。枯れている枝は見てすぐにわかりますが、>病気の枝はよく見ないとわかりません。虫によって枝に穴があいていたり、枝の一部がシワシワになっていたり、コブのように一部分だけふくれていたら、それが「罹病枝」です。
鳥などが木に巣を作ることでも、雑菌が入って枝の形が変わることがあります。他の枝に広まらないうちに、早く剪定してください。
■12 「くるま枝」を剪定
「くるま枝」とは、1カ所から何本も枝が出てしまっているものを指します。自転車のタイヤのスポークは、中心から何本も出ていますが、そのような状態から「くるま枝」という名前がつけられました。樹形を乱すので、主枝から伸びている1本を残して、他の枝は剪定します。
■13 「ふところ枝」を剪定
「ふところ枝」は、主枝や他の枝から出ている細い枝で、そのまま大きくなると主枝の成長を妨げてしまう枝のことを言います。内側を向いていたり、他の枝と交差することが多いので、見つけたらすぐに切ってしまいましょう。
「ふところ枝」を切る事で風通しや日当たりを良くする事ができます。また「ふところ枝」は「こみ枝」とも呼ばれます。
■14 真ん中の強い枝を小枝のある位置まで剪定
シマトネリコは丈夫な木なので、成長すると15メートルから20メートルになります。買った時は自分よりも小さかったのに、一年であっという間に伸びてくれるのがシマトネリコの魅力でもあります。しかし自分で剪定できる限界は、脚立や高枝切りバサミを使っても3メートル程度が限界なので、先を剪定する必要があるのです。
剪定する位置は、一番中央の元気な枝を小枝のある位置まで切ってやります。切った位置が2メートル50センチ程度であれば、後になってもプロの手を借りずに自分で剪定できますよ。
■15 遠くから樹形を見る
ある程度剪定したら、少し離れた場所からシマトネリコ全体を見てみましょう。シマトネリコの樹形は『縦型の楕円形』『扇形』のどちらかが理想です。シマトネリコの特性的に、丸くボールのように刈り込むのは向いていません。涼しげな樹形が魅力なので、間引き剪定して間に風が通るようにしてください。
■16 理想の樹形になったら、切り口に癒合剤を塗る
樹形を見て理想の樹形になったら、切り口に癒合剤(ゆごうざい)を塗っていきましょう。丈夫な木ではありますが、切り口から雑菌が入ると成長を妨げかねません。全ての枝に癒合剤を塗る必要はありませんが、切り口の直径が1センチ以上のものは塗っておいたほうが言いでしょう。
雑菌が枝から入って腐らないようにするための薬ですので、癒合剤の代わりに、墨汁やペンキ、ロウソクでも代用は可能です。ですが市販の薬剤を使用するのが効果的かつ無難です。
シマトネリコの害虫
虫には強いシマトネリコですが「ハマキムシ」や「シマケンモン」には要注意です。「ハマキムシ」は茶色の蛾で「シマケンモン」は白と黒の縞模様の蛾です。どちらも幼虫の時に糸を出して、葉をくるくる巻いた状態にして、その中を住み家とします。8月が一番被害がひどくなる時期で、黒いポロポロとしたフンが多く出ます。
見つけたら葉ごと摘み取ってください。退治に使用する薬は住友化学園芸の「オルトラン水和剤」がよく使われています。「オルトラン」は水和剤の他にも種類があるので、間違えないようにしましょう。
まとめ
今回はシマトネリコの剪定について調べてみました。
剪定する時は、一度にバッサリ切ってしまうと失敗しがちです>。いくら丈夫なシマトネリコとは言え、成長するのには時間がかかりますし、自分の思った方向に枝が伸びるとも限りません。剪定は枝を数本カットしたら、少し遠のいて樹形を見るといった具合に行いましょう。
風通し良くすることと、成長した時に他の枝の邪魔にならない枝を残すのがポイントです。いくら元気な枝でも、全体の成長の妨げになるようでしたら剪定するようにしてください。また、古くて切れない剪定バサミはケガの元です。ハサミやノコギリは、切れないなと思ったら新しいものを使用してください。そして使った後は綺麗に洗って、油を塗っておいたほうがサビずに済みます。
剪定作業は、シマトネリコとの会話でもあります。多少切りすぎても、丈夫なので枯れない「シマトネリコ」は「ガーデニング初心者の剪定にピッタリ」です。剪定が終わると、よりシマトネリコが好きになりますよ。