イノシシは畑を荒らすので、環境省も害獣の一つに指定していますが、殺虫剤のような強い薬品で駆除することは鳥獣保護法があるのでできません。
イノシシはサイズも大きく牙もあるので、ばったり畑で遭遇すると突進してきて襲われる危険性もあります。イノシシは畑や民家の庭が、安全で快適な場所だと知ると繰り返し訪れます。一度被害にあったら早めに対策をして、イノシシに来たら危ない場所、不快な場所だと思わせないといけません。
ここではイノシシに被害にあわないための方法や、寄ってこないようにする方法をご紹介します。
イノシシの生態
イノシシは、わずか20センチの隙間があれば中に入ることができます。体重は100キロ前後で、大きなイノシシになると150キロになりますが、大きさの割に平らなので人が入り込めない隙間にも入れるのです。イノシシ対策の柵を作る時には、間隔に注意しましょう。
イノシシの体高は60センチから80センチあります。テーブルの高さ程度しかありませんが、ジャンプする力があるので、1mの高さの塀は軽く飛び越えてしまいます。柵や塀を作る時には、見た目でなく1m以上であることを測って設置してください。
イノシシは鼻先であちこち掘って食べ物を探し回ります。畑の土を掘りくりかえされて被害にあった人も多いと思いますが、これは鼻先で土を掘って好物のミミズ探しをしているのです。犬と違って、イノシシは掘る時は前足ではなく鼻で掘ります。鼻の力は人間の腕以上に強力で、鼻先で60キロから70キロの物を持ち上げられるほど力持ちなのです。重い石や木も鼻先でどかせるパワーがあるので、柵や塀を作る時には丈夫な素材を選ばないと、すぐに壊されてしまいます。
イノシシはオスにもメスにも牙があります。オスは10センチから15センチ程度の牙を持っており、頭を一度下げてから勢い良く上げて、アッパーカットのようにして敵と戦うのです。牙は人間の膝や太ももの高さになるので、突進してきたイノシシの牙で大怪我をすることもあるので気をつけましょう。
イノシシは大きな身体で力持ちの割に、臆病者なので草むらや茂みに隠れるのが得意です。家や畑の近所に、イノシシが隠れられる場所を作らないよう藪は刈っておいてください。
イノシシは水泳も得意です。川や池があっても泳いで渡ってしまいますので、柵や塀を作ってイノシシ予防をしておきましょう。
イノシシ対策11選
■1 トタン板でふさいでイノシシ対策
イノシシは絶えずキョロキョロして食べ物を探しています。畑に食べ物があるか、どこに生ゴミがあるかを常に探していますので、エサを見えなくすることでイノシシの侵入を阻止しましょう。
手軽に視覚を遮断できる対策としては、トタン板で壁を作る方法があります。ホームセンターで波状になった板(波板)が販売されていますが、選ぶ時は軟鋼板に亜鉛メッキしたものが丈夫です。
ポリカーボネートや塩ビでできている波板は、見かけは綺麗ですが金属製のトタン板より強度が弱いので選ばないようにしましょう。
■2 ワイヤーメッシュ柵でイノシシを入らせない
ワイヤーメッシュは2通りの使い方があります。「敷く」方法と「立てる」方法です。
「敷く」使い方としては、トタン板や柵の下に敷きます。
例えばトタン板で視覚をシャットアウトしただけではイノシシに荒らされる場合、トタンの外側にワイヤーメッシュ柵を敷きましょう。地面にワイヤーメッシュを敷くことで、トタンの下の土を掘り起こせないようにするのです。
「立てる」使い方としては、柵や壁としてワイヤーメッシュを設置します。
設置する時はイノシシの力に負けないように、支柱は最低でも50センチは地面に埋めてください。それでも支柱が倒される時は、支柱を支える補強の鉄パイプを設置すると良いでしょう。
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ワイヤーメッシュの目のサイズですが、子どものイノシシ(うり坊)が入ってこないようにするには、10センチ以下にしなくてはいけません。
目が10センチ以上のワイヤーメッシュしか販売されていない場合は、2枚重ねて使用することでうり坊が入ってこられないようにしてください。
■3 電気柵でイノシシを入らせない
イノシシは物を鼻先で確認する習性があります。その習性を生かして、電気柵でイノシシが畑に入ってこないようにしましょう。
電気柵を設置するとイノシシの鼻先が柵に当って感電します。人間も感電して事故にあうのではないかと心配になりますが、ビリっとする程度なので健康を害することはありません。その程度の電流でも、居心地が悪いと感じればイノシシが来なくなるのです。
気になる費用ですが、材料費としては100メートルで2万円から3万円程度です。近年流行のソーラータイプの電気柵になると3万円から4万円程度です。
電気柵の注意点としては、電線に草や木が触れないようにメンテナンスを常にしておくことです。電線に物が触れると漏電してしまいますので、肝心のイノシシが来て触れてもショックが弱まってしまいます。
また、電気柵のそばに藪があるとイノシシの隠れ場所になってしまいますので、電気柵を作ったからといって安心せず、畑の周囲の維持管理は引き続き行ってください。
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電気柵のそばに、人間が感電しないようにゴムマットを置きたくなりますが、感電しない部分を作ってしまうとそこからイノシシが侵入するので絶縁用のゴムの敷物は置かないでください。
■4 超音波でイノシシ駆除
人間の耳には聞こえないほどの超音波を出して、害獣や害鳥を駆除する方法があります。超音波を出す機械は1台2000円から3000円程度の値段で、動物撃退器や、超音波ガード、アニマルバリアと呼ばれています。
一つの周波数だけだとイノシシが超音波に慣れてしまって、じきに効果が無くなってしまいます。購入する時には何種類かの周波数が出たり、周波数にあわせてセンサーライトがつくものがより効果的です。
周波数を13.5kHzから17.5kHzにあわせると、家の中のネズミよけになります。15.5kHzから19.5kHzにすると、野良犬やキツネを不快にさせることができます。19.5kHzから23.5kHzは、野良猫やカラス、鳩などの鳥を寄せ付けなくします。
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人間の耳には聞こえない周波数と言われていますが、聴力の優れた人は聞こえる場合があります。
動物撃退器を設置した後に体調を崩したら、一時使用を止めるか遠くの場所に設置するようにしましょう。スピーカーの角度を変えるのも有効です。
■5 夜はセンサーライトでイノシシ対策
泥棒よけや駐車場のいたずら防止に、夜の暗い場所で人が通るとライトが光る「センサーライト」装置があります。暗い中で急に明るくなると人間でもびっくりしますが、イノシシにも効果があります。
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夜は真っ暗になる畑や家の裏などに、センサーライトをつけることで死角をなくし、イノシシが来にくい状態にしましょう。
■6 イノシシ対策に人の髪の毛をまとめて吊るす
安い費用でイノシシ避けができる方法としては、人間の髪の毛をまとめて吊るす方法があります。イノシシは嗅覚がすぐれているので、人間のにおいがすると危険を察知して近寄りません。
作り方としては、散髪をした時の髪の毛を握りこぶし程度の量まで集めて、タマネギを入れるネットに入れるだけです。自宅だけでは髪の毛の量が足りない場合は、美容院や理髪店でもらってきましょう。整髪剤や化粧品のにおいがしたほうがイノシシ避けになります。
髪の毛を吊るす時は、イノシシの鼻の高さに髪の毛が当たるようにすると効果が高くなりますよ。
■7 トウガラシやハーブのにおいで寄せ付けない
イノシシが苦手なにおいは、トウガラシのにおいです。唐辛子をそのままぶら下げておくよりも、刻んだものを地面にまいたほうが効果は高くなります。唐辛子をまいた後に水をかけたり、雨がふったりすると地面に赤く色がつくので気をつけましょう。また、水にトウガラシが触れると効果が減ってしまうので、晴れたら再び撒いてください。
ネギやニンニク、生姜、シソといったにおいのつよい作物は、イノシシに荒らされません。また、ごぼうやミントも嫌いなので、イノシシの通り道に植えたり撒いたりしておくと良いでしょう。
他には、化粧品や石けんのにおいもイノシシは苦手です。線香や木酢液のような火事を連想させるにおいもイノシシよけに効果があります。
■8 天敵の尿でイノシシ対策
害獣対策として、アニマルピーやウルフピーといった商品名で狼の尿が販売されています。実際、ハクビシンやキツネ、タヌキ、サル、シカなどには効果があります。
イノシシは子どもの時はワシやタカ、フクロウ、カラス、キツネや野犬に狙われますが、大きくなると天敵がいなくなります。イノシシによっては、狼のにおいを敵と認知して寄ってこなくなりますが個体差があるようです。
他の害獣よけにアニマルピー、ウルフピーを使用している場合でも、イノシシ避けには何か他の対策が必要になりますね。
■9 イノシシが来る畑や庭木を手入れする
イノシシが山から人里に降りてくる時は、藪に身を隠しながらやってきます。本来は臆病者なので、隠れる場所が無ければ近寄って来ません。
畑から山へのルート中、藪や茂みがあるようでしたら、その部分の草や木を刈ってしまいましょう。地面から1メートル位の高さの藪が、イノシシが隠れるポイントになります。
また、畑から出た野菜くずや、不良作物を放置しておくと、イノシシのエサになってしまいます。作物を収穫した後の畑の手入れも怠らないよう気をつけてください。
■10 登山用の鈴やラジオで音を出す
タケノコ掘りなど、山に入らなくてはいけない時は、登山用の鈴やラジオで音を出してイノシシに遭遇しないようにしましょう。イノシシは危険を察知すると逃げるので、人間がいることを音でアピールするのです。
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音対策は有効ですが、年中ずっとラジオをつけていたり、風鈴をつけていると、学習してしまうので効果が薄れてしまいます。
ラジオの音がしていても、実は人間が畑にはいないことがイノシシにバレてしまうと何にもなりません。あくまでも、自分の身を守るための対策として鈴やラジオを使ってください。
■11 犬を飼ってイノシシを寄せ付けない
秋田犬や紀州犬など、日本犬の多くは鹿やイノシシを狩る猟犬として改良されてきました。イノシシや熊の猟ができるマタギ犬として、日本犬の訓練をするトレーナーや訓練所もあります。
猟犬はイノシシや鹿、熊など獲物を発見すると吠えて飼い主に知らせるのが主な役目です。優秀な猟犬になると吠えて獲物を脅すだけでなく、犬1頭だけでイノシシを倒すことも可能です。そのため、イノシシは犬がいる場所には近寄りたくありません。
犬を飼っている家だけ、作物やゴミ箱を荒らす野生動物の被害が見られなかった例もあります。犬を飼うのもイノシシ対策の一つと言えるでしょう。
イノシシをつかまえたり殺したりすることは禁止
イノシシに何度も畑を荒らされると、ワナで捕獲したり毒エサで駆除したくなりますが、イノシシは鳥獣保護管理法で保護されている動物なので勝手に駆除することはできません。違反すると1年以下の懲役か、100万円以下の罰金ですので、かなり重い刑になります。
ワナをしかけることも、獣で撃つことも狩猟免許が必要です。狩猟期間も決められていて、北海道以外の地域は毎年11月15日から翌年の2月15日まで、北海道は毎年9月15日から翌年2月末日までしか認められていません。
イノシシの被害に困っている地域でも、春にイノシシの子どもが誕生する時期には狩猟が禁止されているので、電気柵やワイヤーメッシュ、トタン板などの対策が必要なのです。
まとめ
イノシシは鼻の力が強く、牙も生えているので柵を作る場合は頑丈な素材で設置することが必要です。20センチの隙間があると入ってきてしまうので、柵や網の間隔を狭くするよう心掛けましょう。子どものイノシシの場合は10センチの隙間があると出入り可能です。
唐辛子や人間の髪の毛、オオカミの尿といったにおいも、イノシシを遠ざける効果があります。畑全体を電気柵で囲む予算が無い場合は、ぜひ活用してください。
イノシシは害獣ではありますが、鳥獣保護法で保護されている動物でもあります。勝手にワナを仕掛けるのは違法行為となりますので注意してください。