チャドクガは、日本を代表する毒蛾の一種です。チャドクガに刺されると蚊なんて比にならないほどの激しいかゆみに襲われ、最悪のケースではアナフィラキシーショックを引き起こす可能性もあります。
この記事ではチャドクガの生態や特徴、発生時期、さらに駆除対策や刺された時の対処法について説明します。
チャドクガとは?生態と特徴
まずはじめに、チャドクガを効率的に駆除するために、チャドクガの生態や特徴について知っておきましょう。チャドクガは、卵、毛虫(幼虫)、蛹(さなぎ)、成虫の、どの段階においても毒性がありますので、十分な注意が必要です。
■1.チャドクガの毛虫の特徴
チャドクガの毛虫は、体長約2〜3センチ程度です。黄色と黒を混ぜたような色をしています。成長するにつれて黒色の部分が増えていきます。チャドクガの毛虫は、木の枝や葉っぱの裏に群れをなして生活しています。
■2.チャドクガの成虫の特徴
チャドクガの成虫は、その名の通り、茶色っぽい色をした蛾です。体長はメスで2センチ程度、オスはそれより少し小さめです。メスのチャドクガの成虫は翅は黄色っぽく小さな黒い点が2つあるのが特徴、オスは黒褐色の翅をしています。
■3.年に2回発生する!
チャドクガは年に2回も産卵し、孵化します。つまり、チャドクガの毛虫も成虫も、年に2回も発生するわけです。毒を持っている上に年に2回も発生するなんて、とても厄介な毒蛾と言えますね。
■4.卵、幼虫、蛹、成虫のどの段階でも毒性がある!
年に2回発生するだけでも厄介なのに、さらにチャドクガは卵、幼虫、蛹、成虫のどの段階においても毒性があります。したがって、卵だから安心、毛虫ではないから安心というわけではないことをよく理解しておきましょう。
チャドクガの発生時期
つづいて、チャドクガの発生時期についてみていきましょう。前述の通り、チャドクガは年に2回産卵して孵化しますが、卵から成虫に至るまで、一生に渡って毒針毛を持っています。その中でも特に毛虫の頃に毒針毛が大量に生産されますので、最も注意が必要な時期と言うことができます。
■1.チャドクガの卵が発生する時期
チャドクガの卵は6月〜8月頃と、9月〜11月頃に葉っぱに産み付けられます。6月~8月頃に産み付けられた卵は1~3カ月もすれば孵化しますが、9月〜11月に産み付けられた卵はそのまま越冬し、翌年の初夏頃に孵化します。チャドクガがまだ卵のうちに駆除しておけば、チャドクガの大量発生を防ぐことが可能です。ただし、卵にも毒針毛が付着していますので、駆除作業の際は触れないように注意しましょう。
■2.チャドクガの毛虫が発生する時期
チャドクガの毛虫は、5月〜6月頃と、8月〜9月頃、葉っぱの裏側に群れをなして発生します。成長するにつれて毒針毛を大量に生産しますので、チャドクガの毛虫を見つけたら速やかに駆除しておくことが大切です。
■3.チャドクガの成虫が発生する時期
チャドクガの成虫は、6月〜8月頃と、9月〜11月に発生します。チャドクガは毛虫の頃は集団で生活していますが、成虫になると個別行動を始めます。また、チャドクガの成虫も毒針毛を持っていますので注意が必要。接触するとかぶれてしまいます。
チャドクガの駆除対策5つ
それでは早速、チャドクガを駆除するための5つの対策についてみていきましょう。チャドクガの駆除対策には、チャドクガの発生自体を予防しておく方法と、既に発生したチャドクガを退治する方法があります。状況に応じて適切なチャドクガの駆除方法をさがしてみましょう。
■1.チャドクガ用スプレーで駆除
チャドクガの駆除をするためには、チャドクガのその特性を考慮してつくられた「チャドクガ用スプレー」を利用するのが便利でおすすめです。
1-1.チャドクガ用スプレーの特徴
チャドクガ用スプレーは、毒針毛が飛び散らないように「固着剤」が含まれているのが一番の特徴です。チャドクガの毛虫は駆除作業の際、暴れて毒針毛が周囲に飛び散る恐れがあります。そのため、固着剤でチャドクガの毛虫をまず固めてしまうことで、チャドクガの毒針毛を撒き散らしてしまうのを防ぎながら安全に駆除することができます。
1-2.使用方法
チャドクガ用スプレーを使うときは、まずチャドクガがいる葉っぱや木の枝に向かってスプレーを噴射し、毒針毛を固着させます。チャドクガの毛虫が葉っぱや木の枝に固着して毒針毛が飛び散る恐れがなくなったところで、葉っぱ、もしくは木の枝ごと切り落とし、チャドクガを駆除します。
■2.枝ごと伐採してチャドクガを駆除
チャドクガの毛虫の「群れになる習性」を利用して、枝ごと伐採してチャドクガを駆除する方法があります。
2-1.チャドクガの毛虫(幼虫)は群れになっている!
チャドクガの毛虫は群れになって木の枝や葉っぱの裏側などで生活しており、さらに同じ枝にチャドクガの毛虫の群れが複数あるケースも多く見受けられます。チャドクガの毛虫の群れを発見したら、周辺にも群れがないかよく確認しましょう。
2-2.枝を切る際の注意
チャドクガの毛虫がいる枝を伐採する際は、可能であれば枝元から切るのが良いでしょう。振動を与えてしまうと、毒針毛が飛び散ってしまう可能性があるため危険です。なるべく振動を与えないように静かに伐採することを心がけましょう。
切り取った枝はビニール袋にそっと入れて、厳重に処分をする必要があります。切り取った枝がビニール袋に穴をあけてしまうこともありますので、新聞紙などに包んだりしておくと安心でしょう。ビニール袋は二重にしておくと、なお良いですね。
■3.葉の裏に殺虫剤をかけてチャドクガの卵を駆除
チャドクガの駆除と言うと、一般的には大量発生したあとに行われることが多いようですが、まだ卵のうちに駆除してしまう方法もあります。最も毒性の強いチャドクガの毛虫の発生を防ぐことができますので、大変効率の高い駆除方法と言うことができます。
3-1.チャドクガの卵の駆除は冬のうちに!
チャドクガは年に2回葉っぱの裏に卵を産み付け、そのうち1回は卵のままで越冬します。つまり、チャドクガの卵を駆除するなら、冬がチャンスです。
3-2.チャドクガの卵の特徴
チャドクガの卵を見つけるためには、まずツバキやサザンカの葉っぱの裏側をよく観察してみましょう。直径1cm程度の薄い黄色をした綿のようなものがくっついていたら、それがチャドクガの卵です。
3-3.卵にも毒がある!
「普段は毒に注意が必要なチャドクガでも、卵のうちなら安全」と思っている方も多いかもしれませんが、チャドクガの卵を甘くみてはいけません。チャドクガの卵自体に毒針毛が生えているわけではありませんが、卵を産むときに成虫の毒針毛が卵に付着してしまうのです。うっかり触れてしまうと痛い目に合いますので気をつけましょう。
3-4.チャドクガの卵の駆除方法
チャドクガの卵を駆除する際は、長袖長ズボン、手袋、マスクなどを身につけ、肌の露出を極力控えます。見落としがちな首回りにもしっかりと対策を。タオルなどを巻いておくと安心です。完全装備で挑みましょう。
準備が整ったら、卵がついた葉っぱや枝を切り落とし、袋にそっと入れます。毒針毛が風で飛散してしまわないよう、なるべく静かに、そしてすばやい作業を心がけましょう。
3-5.後処理も忘れずに
駆除作業後は、身につけていた衣類などの後処理も忘れずに行いましょう。チャドクガの卵の駆除作業をすると、身につけていた衣類などに毒針毛が付着している恐れがあります。後処理のことを考慮すると、そのまま捨てても良いようなものを身につけておくと後が楽でしょう。
■4.樹木に農薬を吸わせてチャドクガを除去
チャドクガの予防には、農薬が効果的とされています。農薬には、木の根元に薬剤を撒いて吸わせるタイプと、木全体に直接薬剤を散布するタイプがあり、ここでは前者のタイプの農薬について紹介していきます。
木の根元に撒いて薬剤を吸わせるタイプの農薬の中で有名なのが、「オルトラン」という農薬。オルトランの使用方法や使用上の注意点などについて説明していきます。
4-1.オルトランとは
オルトランとは、「アセフェート」という成分を含んだ害虫駆除を目的とした農薬です。オルトランを木の根元に撒いておくことで、殺虫成分が土から木に吸収されて隅々まで行き渡り、葉っぱの裏側にいるチャドクガにも効果を発揮します。
4-2.オルトランの使用方法
オルトランには液剤や粒剤、スプレータイプがありますが、チャドクガの駆除におすすめなのは粒剤です。粒剤であれば希釈などの手間を省くことができ、散布方法も粒状の薬剤を土に撒くだけと簡単ですので、周りに飛び散ることもなく手軽に使用できます。
4-3.使用上の注意点
次に、オルトランを使用する際の注意点についてまとめていきます。
① 使用は3月〜4月の涼しい時期に
チャドクガを予防するためにオルトランを使用する際は、3月〜4月の涼しい時期に行うのが良いでしょう。オルトランに含まれる「アセフェート」という殺虫成分は、高温になると有毒ガスを発生する性質があるためです。暑い時期の散布は危険ですのでやめましょう。
② 使用量は守りましょう
オルトランを使用する上で最も大切なことは、使用量を守ることです。オルトランは殺虫成分を含みますので、安全な使用量が決まっています。
粒剤のオルトランでは、1㎡あたり3〜6グラムの使用が目安です。見た感じ少な過ぎるように感じるかもしれませんが、ここで量を増やしてしまうと大切な植物を枯らしてしまうこともありますので、必ず使用量は守るようにしてくださいね。
■5.高い木は農薬で毛虫を駆除
前述のとおり、農薬には木の根元に薬剤を撒いて吸わせるタイプと、木全体に直接薬剤を散布するタイプがありますが、今度は後者のタイプの農薬についてみていきましょう。
木全体に直接薬剤を散布するタイプの農薬で有名なのが、「トレボン乳剤」です。トレボン乳剤の使用方法や使用上の注意点などについて紹介していきます。
5-1.トレボン乳剤とは
トレボン乳剤は「エトフェンプロックス」という成分を含んだ害虫駆除を目的とした農薬です。速効性と持続性に優れており、木全体に直接散布することでチャドクガを駆除します。
5-2.トレボン乳剤の使用方法
説明書の指示に従って水で希釈したトレボン乳剤を噴霧器に入れ、木に直接、葉っぱの裏側まで見落とさないよう丁寧に散布していきます。しばらくすると、毛虫が糸を引いて落ちてきます。そのまま半日ほど放置しておき、地面に落ちたチャドクガの毛虫を割り箸などを使って拾いましょう。
5-3.使用上の注意点
次に、トレボン乳剤を使用する際の注意点についてまとめていきます。
① 服装に注意
トレボン乳剤を使用後、地面に落ちたチャドクガの毒針毛が肌に触れないよう、長袖長ズボン、手袋、マスクなどを身につけましょう。見落としがちな首回りにも注意してくださいね。
② 薬剤がかからないと意味がない!
トレボン乳剤はただ闇雲に薬剤を散布してもチャドクガを駆除できません。薬剤がチャドクガにしっかりとかからないと意味がないのです。葉っぱの裏側や隅々までしっかりと散布できているか確認しながら行いましょう。
③ 毛虫の処理は慎重に
トレボン乳剤を使用後、地面落ちたチャドクガの毛虫を処理する際にも十分な注意が必要です。面倒だからと一気にホウキなどで掃いたりしてしまうと、毒針毛が飛び散ってしまいますので危険です。必ず割り箸などを使ってそっと処理するようにしましょう。
チャドクガに刺されたときの対処方法5つ
それでは、もし不運にもチャドクガに刺されてしまったら、わたしたちができる対処法にはどのようなものがあるのでしょうか。チャドクガに刺されたときの対処方法5つを紹介していきます。
■1.患部を触らない
チャドクガに刺されたと気がついたら患部には絶対に触れず、速やかに毒針毛の除去をすることが大切です。
1-1.患部はとてもかゆい
チャドクガに刺されてしまったら、すぐにはかゆみを感じることはありませんが、2〜4時間ほど経過すると、夜も眠れないほどの激しいかゆみが襲ってきます。そのかゆみは、大の大人でも半泣きになってしまうほどのつらいかゆみです。
1-2.患部には毒針毛が付着している!
チャドクガに刺されると、上記に説明したとおり、激しいかゆみに襲われます。しかし、患部は触らないようにしなくてはいけません。なぜなら、チャドクガに刺された患部には目に見えない、しかも抜けにくい構造の毒針毛がたくさん付着しているためです。
患部を触ってしまうことで手に毒針毛が付着し、その手で体のほかの場所を触ることでかゆみが悪化、拡大してしまうという二次被害をもたらす恐れがあります。むやみに患部を触ることは絶対にやめましょう。
■2.服を脱ぐ
チャドクガに刺されたことに気がついたら、速やかに衣類を脱ぎましょう。衣類には毒針毛が付着している可能性があります。
2-1.脱いだ衣類は洗濯機に入れないで!
衣類を脱いだら「早く洗わなければ!」と急いで洗濯機に入れたくなる気持ちはわかりますが、洗濯機に入れてはいけません。なぜなら、洗濯機で洗うとほかの衣類に毒針毛が付着し、被害が拡大してしまう恐れがあるためです。
2-2.お湯を使って洗浄しましょう
脱いだ衣類は洗濯機には入れず、ほかの衣類とは分けてお湯を使って洗浄しましょう。チャドクガの毒針毛はタンパク質由来で熱に弱く、50度以上の熱で無毒化されることがわかっています。
脱いだ衣類は、大きな鍋に入れて煮洗いをしたり、スチームアイロンをかけたりすることで毒を消すことができます。乾燥機にかけてあげるのもおすすめです。このときも衣類にあまり触れないように心がけ、二次被害を防ぎましょう。
■3.患部にガムテープを貼ってはがす
チャドクガの毒針毛はとても細かく、肉眼ではほとんど確認できません。そのため、ガムテープなどの粘着テープに毒針毛をくっつけて除去する方法が効果的です。
3-1.患部を中心に行う
患部を中心にガムテープを貼ってはがす作業を繰り返すことで、目に見えないチャドクガの毒針毛を効率よく除去することができます。貼ってはがす作業は、ガムテープを取り替えながら何度か行い、念入りに。毒針毛を飛び散らさないよう、貼ってはがす作業は乱暴に行わず、そっと行ってくださいね。
3-2.流水で患部を洗い流す
「これでもう十分だろう」というくらいに念入りにガムテープを貼ってはがす作業を行ったら、次に患部を強めの流水で洗い流しておきます。この作業も時間をかけて丁寧に行いましょう。
■4.少し熱めのお湯で患部を洗う
チャドクガに刺された箇所は、少し熱めのお湯で患部を洗ってあげるとかゆみを消すことができます。
4-1.45度〜50度程度の少し熱めのお湯で!
先にも述べましたが、チャドクガの毒針毛は50度以上のお湯で無毒化します。つまり、本来なら50度のお湯を患部にかけたいところですが、50度のお湯は熱すぎて火傷をしてしまう恐れがあります。
そのため、45度〜50度程度の少し熱めのお湯で患部を洗うようにすると効果的でしょう。50度のお湯を2〜3分間患部に当ててしまうと低温やけどをしてしまいますので、やり過ぎには注意しましょう。
4-2.42度以下の温かいお湯は逆効果!
お子さんなどで熱いお湯が苦手なこともあるでしょう。だからといって、42度以下の温かいお湯を使って患部を洗うことは厳禁です。なぜなら、42度以下のお湯では、毒がなくならないどころか、血流が良くなって余計にかゆみが強くなってしまうためです。チャドクガに刺された患部は最低でも45度以上のお湯で洗い流すようにしてくださいね。
4-3.金属製のマグカップやスプーンを活用した方法も
50度のお湯を入れた金属製のマグカップを患部に当てる方法でも、かゆみを消す効果はあります。お湯をすくった金属製のスプーンを患部に当ててもOKです。患部をとにかく50度で温めることが大切なのですね。
■5.服についた毒針毛を粘着テープで取る
チャドクガに刺されたとき、患部に付着した毒針毛ばかりに気を取られてしまいがちですが、衣服に付着した毒針毛のことを忘れてはいけません。チャドクガに刺されたということは、そのとき着用していた衣服に毒針毛が付着している可能性は大いにあるのです。
衣服の毒針毛を50度以上の熱を使って無毒化させる方法を先に紹介しましたが、患部と同じようにガムテープなどの粘着テープを貼ってはがしてを繰り返すことで除去することも可能です。刺された直後の応急的な対策としては、ガムテープを使った方法のほうが手軽に行うことができますのでおすすめですよ。
まとめ
チャドクガは、卵、毛虫(幼虫)、蛹、成虫のどの形態でも毒性があり、1年を通して注意が必要な毒蛾です。どの形態であっても、油断は禁物なのです。
チャドクガを駆除するためには、チャドクガの生態や特徴をしっかりと理解し、毒針毛に気をつけながら正しい方法で駆除対策を行うことがとても大切です。もしチャドクガに刺されてしまったら、まずは被害を最小限に留めることができるよう、慌てずに対処しましょう。