イチジクは、育て方もシンプルであり、メンテナンスも手間がかかりません。また、育てる方法や植え方によって季節の変わり目に実がなる、家庭菜園でも人気の樹木です。
しかし、手間をかけなかったとしても成長することから、伸びすぎてしまうケースも多いでしょう。そのため、適切なタイミングで剪定をすることが重要です。そこで、イチジクの剪定の仕方とコツについて詳しく解説します。
イチジクの特徴
イチジクは、消化を促す成分やビタミン類を多く含む、健康にも良い果実として人気があります。
さらに、食物繊維やカルシウムも豊富であり、生のまま食べたりジャムやドライフルーツとしてに加工して楽しんだりする方法で楽しめることが魅力です。手間をかけずに多くの実を収穫するためには、適切なタイミングで剪定をすることが重要だといえます。
「イチジクは剪定しない方が良い」という意見を持つ人もいますが、イチジクは成長が早いことから、剪定せずに育てていると枝が伸びすぎてしまうほか、樹木の大きさも大規模になるので果実を収穫するのに手間がかかるといったデメリットがあります。
どのようにイチジクの木を作り上げたいのかを明確にして、剪定作業を行うことが重要です。
イチジクの剪定時期
イチジクの剪定は、冬の時期に行うのが最も有効であるといわれています。イチジクは春から成長を始め、枝を伸ばして夏に実をつけて秋に熟すことが一般的です。そのため、イチジクは春から秋の間に成長し、栄養を蓄積しています。
そのようなタイミングで剪定をすると、樹木も実も健康的に成長しません。しかし、冬であれば秋に熟した実が落ちて成長のスピードが低下しているタイミングであるため、樹木の成長を妨げず負担も少ないといえます。
イチジク剪定に必要な道具
イチジクの剪定に必要な道具を全て揃えてから、剪定作業にかかりましょう。剪定バサミ、植木バサミ、ノコギリは必須です。
剪定バサミは太い枝を切るための片方だけに刃がついているタイプと、細かな部分の剪定をする際に必要な両側に刃がついているタイプの2種類を用意します。植木バサミは細かな枝を切断する際に使用し、ノコギリは幹を切断する際に必要です。
また、イチジクの育ち方によってはチェーンソーといった大きな道具を使用する必要があるでしょう。さらに、高い場所の剪定作業を行う場所ために脚立や踏み台も準備します。服装は、剪定をする際に枝で怪我をしないよう、長袖と長ズボンで肌を保護することが大切です。
イチジクの種類
実が熟すタイミングによって種類に違いがあり、基本的に6~7月に収穫する「夏果専用種」、8月移行に収穫する「秋果専用種」と、「夏秋兼用種」の3つに分類されます。
夏果専用種は梅雨の時期と収穫時期が重なることから、家庭菜園で楽しむ場合には秋果専用種もしくは夏秋兼用種が適しており、鉢植え栽培もしやすいでしょう。
イチジク剪定の6つの方法
イチジクの剪定の仕方は、植え方やイチジクの種類によって異なります。
植え方については庭植えもしくは鉢植えのどちらかであり、基本的に鉢植えは樹木そのものの自然の形である開心自然形に剪定し、庭植えであれば自分の好みで剪定をしますが、メンテナンスしやすい杯状形や一文字仕立てにすることが一般的です。
■鉢植えの剪定の仕方
鉢植えは、一般的な開心自然形の仕立て方で剪定します。
ステップ①1年目の剪定
1年目の夏に、3枝の程度を残して樹形を作り、冬にそれぞれの枝を30cm程度の場所で剪定しましょう。
ステップ②2年目の剪定
2年目以降は、冬に伸びた長い枝だけを剪定します。
■庭植えの剪定の仕方:杯状仕立て編
庭植えの剪定方法として、杯状形にする方法から紹介します。
ステップ①1年目~3年目の剪定
1年目に50cm程度の高さで苗木を切断し、枝の先を整えます。2年目は冬に枝が伸びるため外芽が出た場所から30cm程度の高さで切断します。3年目は主枝だから伸びている枝を32cm程度の場所で切断します。
ステップ②樹形が完成してからの手入れ
4年目以降は樹形が完成しているため、4年目以降に伸びた枝は2節程度の場所で切断しましょう。切断する際には芽と芽の間で決断することが重要です。
切断する枝を絞り、イチジクに栄養を送ることを重要視しましょう。主枝が伸びると枝の数も増えるため、栄養が集中せず分散してしまい主枝が高くならないよう剪定することが大切です。
■庭植えの剪定の仕方:一文字仕立て編
一本仕立ては、枝が横に平行になるように樹形を仕立てる方法です。2本の主枝を横に伸ばし、最終的には枝を一定間隔で真っ直ぐ一本仕立てにすることで樹形が横に広がるので、高い場所で作業をする必要が無く、剪定作業や収穫作業をスムーズに行えることがメリットです。
ステップ①1年目の剪定
1年目の春の終わりから5月頃を目処に、元気のある枝を2本残し、30 cm程度の高さに剪定します。
ステップ②吸引と間引き
2年目の冬に、地面と平行になるよう紐や木材を使って吸引して、およそ20cm間隔で枝を間引きします。
ステップ③適度に手入れを続ける
3年目以降は枝が伸びている新梢のなかから、沢山の芽が出ている枝を残して剪定をしましょう。
■夏果の剪定の仕方
夏に収穫する場合には、秋~翌冬の間にできた花芽が熟したものを収穫します。そのため、切る花芽を誤るとイチジクを収穫できないため注意しましょう。そのため、1つの枝に5個程度の花芽が付くようにして先を切断します。脇枝ができるので、翌年に花芽が増えるでしょう。
■夏秋果の剪定の仕方
夏秋果は、夏果は2年前の枝、秋果は新しい枝に花芽がつくため、2種類の剪定を行います。しかし、基本的には秋の方が収穫しやすいため、秋果を収穫することを重視する方法が有効です。
秋果の収穫をするために、一部の新梢を剪定せずに他の枝を2~3芽程度残しましょう。枝をすべて剪定すると夏果を切ることになる点に注意が必要です。
■秋果の剪定の仕方
秋果は、春に成長した新梢に芽がつくことが特徴です。そのため、シンプルな剪定方法で手入れを行えます。まずは、前年度の枝を剪定です。伸びて長くなった前の年の枝を3本程度残して剪定します。
次に、春には新芽が成長するので、元気なものを選び、垂直になるように吸引しましょう。毎年剪定をすることで、毎年収穫することが可能です。
これがどの木にも共通して言えることです。成長促進と病害虫防除において大切なことです。
イチジクの剪定のコツと注意点10個
イチジクを剪定は植え方や種類によって若干方法が異なりますが、全ての剪定に共通する注意点やコツについて紹介します。
■①イチジクを剪定した後の切り口について
イチジクの剪定は冬に行う方法が有効な理由の1つに、切り口から樹液が出ず樹木への負担がかかりにくいことが挙げられます。
しかし、冬に剪定を行ったとしても、剪定の後に切り口に雨水や汚れが付着することで、切り口から腐ったり害虫が侵入したりすることも少なくありません。
そのため、剪定をした後の切り口は正しい方法で処理することが重要です。切り口の処理は、袋をかぶせる、もしくは癒合材を使用しましょう。
大きなイチジクの木は切り口を保護するのに時間がかかったり、剪定の際に切り口が大きくなると癒合する際に時間がかかったりすることで、雑菌や害虫に侵入される可能性が高いため注意が必要です。
現在切口に塗る癒合材もホームセンターなどで簡単に手に入ります。木も生き物です。人と同じようにしかっりケアしてあげましょう。
直径5㎝以上の枝を切ったら、癒合材を塗ったほうがよいでしょう。
■②剪定のタイミング
イチジクを剪定する際に最も注意しなければならない点は、剪定のタイミングです。植え付けてから育てていくなかで非常に重要なポイントであり、タイミングを誤るとイチジクの実がならなかったり枯れてしまったりする可能性があるため、剪定のタイミングを厳守しましょう。
■③剪定に自信がなければ業者に依頼する方法も有効
イチジクの剪定は一般的に冬に行いますが、冬は枝を切断することで樹木への負担が少なく、イチジクの成長を阻害しません。しかし、寒い時期に剪定をするのは人間の体に負担がかかります。剪定バサミを使い、枝を丁寧にチェックしながら剪定するには時間と手間もかかるものです。
地域によっては雪が降る場合もあり、外出するのすら面倒だと感じることもあるでしょう。そのため、イチジクをしっかりと育てたいものの自分で作業をするのは不安であるという人も多いのではないでしょうか。
冬に剪定をするのは寒くて面倒であるという場合や、自分で行う自信がないと感じる場合には、業者に依頼する方法が有効です。プロに依頼することで手間もかからず、美味しいイチジクを楽しめるでしょう。
■④カミキリムシはしっかり駆除する
イチジクの剪定をした後には、カミキリムシを駆除する必要があります。イチジクには、害虫の中でも特にカミキリムシが付着しやすく、駆除しなければ樹木が枯れるケースもあるので注意が必要です。
イチジクの幹に穴が開いていたり根の付近に木くずが出ている場合はカミキリムシの幼虫が潜んでいる場合があります。剪定後はカミキリムシが発生していないかどうか、こまめにチェックしましょう。
■⑤枝と根の状態を確認する
イチジクを収穫するためには、剪定が不可欠です。イチジクは、伸びた枝を全部に実がつくことが特徴です。枝の本数を調整して減らさなければ沢山のイチジクの実が育ちますが、イチジクの実1つ1つに栄養が届きません。
さらに、枝が多いと日光が当たらないため健康なイチジクが育たないことから、美味しく甘い実をつけるためにもイチジクの実の量を減らすなどの調整をしなければならないのです。
美味しいイチジクを収穫するために注意しなければならないポイントは、夏果を収穫するのであれば前年度に芽を切断せずに栄養が不足しているものだけを切断すること、芽がぶつかって伸びないといったことを予防するために、苗を植える際には間隔を空けることなどが挙げられます。
成長して根が丈夫になったところで土に穴を開け、根の状態を良くするもポイントです。
■⑥剪定をした後は枝を処分する
イチジクの剪定で切断した枝は、自治体ごとに決められた回収方法に従って処分しましょう。枝が多く自分で運べない場合には、業者に回収依頼をする必要があります。
袋が指定されていたり回収方が決まっていたりするため、剪定した枝を回収する際には葉や草も同時に処分してよいのかも含めて、あらかじめチェックしておくとスムーズです。
■⑦イチジクの育て方によって2つの形状から選択
前項で紹介した通りイチジクなどの果樹には主に杯状形(Y字形)一文字形などの仕立て方があります。イチジクを剪定方法には、2つの形状があります。1つは 杯状形(Y字形状)であり、省スペースのベランダ、家庭菜園で育てる際に適している方法です。実がなりやすく多くの収穫量が期待できます。
2つ目が主枝を左右に開く一文字形( T字型)であり、スペースを要するので本格的にイチジクを栽培している農家の人や土地が広い人に適しています。収穫を簡単出来るための仕立て方なので、都内やベランダなどには不向きです。
どちらにもメリット、デメリットがありますが、園芸としてお庭で育てるのであれば、杯状形がお勧めです。
■⑧枝の切り方のポイント
一般的には花芽がついていないものや元気がないもの、内側に向いている枝を根元から切断します。地面から50cmほどの高さに成長したら、上の方向に伸びているものを切断しましょう。
さらに、地面に向かって垂れ下がっていたり絡み合ったりしているもの、虫食いが見られる枝も切断することがポイントです。
注意点は、枝を切断しすぎると枯れる可能性があることです。そのため、一定の花芽を残して作業をしなければなりません。基本的には枝の先を切断し、込み合っているところを間引くことを意識しましょう。
■⑨切る枝を選ぶ際のコツ
イチジクの木を切断する際は、枝に対し垂直に切断することがポイントです。垂直に切ることで木への負担を最小限に抑えられます。
ただし、間引く作業をしたいのであれば主枝に沿うように切断しましょう。
■⑩病気にかからないように手入れをする
イチジクはうどんこ病、さび病、疫病の3種類の病気にかかるケースが多いため、剪定後にはしっかり手入れをしましょう。うどんこ病は、葉っぱの表面に白い粉のようなカビが生える症状が特徴であり、乾燥する季節に起こりやすい病気です。
白い部分は、光合成ができません。そのため、うどんこ病を放置すれば花が枯れ、イチジクの実も大きくならないうえに、カビが繁殖すると更に病気が広がります。ただし、作物ごとでうどんこ病のもととなる菌の種類の異なるので、イチジク以外の作物には移らないことが特徴です。
うどんこ病は、発症したばかりであれば専用の薬剤を使用してカビ菌の繁殖を予防抑制できますが、すでにうどんこ病にかかっている箇所については回復しないため注意しましょう。症状が進行しているのであれば葉を取る必要があります。
さび病は、カビの一種である菌に感染する病気です。さび病は最初に葉の裏側に細かな斑点ができ、症状が進行すると黄色い斑点が飛び散るように広がります。加えて、他の場所に赤い斑点が発生し、進行すると黒い斑点が見られることが特徴です。
さび病になると早い段階で葉が落ち、イチジクの実が大きく成長しません。さび病は夏の終わりにカビで発病することが一般的であることから、予防のためには8月上旬から薬剤を散布する方法が有効です。さらに、湿度が高いと病気にかかりやすいため、風通しの良さと日当たりを意識しましょう。
疫病は夏に多く、イチジクの表面が紫色や緑色に変色して白いカビが発生します。 雨が降るとすぐに繁殖するため、雨が降った後の予防として薬剤を散布することが大切です。木の周辺で排水をしたりビニールで覆って雨を避けたりすることで、疫病の予防につながります。風通しと、太陽光が当たるように工夫することも重要です。
また、本文でも紹介しましたが、苗を植えるときは、成長した時の大きさをイメージして植える場所決めて下さい。
イチジクのリフレッシュ剪定とは?
リフレッシュ剪定とはイチジクの剪定の仕方の1つであり、イチジクの実を常にフレッシュな状態に維持することから「リフレッシュ剪定」と呼ばれています。成長効率も良くなり、剪定方法も高度な技術を要する作業ではなく、コツを押さえれば初心者でも行うことが可能です。
実をつけている枝を残して古い主枝を切ることで木を元気な状態に戻します。古い枝を剪定すれば芽の成長も早くなり、イチジクの実が大きくなるといったことがメリットです。
さらに、リフレッシュ剪定から一般的な剪定方法に戻すことも可能であり、その間にイチジクの実の量が減ることはないため、気軽にリフレッシュ剪定を試せます。
イチジクが伸び過ぎ・大きくなりすぎたときの対処方法
イチジクの木が大きくなりすぎるとイチジクの実を収穫する際に手が届かないことや、熟した果実が落ちるといったデメリットがあります。
さらに、イチジクの葉は大きいため、風が強い場所では葉が折れたり破れたりするケースも少なくありません。風通しを良くしなければ害虫被害を受けやすく、樹木が腐りやすいので伸びすぎた枝もしっかりと剪定しましょう。
イチジクの挿し木からの育て方
イチジクは、初めて行う人でも挿し木を成功させやすいことが特徴です。剪定をして切断した枝を使い、チャレンジしてみましょう。
枝の先や、前の年に伸びた枝もしっかりと育てることが可能です。剪定で切り落とした枝を挿し木にするために20cmほど切って切り口を斜めにし、水に2時間程度浸け置きします。
挿し木用に使う鉢は大きなサイズのものを用意し、大粒の赤玉土を少量入れ上から小さな粒の赤玉土、培養土を入れましょう。そして、切った枝の3分の2程度が土に入るように挿し、しっかりと水を与えます。挿し木をする際には切り口に傷がつかないよう注意し、根が出るまでは日陰に置くことがポイントです。
芽が出るまでの間はビニール袋を被せての乾燥を予防しましょう。太陽光が当たる場所に置くと土が乾いてしまい、葉が日焼けするので木が丈夫に育ちません。根が出たら庭植えか鉢植えのどちらかを選択し、日当たりの良い場所に移して管理します。カミキリムシといった害虫被害を受けないように注意しながら育てましょう。
まとめ
イチジクは家庭菜園としても人気のある、育てやすい果物です。剪定の仕方を確認し、タイミングを間違えないように行うことで毎年おいしいイチジク収穫できます。注意点とコツをしっかり確認してから、様々な樹形に剪定して楽しみましょう。