『蚊・ハエ・アリ、ゴキブリ・ムカデ・ゲジゲジ』などの害虫や、益虫だけど見た目のインパクトが強い虫は苦手という方は非常に多いです。まして家の中・庭・ベランダ・玄関等にいたらどうにも気が気ではありません。
そんな虫嫌いの方におすすめなのが『除虫菊』です。除虫菊は『天然殺虫成分が含まれている植物』で、虫除け効果・殺虫効果があります。また、除虫菊は安全性が高く人間はもちろん、犬・猫がいる家でも安心です。
除虫菊を庭・ベランダ等に植えて虫除け対策をしませんか? そして、除虫菊で全然な殺虫ライフ(?)を目指してみましょう!
カブトムシ・クワガタ・鈴虫などの『飼っている昆虫』を退治してしまわないように注意しましょう。
蚊取り線香の原材料「除虫菊」とはどんな植物?
一般的には『除虫菊(じょちゅうぎく)』と通称で呼ばれる事がほとんどですが、和名は『シロバナムシヨケギク』と言います。英名はPyrethrumです。
除虫菊の見た目はマーガレットとそっくりですが、可愛らしい見た目とは裏腹に、天然殺虫成分が含まれているのが特徴です。天然殺虫成分を含んでいる除虫菊ですが、手を加える事で殺虫効果を発揮します。
■除虫菊は蚊取り蚊取り線香・殺虫剤に使われる
除虫菊の歴史は古く、セルビア共和国で発見されました。除虫菊が発見されてからほどなくして殺虫効果に優れている花として世界的に認知され、現在でも除虫菊は世界の様々なところで活躍しています。
戦前の日本でも除虫菊の蚊取り線香を作るために、除虫菊の栽培を栽培していました。特に北海道では除虫菊の栽培が盛んでしたが、昭和20年の終わり頃になると、合成殺虫剤の誕生により除虫菊の栽培は下火になっていきます。
現在の日本では除虫菊の栽培はあまりされていませんが、ケニアでは殺虫剤に除虫菊の成分を配合するため、今でも広く栽培されています。
除虫菊(シロバナムシヨケギク)の成分は?
除虫菊は見た目の可愛らしさから単純に人気があり、庭に植えてガーデニングを楽しんでいる方もいます。そんな除虫菊には様々な成分が含まれており、成分によっては虫だけでなく、魚も殺せる高い殺虫成分が含まれています。
虫菊の成分をチェックしましょう。
■① ピレトリン
除虫菊の主な成分は『ピレトリン』です。ピレトリンは昆虫の神経に強いダメージを与え、神経麻痺を起こして殺します。
除虫菊は『昆虫に対して』殺虫効果を発揮しますが、哺乳類・鳥類に対して神経に影響及ぼす可能性は低く、安全性が高いです。また万が一、人間にピレトリンが体内に入っても即分解され、すみやかに排出されます。が、『ピレトリンが皮膚に触れるとアレルギー反応を起こす方』もいます。
■② シネリン
除虫菊に含まれている『シネリン』の効果もピレトリンとほとんど同じです。殺虫効果・分解されやすい等の特徴があります。また、シネリンも人によっては、皮膚に触れるとアレルギー反応を起こすことがあるため、アレルギー体質・肌が弱い方は注意しましょう。
ちなみにシネリン自体は発見が遅く、日本で既に除虫菊が衰退した昭和20年に発見されました。
■③ ジャスモリン
除虫菊の成分にはピレスロイドが含まれていますが、同じような作用があるのがジャスモリンです。ジャスモリンも殺虫効果があり、ジャスモリンⅠ・ジャスモリンⅡで形成されています。
■④ アレスリン
除虫菊には化学物質の『アレスリン』が含まれており、ピレトリン・シネリンと同じく、昆虫の神経にダメージを与えるのが特徴です。
また、アレスリンは除虫菊の主な殺虫成分である、ピレトリン・シネリン・ジャスモリンよりも強い殺虫効果があり、中でも”蜂に対しては高い殺虫能力を発揮”します。さらに、昆虫以外にも、魚の神経にもダメージを与え、麻痺させながら殺す高い殺虫能力を持っています。
アレスリンは昆虫に対して強い殺虫効果がありますが、哺乳類・鳥類に影響を与える可能性は低く安全性が高いため、蚊取り線香・殺虫スプレー等に配合されています。
■⑤ ピレスロロン
除虫菊に含まれるピレスロロンは、菊酸・アルコールのピレスロロン、エステルのことです。菊酸については次でご紹介します。
■⑥ 菊酸
菊酸は別名、菊カルボン酸とも呼ばれていて、除虫菊の葉・茎にはあまり含まれていません。菊酸は除虫菊の種子・花に多く含まれています。菊酸も昆虫に対して殺虫効果があり、特に花の部分には約90%もの菊酸が含まれているのが特徴です。
花に含まれている菊酸の成分量は、除虫菊によってバラつきがあります。ですが、つぼみ・満開になる前まです。除虫菊が満開になると、菊酸の成分量は増していきます。
除虫菊の効果
除虫菊は”火で燃やし煙を出す”ことで殺虫能力を発揮します。
除虫菊を使った殺虫アイテムと言えば蚊取り線香です。蚊取り線香は除虫菊を加工し作られており、火をつけなくとも独特の香りを持っていますが、ただ置いておくだけでは殺虫効果はありません。蚊取り線香に火をつけ、煙を出すことで、初めて殺虫効果のあるアイテムとして活躍します。
昆虫の皮膚・口から殺虫成分が入り神経麻痺を起こさせる過程が重要なため、煙になって周辺に浸透するのは非常に有用です。また除虫菊は即効性があり、逃げ遅れた虫は死に、近くにいた虫も嫌がり近寄ってきません。
注意点としては、鈴虫・かぶとむし・クワガタといった『家で飼っている虫』にも効力がありますのでお気をつけください。
除虫菊の種や苗からの育て方5ステップ
除虫菊は『植えているだけも虫除け効果』があります。(殺虫能力は燃やした時のみ発揮されます)除虫菊を植えて虫除けしたい方は、種・苗を植えて花を咲かせてみましょう。庭・玄関周り・ベランダ等に除虫菊を植えるだけで見た目も華やかになります。
また多年草で、株分けして楽しむこともできるガーデニング初心者にもオススメの植物です。
■① 除虫菊の種をまく時期
除虫菊の種をまく時期は、大きくわけると1年の中で2回です。春なら3月~5月・秋なら9月~10月が適しています。除虫菊は18度程度で芽を出すため、気温が下がり過ぎる冬は種まきに向いていません。
除虫菊の種はいきなり土に植えるのではなく、催芽処理(発芽しやすい状態にする)をします。
【催芽処理のやり方】
○布・ペーパータオル等に除虫菊の種を包みましょう。
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○除虫菊の種の乾燥を防ぐために、ビニール袋に入れます。
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○5度程度の場所(冷蔵庫等)で、ビニール袋に入れた除虫菊の種を1週間寝かせてから、種まきをしましょう。
■庭・プランター等に種をまく
種まきは、『除虫菊の種が重ならないようにまく』のがポイントです。また、除虫菊は日当たりが良い場所を好みます。
庭に除虫菊の種を植える時は、苦土石灰を用意しましょう。苦土石灰は酸性の土を中和し、土を良い状態にするため、除虫菊がしっかり育ちます。そして、苦土石灰・堆肥を種まきをする1週間前に混ぜておきましょう。堆肥は『1㎡=1.2kg』です。
プランターに除虫菊の種をまいてもいいですが、上手に育てるなら、播種箱(はしゅばこ)を使ってもいいでしょう。播種箱は種を育てるためもので、通気性・通水性がいいため、除虫菊の種まきにも向いています。
■種まき後は土を5mm程度かぶせる
庭・プランター等に除虫菊の種をまいたら、土を5mm程度の厚さになるようにかぶせて、水をたっぷり与えましょう。そして、除虫菊の芽が出てくるまでは土が乾燥することないように、霧吹き・じょうろ等で水を与え、土が湿っている状態をキープします。
ただし、水やりをする時は、除虫菊の芽が出るまでは種が流れ出ないように注意しましょう。芽が出る前の状態は、土に根を張っていません。勢い良く水やりをすると、土と一緒に種が流れることがあります。水が勢い良く出る時は、ゆっくり水やりをしましょう。
■播種箱の場合はプランター・植木鉢等に植え替える
播種箱(はしゅばこ)で除虫菊の種をまいた場合は、発芽して本葉(3枚位)が出てきたら、プランター・植木鉢等に植え替えましょう。土は培養土が良く、肥料(完熟肥料・腐葉土・化学肥料等)も一緒に混ぜます。そして、日当たり・水はけ・風通りが良い場所に除虫菊を置いて育てましょう。
■② 除虫菊の苗を植える時期
除虫菊の苗を植える時期も、種を植える時期と、基本的には同じ頃と考えて良いでしょう。つまり、春なら3月~5月・秋なら9月~10月です。
除虫菊の苗はホームセンター等でも購入できます。プランターに苗を植える場合は、プランターのサイズに合わせて、植える苗の数を調整しましょう。例えば『65㎝のプランターの場合は4個が最適』です。
除虫菊は大きく成長すると1m程度になります。背丈が高くなると強風で倒れることがあるため、新しい芽や脇芽を切って、上へ伸びないようにしましょう。
■③ 除虫菊の花が咲く時期
除虫菊の『花が咲く時期』は、種をまいた時期によって変わります。『春の3月~5月に種まきをした場合』は、除虫菊の花が咲くのは『翌年の初夏』です。除虫菊は初夏に向けて花を咲かせるために、冬に準備をします。
除虫菊の種まきは秋の9月~10月も可能ですが、花が咲くのは翌々年の初夏とかなり先です。秋の種まきは春と違い、すぐに冬がやってきます。秋に種まきをすると、程よい大きさまで生長していません。除虫菊の花は生長しないと花が咲かないため、翌々年の初夏になります。
春・秋に種まきをしても除虫菊の『花が咲くまでに育つには、いずれにしても1年以上』はかかります。気長に待って除虫菊の花を咲かせましょう。
■④ 除虫菊の水やりと肥料
除虫菊の芽が出るまでは『土が乾燥しないように注意し定期的に、水やり』をします。除虫菊の芽が出た後は少し楽になり『土が乾燥したら、水やり』をします。除虫菊は過多の水分・多湿には弱い植物です。必要以上の水やりはNGです。
また除虫菊は肥料を必要とする植物です。肥料(液体肥料等)は除虫菊の生長を見ながら与えます。
■⑤ 除虫菊の冬場の育て方
除虫菊は寒さに強い植物のため『寒さ対策をする必要はありません』が、肥料対策は必要です。除虫菊は冬の間に花の準備をする植物です。余程素晴らしい土壌でない限り、生長を促しキレイな花を咲かせるためには完熟肥料で栄養を与える必要があります。
完熟肥料を土の中に混ぜる・除虫菊の周りに穴を掘って完熟堆肥を入れましょう。
除虫菊の殺虫剤3タイプ。蚊取り線香以外にもある!
除虫菊の殺虫成分が含まれたアイテムと言えば『蚊取り線香』が有名ですが、他にも除虫菊の殺虫成分を使ったアイテムがあります。中には、ムカデ・ゲジゲジ・ゴキブリまで退治できる凄い殺虫アイテムもあるため、虫嫌いの方は重宝するでしょう。使う場所に合わせて、除虫菊成分が含まれたアイテムを使っても効果的です。
では、最後に除虫菊の殺虫剤を3種類ご紹介します。
■① 除虫菊乳剤
除虫菊乳剤は、ハエ・蚊に良く効く殺虫剤です。どちらも成虫の殺虫はもちろん、幼虫の駆除もできます。使い方は簡単で水で30倍に薄めてから、ハエ・蚊がいる場所にまくだけです。
■② 除虫菊パウダー
除虫菊パウダーは除虫菊を粉末状にしたもので、様々な虫を殺せます。一部をご紹介すると、ダンゴムシ・クモ・ムカデ・ゴキブリ、ナメクジ等です。また、虫以外に、カエル・ヤモリ・魚まで殺せます。
殺虫効果が強い除虫菊パウダーですが、天然殺虫成分でできているため、人間・ペットにも安心です。万能な殺虫剤で安心して使い方は、除虫菊パウダーをおすすめします。
■③ 除虫菊スプレー・エアゾール
除虫菊スプレー・エアゾールは、ハエ・蚊の殺虫に効果的です。除虫菊スプレーの使い方は様々で、クローゼットの中にまけば虫対策もできます。また除虫菊スプレーに関しては、少しニオイが気になる・刺激がある方もいるようです。
まとめ
蚊取り線香は知っていていも除虫菊のことを初めて知った方もいらっしゃると思います。
除虫菊は可愛いだけでではありません。庭・プランター等に除虫菊を植えれば、虫除け効果があり、燃やす事で殺虫効果が得られます。さらにガーデニング初心者にもオススメ(花をつけるのに時間はかかりますが)です。素敵なガーデニングライフを楽しみながら、虫除けもできる素晴らしい植物です。
また除虫菊の天然殺虫成分を利用した殺虫剤は、人や犬猫にも対しても安心して使うことができます。上手に除虫菊を活用して、虫対策をしましょう。
ただしカブトムシ・クワガタ・鈴虫などの『飼っている昆虫』を退治してしまわないように注意です。