美しいツツジは、家庭で育てる花としても人気があり、毎年花が咲く季節には美しいツツジを楽しんでいるという人も多いのではないでしょうか。ツツジは他の花と比較して手入れに手間がかからず、毎年花を楽しめる種類ですが、枝が伸びると樹形が乱れてしまい美しい姿を楽しめません。
しかし、誤った時期に剪定を行うと翌年に花を咲かせられないため注意が必要です。そこで、剪定する時期と設定方法、注意点やコツについて詳しく解説します。
ツツジの特徴
ツツジは最大2m程度であり、樹木としては比較的小さなサイズだといえます。開花した時の美しさや育てやすさから、庭木や盆栽など様々な用途で楽しまれている種類です。
また、ツツジは蜜が出ることも特徴で、子供の頃に蜜を吸った経験があるという人も多いのではないでしょうか。ツツジの蜜は甘いことが特徴ですが、種類によっては毒が含まれているケースもあるため注意しましょう。
ツツジは春の木であるといったイメージがある通り開花時期は4~5月で、花の色はピンクや黄色など鮮やかな色です。
育てやすいことから人気のツツジですが、ツツジを美しい状態に維持するためには剪定作業が必須であり、誤った方法で剪定したり、そもそも剪定をしっかりとしていなかったりすると花が咲かない可能性があります。
雨水や日の当たるところが適しています。軒下など雨水や日光の届かない場所だと枯れてしまうこともありますので、植える場所には注意が必要です。
ツツジの剪定時期
ツツジを剪定する時期は、開花時期が終わった後が最適です。開花は4~5月であるため、剪定の時期として最適なのは5~6月だといえます。
花芽がつき始めるのは、基本的に7月頃です。そのため、剪定時期を過ぎてから作業を行うと花芽を切断してしまうリスクがあるので注意しましょう。
ただし、品種や地域によっては6月まで開花してるケースも珍しくありません。自分が育てているツツジの開花のタイミングに合わせて、剪定時期を判断しましょう。
ツツジの自然樹形
ツツジの樹形は基本的に玉仕立てですが、自然樹形で株立ち仕立てや多幹仕立てに適している種類もあります。さらに、自宅の庭が広いのであれば増やして玉状にして、遠近感を作る方法も有効です。
ツツジの剪定に必要な道具
ツツジの剪定に必要な道具は剪定バサミ、脚立と作業用の汚れても良い服、軍手、新聞紙です。剪定作業には当然ハサミが必須ですが、ツツジの剪定用のハサミには3つの種類があります。
剪定バサミのなかでも、木用のハサミは持ち手が大きいことが特徴です。基本的には細い枝を切断する際に使用します。剪定用バサミは、若干太い枝も切断することが可能です。手持ちの製品が多く、初心者でも取り扱いやすいでしょう。剪定の際に様々な作業で活用できます。
刈り込みバサミは、基本的に両手で使用するものが多く、大きなサイズのハサミです。枝や木を切断するよりも樹形を調整する際に活用します。
ツツジの刈り込み剪定方法4ステップ
刈り込み剪定方法は、大きく分けて4つのステップで作業を行います。まずは花が咲き終わってから、花がらを摘み取りながら作業をする方法、さらに、花が全て咲いた後に剪定する方法です。それぞれの剪定手順と作業内容を紹介します。
■ステップ①事前の準備
道具を準備して、葉や枝をまとめて処分するための新聞紙やシートを敷きます。最も重要な剪定バサミについては、自分が扱いやすいサイズや持ち手の素材の製品を用意しましょう。近年では電動剪定用カッターも販売されており、利用する人も多いです。
電動タイプのものは慣れるのに時間がかかりますが、使いこなせると非常にスムーズに作業を行えるようになるでしょう。また、樹が高く、上の方に手が届かない場合は脚立が必要です。
■ステップ②花がらを摘み取る剪定
ツツジの花は、開花時期を過ぎると茶色い色に変化して種を生成します。種を作り、花を咲かせ、エネルギーを使ったツツジは、株そのものがダメージを受けている状態です。
茶色くなっている花がらは、花がついていた場所から数cm下を剪定します。花がらを摘むのは非常に重要なメンテナンスだといえるでしょう。
花がらを摘み取る種類の剪定をした際には、剪定終了後の形が綺麗に整いません。しかし、見た目よりも、翌年にしっかりと花を咲かせるために花がらを摘み取る剪定をする方法が有効です。
■ステップ③伸びた枝の剪定
次に、ツツジの開花時期が終わり、花がすべてなくなった状態で行う剪定方法です。ツツジは通常4~5月、寒い地域であれば5~6月に開花時期を迎えるので、開花時期以降に剪定を行います。ツツジは、秋までに翌年の花芽をつけることが特徴です。
花芽がついた後に剪定を行うと、新しくついた花芽も取ることになるので翌年に花が咲かなくなる点に注意しましょう。そのため、開花時期が過ぎてからすぐに剪定を行います。
花は咲き終わってる状態であるため、不必要に伸びた枝も同時に剪定しましょう。通気性を向上させることによって病気の予防にもつながります。しかし、花が落ちて種子をつくるためには、株に負担がかかることが特徴です。花がなくなった状態であれば、すぐに剪定をする方法が有効だといえるでしょう。
さらに、一定のサイズで維持できたり綺麗な樹形を作ったりといった作業を行うこともポイントです。丸い形状の剪定方法をするなど、作業に慣れると様々な形に剪定して楽しめます。
■ステップ④後片付け
剪定した枝や葉のほか、害虫がついていたり病気にかかったりした葉をビニール袋に入れ、すぐに処分しましょう。
初めから切りすぎると切る必要がなかった枝を切ってしまい樹形を崩すこともあります。木を少し離れたところで見てどのような樹形にしたいか、どの枝を切るべきか、よく観察してから始めるのがいいでしょう。
ツツジの剪定のコツと注意点13個
ツツジは、剪定方法を誤ると花が咲かない可能性があります。そこで、ツツジの剪定のコツと注意点、剪定後の育成方法についても確認しておきましょう。
■①ツツジの剪定中の怪我に注意する
ツツジの枝や木は、切断した衝撃で飛ぶ場合も多いので、軍手をしなければ手を怪我する可能性があります。さらに、汚れる可能性が高いので汚れても良い服装で行うようにしましょう。腕や脚を保護するために、長袖、長ズボンで作業をすることも大切です。
■②脚立を使用すると難易度が上がる
一般的なツツジは、脚立を使わなくても剪定できる程度の高さにしか成長しないものですが、種類や環境によっては自分の身長以上に成長する場合もあります。手が届かない、剪定バサミが届かない箇所の剪定を行うときには、脚立を使用して作業しなければなりません。
しかし、脚立を使用して剪定作業をすると、自分の身体のバランスを取りながら繊細な剪定作業をしなければならず、地上で立って作業するよりも難易度が高くなるため注意が必要です。使用する脚立は、安定感のあるしっかりした造りのものを選びましょう。
■③剪定時期には十分注意する
ツツジの剪定のタイミングを誤ると、成長の勢いを止めてしまう可能性もあるため注意が必要です。もちろん花が咲かないといったトラブルも起こりうるので、正しいタイミングで剪定をしましょう。
■④剪定回数を意識する
ツツジは、何度も剪定を行うと樹形が乱れます。さらに、樹の勢いが弱くなったり花芽が減ったりする場合もあるので、剪定は適切な回数と手順を守って行いましょう。
■⑤強剪定を行わない
強剪定は、根元から枝を切断することを指します。極端に強剪定を行うと翌年に花が咲きにくくなるため注意が必要です。
■⑥正しい方法で剪定作業を行う
剪定の方法やステップはツツジの種類によって異なりますが、それぞれの種類に適した方法で行いましょう。また、誤った方法で作業をすると満足度の高い仕上がりにならないだけではなく、害虫の被害を受けたり病気になったりする可能性もあるので注意が必要です。
■⑦褐斑病の対策と予防
褐斑病とは、ツツジをはじめとした様々な植物の葉に起こる病気です。カビの一種が原因で発病し、最初に 褐色の斑点が見られ、徐々に黒い斑点に変化します。そして、斑点の範囲が広がり褐色で輪っかのような形の模様が発生するケースが多いです。胞子の塊や小さい粒などが生じるので、すぐに病状を判断できるでしょう。
斑点になった場所は枯れる、もしくは黄色く変色して葉が落ちます。そのため、たくさんの葉が褐斑病にかかると株がしっかりと育たず、美しさも損なわれるので注意が必要です。
前年に褐斑病にかかった枯れ葉が原因で冬を越し、春以降に斑点の部分や黒い粒の中で胞子が生成されて葉に感染して発病します。春から秋の時期に雨の日が続いたり風通しが悪かったりすると褐斑病にかかりやすいです。
病気にかかった葉は可能な限り早く除去して、処分するか土の中に埋めます。褐斑病を防ぐためには、適切な間隔をあけて剪定をして、風通しを良くします。株元の土で水をやって、鉢植えの場合は雨ざらしにならないようにするほか、薬剤は病気が分かった段階ですぐに使用しましょう。
■⑧炭疽(たんそ)病の対策と予防
炭疽病とは、 カビ菌が原因で起こる病気であり、ツツジ以外にもあらゆる植物や果実で発生する病気です。木や葉、枝が炭疽病になると、黒い斑点や灰色の斑点が見られます。
徐々に斑点が葉の部分に拡大して、症状が進むと斑点の中心が破れ、穴が開いて葉が枯れることが特徴です。乾燥している場合は黒い粒が広がり、湿度が高い場合には赤い胞子が固まって正面に発生します。
さらに、ツツジ以外の植物に感染が拡大するので、気づいた時にすぐ対策を行うことが重要です。炭疽病の症状が見られる場所は回復することはないため、すぐに葉を切り取りましょう。
切り落とした後、土に残ると新しい病気が発生する場合があるので、スムーズに処分することも大切です。また、発生したばかりであれば殺菌剤を使用する方法も有効でしょう。
■⑨もち病の対策と予防
ツツジは5月や9月に「もち病」にかかる場合があります。もち病は、若い葉が膨れて玉のように大きくなる病気です。
太陽光が当たらず雨が多いと起こりやすい症状であり、放置するともち病が拡大しするので、可能な限り早く取り除くことが重要です。葉を取り除いた後に、殺虫剤を散布することで再発を予防しましょう。
■⑩剪定後の害虫被害に注意する
ツツジにはイラガや毛虫といたトゲを持つ害虫や、ツツジグンバイと呼ばれる害虫が付着するケースが多いです。
ツツジグンバイムシは、主に4~10月に発生する害虫であり、特に春先に被害が増えるため注意しましょう。葉の裏に付着して葉の栄養分を吸収し、栄養がなくなった葉は表面に白い斑点が見られます。また、葉の裏に大量の黒い排泄物を付けることが特徴です。
害虫を駆除する際には、殺虫剤を使用する方法が有効であり、また、葉を食べられたり糞が付いていたりすると見た目にも悪影響を及ぼすため、葉ごと切り取るのもよいでしょう。殺虫剤は、液剤や水和剤、園芸用殺虫剤といった、植物に殺虫成分を浸透させるタイプのものを使用すると効果的です。
特に、葉の裏に殺虫剤を使用すると予害虫被害の予防にもつながります。予防方法としては、間引きをして風通しをよくすること、葉水を行って乾燥させないこともポイントです。
■⑪剪定後に挿し木をする際のコツ
ツツジの枝を使って木を増やす挿し木は、ツツジを剪定した後の新芽がつく時期に行いましょう。挿し木は新芽がついた枝を長さ15cm程度に切り取ります。葉が多いのであれば、枝先に着いた葉を優先的に数枚残して切り取ることがポイントです。
15cmの枝を準備したら、次は1日程度水につけます。水をしっかりと吸収した枝は、水はけと保水力が高い土に挿しますが、挿し込む時には鉢植えを使い、挿しにくいのであればあらかじめ枝と同じ大きさの穴を開けて準備しましょう。枝を挿した後は枝や根が安定していないので、水を与えながらしっかりと状態を確認します。
■⑫剪定後の枝を枝を処理する
剪定後は、地面にたくさんの葉や枝が落ちている状態です。剪定した枝はゴミ袋に入れ、指定のゴミ置き場に置くだけで処理できます。
病気にかかっていたり害虫が付着していたりした葉を処分する際には、念のためにビニール袋に入れたうえでゴミ袋に入れましょう。ただし、収集方法は自治体ごとに異なるので、剪定の前にルールを確認しておくと後片付けがスムーズに行えます。
■⑬剪定後の手入れをする
綺麗に剪定をしても、その後の手入れが疎かになれば花が咲かない可能性があるため注意が必要です。特に、肥料や水やりといった日常的に行う手入れの頻度に注意しましょう。
ツツジを育てる際には、当然水と肥料を与えますが、水切れを起こす可能性が高い種類であることから、鉢植えで育てる場合には特に水やりの頻度を意識しなければなりません。
土がどの程度乾燥しているのかをチェックしましょう。また、庭で育てている場合には雨水の影響で水切れを起こすリスクは低くなるものの、夏場は乾燥するのでこまめに水やりをすることが大切です。
肥料については、与えなくても問題はないといえます。肥料を与えたい場合には、花が咲き終わり剪定をするタイミングである5~6月、樹が成長する9月、寒さが厳しくなる1月の合計3回程度にしましょう。
花芽の付いた枝を残し、近くの込み合った不要な枝や徒長枝(まっすぐ上に飛び出ている枝)、枯れた枝などはこまめに取り除くようにしましょう。
ツツジの剪定で小さくする方法
ツツジの剪定で小さくしたい場合には、5月末に作業を行うことがポイントです。
4~10月の間は新芽が成長する時期であり、小さく剪定してもおよそ1ヶ月程度で新芽が出てしまいます。そのため、自宅で剪定をする場合には7~8月の剪定は避けましょう。
5月末までは真夏に入る前の時期であるため、葉を成長させて夏の紫外線によるダメージを受けないようにすることも重要です。
小さく剪定する場合には、ハサミよりもノコギリを使用するケースが多いですが、ノコギリは切り口がきれいにならなかったり力任せに折ったり、樹皮が傷つくような切り方をしたりすると枯れてしまう可能性があるので、ノコギリの扱いには注意しましょう。
ツツジの盆栽の剪定方法
ツツジの盆栽の剪定方法は、樹形をキープして大きく仕上げたい場合と、現在すでに樹形ができあがっている状態の2つのパターンで方法が異なります。樹形をキープしてを大きく構築する場合には、新梢を残した状態に剪定します。最初に花がらを取り、新梢が2本になるように切り取りましょう。
成長した後の枝の方向を考慮し、外芽を残すことがポイントです。次に、枝に葉が2枚になるように切ります。葉がついた上の枝から優先的に芽吹くことから、芽摘みで残った葉の横から新しい芽が成長します。枝を込ませる時や、剪定バサミで枝を作成したい場合にも良いでしょう。
一方、樹形ができあがった状態のツツジの盆栽は、前年度の葉のみを残して、新しく成長した枝を全部切断します。新しい芽は古い葉の数と同じ数生長する場合があるので、葉が3枚程度出たら、勢いが弱くなっている枝を2本程度残して剪定しましょう。
まとめ
ツツジの剪定作業そのものは工程が少なく、比較的行いやすいといえます。
重要なポイントは、細かなコツを押さえたうえで、剪定時期を誤らないことです。自分の理想の樹形になるよう、道具を用意して仕上がりをイメージするなど、事前にしっかり準備をしてツツジの剪定を行いましょう。