椿の剪定や手入れ方法を、どのように行えばよいのか分からないという人も多いのではないでしょうか。厚みがあり光沢がある葉の中に美しい花をつける椿は非常に人気が高いですが、上手に育てるためにはお手入れのコツを押さえ、正しい剪定を行うことが重要です。
そこで、椿の剪定方法や必要な道具について詳しく紹介します。さらに、椿の剪定をする際に注意しなければならない毒虫や、剪定時のコツについてもチェックしておきましょう。
椿の特徴
椿は非常に綺麗な花を咲かせ、寒さや暑さにも強く、日照条件が多少悪かったとしても花を咲かせます。椿は育てやすいことが特徴ですが、定期的に剪定をしなければなりません。椿の剪定は、害虫の発生を防ぐこと、風通しを良い状態にすることを目的として行います。
風通しを良くしなければ湿気が高くなり、害虫が発生する可能性があるので注意が必要です。そのため、剪定を行って枝を間引きすることで風通しを良くし、害虫被害から椿を保護するためにも剪定を行いましょう。
さらに、椿は剪定をせずに放置すると大きく生長します。見た目が良いとはいえない状態になるので、剪定をして樹形を整える必要があるのです。綺麗な花を楽しめる椿の木は、景色に合わせて剪定をしましょう。
椿の剪定時期
椿の剪定時期は、花が咲き終わる4~5月頃に行うことが一般的です。椿の木は、6~7月に花芽が付くため、花芽が付く前に作業をしましょう。しかし、地域ごとで椿の剪定時期を若干調整する必要があります。
椿の花が咲き終わるタイミングは地域によって多少異なるので、椿に適した剪定のタイミングを判断することが重要です。全国に共通する剪定の目安は、花が咲き終わる頃だといえるでしょう。
椿を剪定するときの樹形
剪定する際の大まかな樹形の整え方は、基本的に木の勢いに影響を及ぼす徒長枝と混み合っている枝、枯れた枝を根元から切断します。樹形を整える際には、軽く刈り込みを行う方法が有効です。大まかに樹形を整えたら、内側の枝が若干見えるように1枝に3枚程度葉を残すようにして葉の付け根から切りましょう。
自然樹形で大きなサイズに成長させたい場合には、切り詰めるようにせずに、伸びている徒長枝のみを切断します。小さくしたい場合や鉢植えで楽しむのであれば、しっかりと切り詰めると良いでしょう。生垣や玉仕立ては、秋の剪定でも徒長枝を切断して整えます。
椿の剪定に必要な道具
椿の剪定に必要な道具は、剪定バサミ、剪定のこぎりのほか、衣類は長袖、長ズボン、軍手など怪我を予防するために肌を覆えるようなものを用意しましょう。
剪定した枝の後処理をするための新聞紙とビニールシート、ビニール袋、病原菌の侵入を予防するための殺菌剤も準備します。ちりとりやほうきなども準備しておくとスムーズに片付けられるでしょう。
椿の剪定方法7ステップ
椿を剪定する際の大まかな流れを7つのステップに分けて紹介します。
■ステップ①道具を準備する
剪定作業は怪我をするリスクがあるので軍手をして、汚れてもよい長袖、長ズボンでしっかりと肌を覆いましょう。さらに、葉や枝が下に落ちて散らかるため、椿の樹の下にはビニールシートや新聞紙を敷いておく必要があります。
■ステップ②内側に伸びているものや徒長枝、交差した枝を切断をする
最初に徒長枝と内側に伸びているもの、芽や葉がついていないもの、いくつかに分かれている枝、交差している枝、幹のほうへと内側に伸びている枝などを根元から切断します。枝が混み合っているのであれば、しっかりとほぐして作業をしましょう。細い枝は剪定バサミを使って切断し、太い枝は剪定のこぎりを使用して切ります。
■ステップ③バランスを見て全体を切り戻し剪定する
切り戻し剪定は、葉がついている場所の数cm上で切ることがポイントです。全体のバランスを見て整えるようにして、切り戻し剪定をします。
全体を整えれば、徒長枝は生えなくなるでしょう。ただし、葉や芽がついていない枝を途中で切断すると枯れてしまうので注意が必要です。
■ステップ④短い枝を剪定する
全体を整えた後、内側が込み合っているのであれば短い枝を剪定します。芽がついている場所から数cm上から切り取ることによって、徒長枝が生えることを防ぐことがポイントです。
ただし、切断しすぎると樹勢が弱くなるので、風通しや日当たりを良くする程度にとどめましょう。
■ステップ⑤葉の量を減らす
葉の量が多いのであれば、減らすように剪定しましょう。ただし、椿の樹は葉が落ちる種類ではないので、葉っぱが少なくなると樹そのものの勢いが弱くなる場合があるため注意が必要です。
そのため、同じ場所から数枚生えている葉を1枚減らす程度にとどめます。
■ステップ⑥枝先を剪定する
大まかな剪定が終わって樹形を整えた後は、枝先が分かれているものを剪定します。枝を剪定する際、木の幹の部分の枝が込み合っている場合には短い枝を剪定しましょう。
最後に、切り口に殺菌剤を塗ります。
■ステップ⑦葉や枝を片付ける
椿の木の下に敷いていた、新聞紙やビニールシートに落ちた枝と葉を片付けます。ほうきやちりとりを使って、周辺に飛んだ枝や葉もきれいに片づけて完了です。
不要な枝に栄養をと取られないようにするのと同時に見た目もすっきりと形良くなります。
椿の剪定のコツと注意点12個
椿の剪定の基本的な剪定方法を確認した後は、コツや注意点についてさらに細かく確認しておきましょう。
■①椿をどのように楽しむのかが重要
椿の剪定をする前に、樹形を作るのか、たくさんの花を咲かせて楽しむのかを決めることから始めます。花をたくさんつけたいのであれば、樹形を作らず不要な枝のみを1本ずつ切断する方法が有効です。鉢植えにする際には、花数を楽しむのが良いでしょう。
樹形を重要視するのであれば刈り込みが必要ですが、苗木から育てた場合は完成までに数十年かかるので注意が必要です。いずれの場合も、椿の樹は全体的にひしがたに仕立てるように切断すると綺麗に仕上がります。
■②庭木の剪定方法は2種類ある
椿の剪定方法は、樹を長期間健康な状態で維持するために枝の量を調整しながら切断します。椿の枝は切断する際に切り戻しと透かしの2種類の剪定方法が行われるので、基本的な透かし剪定と切り戻し剪定の方法についても確認しておくことが大切です。
透かし剪定とは、椿の余分な枝を根元から切断し、枝そのものの本数を減らす方法です。間引きともいわれており、椿の木の風通しを良くする目的で行われます。椿の剪定をする際には、最初に透かし剪定から行い、次に切り戻し剪定を行うことが特徴です。
切り戻し剪定は枝の途中から切断し、短い状態にして全体の樹形を整える際に行われます。椿の木のバランスが良くなるように、遠目から確認しながら枝の長さを調整しましょう。
椿は観賞用として楽しむことが多いので、見た目を重要視しながら長期間楽しめるような剪定を行うことが大切です。
少しづつ切りながらバランスを見ながら剪定していきましょう。
■③剪定で害虫対策をする:カイガラムシ
椿につく主な害虫は、チャドクガとカイガラムシです。カイガラムシとは、椿以外の樹木に寄生する害虫であり、葉っぱに黒カビを拡大させる「すす病」も併発することが多いです。すす病にかかると光合成ができないので、病気が進行する可能性が高いでしょう。
さらに、カイガラムシは樹液を吸うことが特徴であり、樹木の健康にも悪影響を及ぼします。成虫になると薬剤の効果が期待できないので1匹ずつ取り除くほかなく、大量繁殖している場合には枝や葉を剪定する方法が有効です。
■④剪定で害虫対策をする:チャドクガ
チャドクガは、ツバキ科の植物に発生することが一般的であり、4~5月と9月に発生する害虫です。9月に発生することを予防するために、8月に少し切り戻し剪定を行うと良いでしょう。
さらに、風で飛んだ毒針が刺さると皮膚病にかかるといった危険な虫であり、強いかゆみや発疹といった症状を発病します。毒針は、成虫だけではなく幼虫や卵にもあるので注意しましょう。
チャドクガの幼虫は椿の葉を食べることが特徴で、放置すると椿の葉を全て食べられてしまう可能性もあります。剪定をした後に、オルトラン系やベニカ系の薬剤を使用しましょう。チャドクガを駆除する際には、幼虫・成虫問わず、毒針が飛ばないように頭を先からしっかりと多い、専用の薬剤で固めてから駆除します。
チャドクガの卵を見つけた際には切り戻し剪定で枝ごと切り取り、ビニール袋に入れて処分しましょう。幼虫が小さければ、葉の裏に大量発生するので枝や葉を剪定すれば簡単に駆除できます。
■⑤剪定後に花が咲かない場合の対処方法
剪定後に椿の花が咲かない場合には、水分が吸収できているかどうかを確認することが重要です。そのため、根切りをすれば花が咲く場合があるでしょう。
椿が小さい場合、3~4月に幹から50cmの距離を開けた場所にスコップを差し込み、根を切ります。水分を吸収する量をコントロールすることで、花の芽がつきやすくなるでしょう。
■⑥椿を楽しむ場所ごとに剪定方法を変える:庭
椿を自宅のどこに植えるのかによって樹形が変わり、当然、樹形ごとに剪定方法も異なります。主に、盆栽、庭木、垣根のどれを選ぶのかによって剪定方法が異なることが特徴です。
庭で椿を楽しむ場合には、基本的な剪定方法である透かし剪定と切り戻し剪定を行いましょう。
■⑦椿を楽しむ場所ごとに剪定方法を変える:垣根
2本以上植えて密生させて垣根や生垣として椿を楽しむのであれば、椿そのものが大きく成長させ密生させるので害虫被害に注意が必要です。チャドクガが付きやすいので、チャドクガが孵化する前の冬に剪定作業を行います。さらに、チャドクガが活発に動き始める夏の前には駆除しなければなりません。
椿は、形状ごとに剪定作業の優先順位が異なります。植えている場所の椿の形をチェックして、適した方法で剪定を行うこともコツだといえるでしょう。
■⑧椿を楽しむ場所ごとに剪定方法を変える:盆栽
観賞用の椿の盆栽は、花を咲かせる目的で剪定を行います。樹形そのものの美しさを意識して目的の樹形になるように幹や根を固定し、枝の本数を増やしましょう。1本の枝から増やす枝の分だけ葉を残して剪定する方法です。その際に、必要のない枝は切り取りましょう。
盆栽の剪定は花芽をつけることが重要であるため、花が咲いた後に再度新しく花芽を成長させるために枝を切り落とす必要があります。花芽が付いているのであれば、枝や葉が増えないよう調整することが大切です。
■⑨夏の強剪定は避ける
強剪定は、枝のなかでも太いものを勢いよく短く切り詰める、もしくは芽や枝を根元から切り落とす方法です。椿の樹形を小さくする際に有効な方法ではありますが、強剪定を行うと樹に負担がかかるので、椿に回復力がなかった場合には枯れるリスクがあります。
椿の樹は春から夏の時期に枝や葉が成長するので、非常に勢いがあるように見えることが特徴です。しかし、実際には春から夏にかけての時期は最も椿の樹が弱っている時期でもあります。
エネルギー源は前の年の秋から冬の時期に蓄えられているので、夏の時期に強剪定をすると光合成が行われず、秋にエネルギーを蓄積できなくなるのです。エネルギーを溜められないため、エネルギーが少ないにもかかわらず新芽を成長させなければならないことから、椿の樹に大きな負担がかかります。
さらに、椿を切断した際の樹形が小さくなるものの、切り口から成長する枝は徒長枝になりやすい点もデメリットです。そのため、枝が込み合っており樹形が崩れる原因にもなります。加えて、夏の紫外線から樹を保護できなくなるので、椿を剪定する際には強剪定そのものや、強剪定をするタイミングには注意が必要です。
■⑩切り口に殺菌剤を塗布する
枝の剪定を全て終えた後は余分な葉を取って、枝の切り口に殺菌剤を塗布します。枝の切り口を切ったままの状態にすると、菌が入り病気にかかる危険性があるため注意が必要です。
また、切り口は乾燥して枯れやすくなるので、殺菌剤を塗ることによって病気になることだけではなく枯れることも予防できます。
■⑪剪定後の基本の手入れ
剪定後は、水やりと肥料を与えるといった基本の手入れを行います。水やりは、庭植えもしくは鉢植えによって、それぞれ方法が異なることが特徴です。庭植えの場合は、日常的に水を与えなくても問題はありません。気温の高い夏の時期といった乾燥しているときにのみ、水を与えましょう。
鉢植えの場合は、春は2日に1回、夏は朝と夕方の計2回、秋は2日に1回、冬は3日に1回行います。鉢植えは、表面が乾燥しているときに、水が底から流れる程度に与えることがポイントです。肥料は1年に2回与えます。与えるタイミングは3~5月の花が咲いた後と、9~11月の冬を越すためのエネルギーを蓄えるために暖効性の肥料や油かすを撒きましょう。
■⑫花腐菌核病の予防と対処法
花腐菌核病は花びらから症状が拡大する病気であり、花びらに茶色い模様が見られます。水で感染が広がるので、茶色い模様が出ている花びらは雨を避け、水やりの際にも水をかけないように注意が必要です。
また、翌年の病気の原因になるため、土の上に花びらを落とさないようにしましょう。花びらに茶色い模様が見られる場合には、すぐに取り除くことが大切です。
木が込み合っていると、薬剤が届かない可能性がありますので、 消毒・殺虫は必ず剪定後に行うことがポイントです。
椿の鉢植えの剪定方法
椿の鉢植えは非常に小さいことから、剪定の必要はありません。葉が多いと感じるのであれば、葉を少し減らす程度で良いでしょう。
まとめ
椿は、他の花と比べると育てやすいことが魅力ですが、剪定をする際には害虫に注意しながら切り方のコツを押さえて行うことが大切です。必要のない枝を付け根から切断したり、少し剪定をするのであれば葉や芽の数mm上から切断すると綺麗に剪定できます。
また、怪我をしないように服装に注意して、枝の切り口に殺菌剤を塗布することも重要です。健康な椿を育てれば、冬には美しい花を楽しめます。病気や虫の被害に注意しながら、丁寧に剪定をしましょう。