米びつを見たら黒っぽい小さな虫が付いていて、”気色悪い!”と思ったことはありませんか?また、”米びつに入れて白米を保存しているのにどうして虫が付いているのか?”、不思議に感じた方もいるでしょう。
黒っぽい小さな虫はコクゾウムシかもしれません。コクゾウムシは古くから存在しており、江戸時代に作られたツボの中や土の中から化石が多数発見されています。現代でもコクゾウムシを目にする機会がある理由は、コクゾウムシが生き延びることができる環境があるからです。
では、コクゾウムシはどうして発生するのでしょうか?今回は、コクゾウムシの発生原因の他に、コクゾウムシによる被害・駆除方法・予防対策などをご紹介します。
コクゾウムシの生態と特徴
米びつなどに潜んでいるコクゾウムシの特徴や生態をご存知でしょうか?最初にコクゾウムシについて詳しく見てみましょう。
コクゾウムシは別名、米虫や角虫(つのむし)とも呼ばれており、穀類(米・玄米・とうもろこしなど)・乾燥芋・乾麺などを食べる害虫です。コクゾウムシの漢字表記は『穀象虫』ですが、口が長く象の鼻に似ていることから名前に象の文字が入っています。
成虫の体長は約2.3mm~3.5mmで体の色は黒や赤の褐色です。また、羽があり飛ぶことも可能で、米びつなどにわずかな隙間があれば侵入することができます。コクゾウムシは長い口で穀類などを食べる他、産卵時は穀類に穴を開けて穀類の中に卵を産み付けるのが特徴です。
1粒の穀類に1個の卵を産み付けて、成虫になるまで穀類の内部にとどまります。産卵回数と個数は寿命や環境にもよりますが、年間3回~4回産卵をしてメス1匹につき約200個~400個の卵を産む害虫です。
コクゾウムシは高温多湿を好む害虫で、梅雨や夏がある日本の気候は過ごしやすい環境が整っていると言えるでしょう。23度以上になると活動を始めて最も活発に動く温度は28度前後です。湿度は高めで約60%~80%の環境を好みます。
コクゾウムシが及ぼす被害
白米などの食料品にコクゾウムシがいたらゾッとする方もいるでしょう。コクゾウムシはミリ単位のとても小さな害虫ですが、どのような被害があるのでしょうか?
【見た目が不快で気持ち悪い】
コクゾウムシによる被害は見た目が不快で気持ち悪いことです。コクゾウムシの見た目はオスのカブトムシに似ており、虫が苦手な方は食料品に1匹いるだけでも不快に感じるでしょう。
コクゾウムシはゴキブリのように素早く動き回るわけではありませんが、口にする物に害虫がいる時点で気持ち悪いです。
【大量発生する可能性がある】
米びつなどにコクゾウムシのメスが1匹侵入するだけで、数か月後には大量発生するかもしれません。コクゾウムシが好む環境であれば、産卵をして数を増やす可能性があります。
【穀物などを廃棄することになる】
原則、コクゾウムシの被害に遭った食料品は廃棄した方が良いでしょう。理由は食料品の内部はスカスカで衛生的ではないからです。
コクゾウムシの発生原因
コクゾウムシが発生する理由は2つあります。では、どうしてコクゾウムシは発生するのでしょうか?
【白米や玄米など購入した時から存在していた】
コクゾウムシが発生する原因として、白米や玄米など穀類を購入した時点で付いていたことが挙げられます。
収穫した米にコクゾウムシの卵が付いている状態で出荷されていたり、貯蔵庫で保管している米にコクゾウムシが付く可能性もゼロではありません。また、農薬で育てた白米よりも、無農薬で育てた米の方がコクゾウムシが付きやすいです。
【穀類などの保存状態が良くない】
開封済みの白米や乾麺などを常温保存していたり、密閉容器に入れないで保存しているとコクゾウムシが発生します。
コクゾウムシは嗅覚があり、穀類などのニオイを察知するとほんのわずかな隙間でも侵入することができる害虫です。穀類や乾麺などのニオイ・米びつ内に落ちている米ぬかのニオイなどを察知すると、容器の隙間から侵入します。
コクゾウムシの駆除方法4個
コクゾウムシを見つけたら4つの方法で駆除しましょう。コクゾウムシは体長が小さく全ての数を把握することは難しいですが、駆除方法がわかれば成虫や幼虫も駆除することができます。
■①ピレスロイド系の殺虫剤を使う
食品そのものにコクゾウムシが付いていない場合は、ピレスロイド系の殺虫剤で駆除してもいいでしょう。ピレスロイド系の殺虫剤は殺虫剤の中でもオーソドックスな種類で、コクゾウムシの駆除にも向いています。
ピレスロイド系の殺虫剤はコクゾウムシの神経系に作用し、素早く駆除して忌避効果もあるのが特徴です。万が一、殺虫成分を吸い込んでも人体への影響は低く、分解酵素で体内から排出されるため安全性は高いと言われています。
ピレスロイド系の殺虫剤はエアゾールタイプと燻煙タイプの2種類があり、駆除したい範囲に合わせて選ぶといいでしょう。
エアゾールタイプは部分的に使いたい時に向いています。燻煙タイプは殺虫成分が含まれている煙を出して隠れている害虫も駆除するのが特徴です。部屋にいるコクゾウムシを確実に駆除したい場合は燻煙タイプを使いましょう。
■②白米や玄米などの穀類を水で研ぐ
白米や玄米などの穀類にコクゾウムシが付いている場合は、ごはんを炊く時の要領で研いで駆除します。イメージをしては水攻撃と手の圧でコクゾウムシを駆除する感じです。穀類を水で研ぐと白米などの中にいる幼虫が浮いてきたり、白米などの表面に付いている成虫も浮いてきます。
穀類に発生したコクゾウムシを駆除するポイントは、ゆっくり時間をかけて研ぐことです。穀類をゆっくり時間をかけて研ぐと、コクゾウムシは水流や手の圧によるダメージを受けやすくなります。
また、駆除したコクゾウムシを穀類に残さないために、研ぎ汁をよく見て完全に姿が見えなくなるまですすぎましょう。
■③穀類・乾燥芋・乾麺などを日光に当てる
成虫のコクゾウムシ限定の駆除方法をご紹介します。コクゾウムシは光が苦手なため、穀類・乾燥芋・乾麺などに発生したら日光に当てて駆除しましょう。
やり方は、日光が当たる場所にビニールシートや新聞紙などを広げて、コクゾウムシが付いている穀類などを数時間置くだけです。光が苦手なコクゾウムシは逃げていきます。
ただし、穀類などを日光に当てる方法は注意点があり、炎天下など気温が高過ぎる日は直射日光に当てないようにしましょう。特に白米や玄米を高温の直射日光に当てると米が劣化して味が落ちます。炎天下の日は太陽光が差し込む部屋に短時間置きましょう。
■④穀類・乾燥芋・乾麺などを冷凍庫や冷蔵庫で冷やす
殺虫剤を使わないでコクゾウムシを駆除するなら、穀類や乾麺などを冷凍庫や冷蔵庫に入れる方法もあります。コクゾウムシは寒くなると動きが鈍くなる害虫です。15度以下の環境では活動することができず産卵や孵化もしません。
一方で、穀類や乾麺などを冷やす方法は手間がかかるのが難点です。冷凍庫や冷蔵庫で、コクゾウムシの成虫・卵・幼虫を駆除した後は水で研いで取り除く必要があります。
コクゾウムシを発生させない予防対策4個
穀類などの食料品をコクゾウムシから守る4つの予防対策をまとめました。コクゾウムシの予防対策は自宅にある物を使ったり、ちょっとしたことを気を付けるだけで寄り付かなくなります。
■①乾燥した唐辛子を入れる
米びつなどの容器に乾燥した唐辛子を入れると、コクゾウムシは嫌がり侵入することができません。白米や玄米など10kgに対して乾燥した唐辛子を約5本入れましょう。
”唐辛子の量はたった5本だけでいいの?”と思う方もいるかもしれませんが、コクゾウムシには十分な量です。唐辛子は辛み成分であるカプサイシンが含まれており、嗅覚が鋭いコクゾウムシにとっては刺激が強く居心地がよくありません。
ただし、乾燥した唐辛子でコクゾウムシの予防対策をする時はヘタを取りましょう。唐辛子のヘタはカビが生えたりダニが寄せ付ける原因になります。
■②コクゾウムシを寄せ付けないグッズを使う
家に乾燥した唐辛子がない場合は、コクゾウムシが寄り付かない防虫剤を使ってもいいでしょう。食料品向けの防虫剤は自然界にある物で作られており、人体に害を及ぼす心配がありません。
例えば、炭からできている防虫剤は白米のニオイを脱臭することができます。白米があってもニオイがしなければコクゾウムシは穀類の存在に気が付きません。他にも、唐辛子やニンニクの成分が含まれている防虫剤などがあります。
コクゾウムシに効く防虫剤は100均でも取り扱っており、効果は約3ヶ月~8ヶ月です(効果は商品や使用状況によって異なります)。
■③穀類や食料品は冷凍庫や冷蔵庫に入れる
寒さに弱いというコクゾウムシの特徴を利用して、できれば穀類や乾麺などは冷凍庫や冷蔵庫に入れましょう。冷凍庫や冷蔵庫は密閉空間で食料品のニオイが室内に漂うこともなく、隙間もないためコクゾウムシは侵入することができません。
ただし、冷凍庫や冷蔵庫にスペースがなく、穀類などの食料品を入れることができない場合もあるでしょう。特に白米や玄米は場所を取り、家庭によっては冷凍庫や冷蔵庫で保存するのは難しいかもしれません。
今は米びつも進化しており保冷効果がある米びつが発売されています。保冷効果がある米びつは冷凍庫や冷蔵庫に白米や玄米を入れることができない方におすすめで、コクゾウムシなどの害虫を寄せ付けません。
■④開封済みの食料袋は密閉容器に入れる
白米や玄米など食料品にコクゾウムシを発生させないために、開封後は密閉容器へ入れて侵入を防ぐことが重要です。
開封済みの食料袋は密閉容器に入れて保存しないと、隙間からニオイが漏れてコクゾウムシを寄せ付けることになります。ロック式タイプの保存容器など密閉性が高いものを選んで、コクゾウムシの侵入を防ぎましょう。
コクゾウムシを駆除した後のお米は食べられる?
白米や玄米に発生したコクゾウムシは、駆除すれば食べることができるのでしょうか?コクゾウムシは人体への影響はないと言われており、駆除した後の白米や玄米は食べることができます。
とは言っても、コクゾウムシの被害に遭った白米や玄米を食べることはおすすめしません。理由は、アレルギーを引き起こすかもしれないからです。
コクゾウムシを完全に駆除したと思っていても、サイズが小さいため見落としている可能性があります。例えば、成虫のコクゾウムシは100%駆除していても、卵や幼虫を取り残しているかもしれません。
アレルギーの発症リスクを考えると、コクゾウムシが発生した白米や玄米は捨てた方が良いでしょう。
まとめ
コクゾウムシは穀類などの食料品を荒らす厄介な害虫で、被害が広がる前に駆除しないといけません。たかがコクゾウムシ1匹と甘く考えていると、数ヶ月後には数百匹に増える可能性があります。知らない間にコクゾウムシを体内へ入れないためにも、早めの駆除と予防対策を行いましょう。