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バリアフリーリフォームの事例と費用をご紹介!補助金は使える?【プロ監修】

バリアフリーリフォームの事例と費用をご紹介!補助金は使える?【プロ監修】

我が国では少子高齢化が叫ばれてもう久しく、既に3世帯に1世帯には高齢者が居住しています。 これからの住宅は、高齢者が住むことを前提にして考える必要があり、リフォームを行う際には現在高齢者がいないご家庭でも、将来を見据えてバリアフリー化を検討しておくことが大切です。 本記事ではバリアフリーリフォームの事例や費用、補助金制度についてご紹介するので、是非リフォームの参考にしてください。


タクトホームコンサルティングサービス代表
亀田 融
東証一部上場企業グループの建設・住宅部門で、約33年間現場監督(注文住宅、賃貸マンション、官庁工事)及び住宅リフォーム事業の責任者として従事。その経験を活かし、会社設立。
東証一部上場企業グループの建設・住宅部門で、約33年間現場監督(注文住宅、賃貸マンション、官庁工事)及び住宅リフォーム事業の責任者として従事。その経験を活かし、会社設立。

近年では家庭内事故死が増えているといわれ、その数は交通事故死よりも多く、特に高齢者の比率が高くなっています。
死に至らない事故まで含めて考えると、住まいの中の安全対策がいかに重要なのかがわかります。
バリアフリーリフォームの目的には、家庭内事故を防ぐことが含まれています。
たとえこの先も大きな障害を持つことがなかったとしても、運動機能の低下や肉体の衰えは誰もが間違いなく経験することです。
住まいのバリアフリー化は、高齢者や障害を持つ人達のための特別な工事と思われがちですが、リフォームを行う際には10年後、20年後を見据えた「バリアフリーへの備え」が欠かせません。
そこで本記事では、バリアフリーの事例や費用、活用できる補助金制度などについて詳しくご紹介したいと思います。

バリアフリーリフォームとは?

バリアフリーとは「障害(バリア)」を「取り除く(フリー)」という意味で使われ、バリアフリーリフォームとは住まいにおける事故を防ぎ、快適で安全な暮らしを実現するための改修工事のことをいいます。
工事内容としては「床の段差をなくす」「手摺を設置する」「扉を引き戸に変更する」「水回りスペースを広くする」「床材を滑りにくいものに変更する」「建物の内外を通じて抵抗なく出入りできる様にする」などがあるほか、「室内の温度ムラの改善」や「短く単純な動線にする」といった温熱環境や平面計画の見直しなども重要になります。
また、要介護1~5、要支援の方に対して行われる介護保険法による補助金の対象になるリフォームもバリアフリーリフォームの一部です。
バリアフリーリフォームは5万円前後から可能ですが工事内容によっては高額な費用や長い工事期間がかかるので、必要になった時に考えるというのでは工事実行を決断するのに躊躇してしまいがちになります。
したがって模様替えや設備の更新などの他のリフォーム工事を行う際に、住まいのバリアフリー化を併せて検討しておくことが大切です。



バリアフリーリフォームを行うタイミング

バリアフリーリフォームを行うタイミングで最も多いケースは、ご家族の誰かが介護が必要になった時だと思います。
前章では、他のリフォームに併せて事前にバリアフリー化を検討しておくことの重要性についてご説明しました。
将来を見据えて、高齢になっても安心して暮らせる様に備えておくことが大切なのですが、一方では手摺がなくても問題なく暮らせる時に手摺があるとかえって邪魔になってしまうといったこともあります。
大切なことは内装のリフォームを行う際に壁の中に手摺の下地を入れておくなど、将来必要になった時に「容易に」「なるべくお金がかからない様に」備えておくことです。
また、耐震改修を行う際に壁の補強材として合板を貼っておくことで将来手摺を取り付けるための下地になったり、水回りリフォームの際に床の段差解消や引き戸への変更、廊下の拡張工事などを併せて行ったりしておくことが考えられます。
バリアフリー工事のみを単独で行う場合には高額な費用がかかる場合でも、他のリフォームと併せて行うことで、割安価格でより使いやすくリフォームすることが可能になります。
ご家庭によってバリアフリーリフォームを行う最適なタイミングは異なると思いますが、よほど切迫した条件でない限り、他のリフォームに併せて事前に検討しておくことをおススメします。

バリアフリーリフォーム費用の内訳・項目と相場

バリアフリーリフォーム費用の内訳は他のリフォーム工事と同様に、大きく分けると材料費、職人の手間賃、リフォーム会社の経費の3つです。
ひと口にバリアフリーリフォームと言ってもその内容は様々ですが、まずは減税や国の補助金の対象となる基本的なバリアフリーリフォームの費用相場をご紹介します。
1.床の段差解消
・段差解消スロープ(既製品)の設置・取り付け  2,000~3,000円/1箇所
・フローリング重ね張り工事(6帖)   70,000~80,000円
2.手摺取り付け   30,000~100,000円
3.滑りにくい床材への貼り換え(6帖)  200,000~300,000円  ※コルクの場合
4.ドアから引き戸への変更  50,000~100,000円/箇所
5.和式トイレから洋式トイレへの変更  200,000~500,000円
6. 階段滑り止め設置  50,000~65,000円
7. ユニットバス交換  500,000~1,000,000円



バリアフリーリフォーム事例と費用【介護】

介護のためのリフォームの代表例として、介護保険を利用して住宅改修を行うケースがあります。
介護/バリアフリーリフォームの重要なポイントは、介護される方と介護を行う家族やヘルパーの双方にとって安全かつ快適に暮らせる様にすることです。
「手摺の設置」「段差解消」「開閉しやすい引き戸への変更」「スロープの設置」などが良く行われている事例ですが、介護される方の自立性を高めると共に、介護する人の負担を軽減することが不可欠です。

紹介する事例は、車いすでの移動が容易にできる様に廊下の高さに合わせて洗面室の床をかさ上げして段差を解消し、入口の扉を開閉しやすい大型把手付きのスライド式3枚引き戸に交換した事例です。
尚、同時にユニットバスも交換して洗面室との床の段差を解消し、ユニットバス入口ドアにも3枚引き戸を採用しています。
※この事例では介護保険を利用していません
工期:2日間  費用:約50万円(ユニットバス工事は含みません)

バリアフリーリフォーム事例

写真提供:タクトホームコンサルティングサービス様

バリアフリーリフォーム事例と費用【浴室・洗面所】

浴室と洗面・脱衣室は一体的に考え、床の段差をなくして、将来部分的に体が不自由になっても一人で脱衣・入浴できる様に通常よりも少し広めにしておくのが理想です。
したがって浴室の広さは1坪以上確保しておきたいものです。
浴室の短辺方向の内法寸法が1m60cm以上あれば安心です。
また、浴槽のまたぎ高さも40cm程度に抑えておくと良いでしょう。
万が一障害を持った場合には、障害の程度や介助の必要性の有無などによって出入口と洗い場、浴槽の好ましい位置関係が変わってしまいますが、出入り口の幅や浴室内に十分なスペースがあればある程度対応することが可能です。
そのため、浴室ドアの開口幅をできるだけ広く確保しておくことをおススメします。
前の章の施工例の様な3枚引き戸が理想です。

次に紹介する事例はユニットバスの施工例です。
脱衣室と洗い場の段差をなくし、浴室の床面は滑りにくい床を選んでいます。
オプションで浴用車いすに座ったままでも全身シャワーが浴びられる新・入浴スタイル(シャワー・ド・バス)を採用しました。
また、洗い場と浴槽には手摺を設置し、ヒートショックを防止するための暖房設備も備えています。
ユニットバスは1.25坪サイズで、広さを確保して入浴しやすくするだけでなく、明るさや掃除のしやすさにも配慮しました。

工期:5日間  費用:約200万円(浴室部分のみの費用で洗面室は含みません)

バリアフリーリフォーム事例

写真提供:タクトホームコンサルティングサービス様

バリアフリーリフォーム事例と費用【トイレ】

トイレは加齢後の自立を支えるバロメーターになると共に、車いすでの利用や介助スペースを考慮して少し広めにしておくことをおススメします。
介助を想定した場合には、幅1m35cm以上、奥行き1m80cmは必要で、便器は部屋の真ん中に設置せずに片側に寄せ、空いている部分には手洗いカウンターなどを設置して、必要に応じて取り外せる様にしておきます。
トイレだけで十分なスペースを確保するのが難しい場合には、洗面・脱衣室や浴室などと一体空間にする方法があります。
またバリアフリーにする場合の出入口幅は有効寸法75cm以上を目安とし、引き戸にしておくと良いでしょう。
その他では洗浄機能付き暖房便座は必需品で、壁面には後から手摺が設置できる様に下地を入れるか合板を貼っておくことをおススメします。

トイレの施工例は、洗面脱衣室とトイレを一体空間にした事例です。
床の段差をなくして車いすでの利用を可能にし、十分な介助スペースを確保しました。
壁には後から手摺が設置できる様に合板を貼り、洗浄機能付き暖房便座用のコンセントも新設しました。

工期:3日間  費用:約30万円(トイレ部分のみの費用です)

バリアフリーリフォーム事例

写真提供:タクトホームコンサルティングサービス様

バリアフリーリフォーム事例と費用【キッチン】

バリアフリーに対応したシステムキッチンには、シンク下に足を入れることができ、車いすに乗ったままで調理が行えるものがあります。
ワークトップ(キッチンの天板)の高さを1cm刻みで選ぶことができたり、座ったままでもシンクの奥にある水栓のレバーに手が届く様に設計されていたりするので、まさにバリアフリーキッチンといえます。
さらに座ったまま収納することができる様に、ボタン操作で昇降ができる電動昇降付き吊戸棚もあります。
車いすでなくても、立ったまま長時間調理するのが辛い年配の方などにおすすめのリフォームです。

キッチンのバリアフリーリフォーム事例は、椅子に座ったままシンクでの作業が楽に行える様にした事例です。
ワークトップの高さを若干低めに設定し、シンク下は空間になっていて足を入れることができます。
またキッチン前には電気式の床暖房を新設し、冬の調理も快適に行うことができる様にしました。

工期:5日  費用:約100万円(キッチン部分のみの費用です)



バリアフリーリフォーム事例

写真提供:タクトホームコンサルティングサービス様

バリアフリーリフォーム事例と費用【寝室】

バリアフリーを考慮した寝室では、洋室+ベットが基本になります。
若くて健常なうちは畳の部屋に布団がいいという方でも、加齢とともに布団の上げ下げが大きな負担になります。
また高齢になるとベットにいる時間が長くなりトイレにも頻繁に行く様になるので、寝室の近くにトイレがあると安心です。
できれば浴室とトイレ、寝室を1か所にまとめられれば介護が必要になった際に便利ですが、無理な様であれば寝室からトイレ、浴室までの動線をできるだけ短くする様にしましょう。
寝室にある押し入れを改造してトイレにする方法もあります。

寝室のバリアフリーリフォーム事例は、収納を改造して寝室と一続きになる様にトイレを新設した事例です。
トイレ内を少しでも広くするためにタンクレストイレを採用し、手摺とコンパクトな手洗い器を設置しました。
またトイレの入口には開口幅が広くとれる様にアコーディオンドアを選びました。
音と臭いにも注意を払い、便器は消音型を選んで排水管には遮音材を巻き、熱交換型の換気扇を取り付けています。
さらに寝室の入口ドアは、大型の把手が付いた引き戸に交換しました。

工期:6日間  費用:約45万円(トイレ部分のみの費用です)

バリアフリーリフォーム事例

写真提供:タクトホームコンサルティングサービス様

バリアフリーリフォーム事例と費用【玄関・階段】

玄関は履物の着脱がしやすい様にするのが基本で、つかまり立ちや座ることができる様に手摺や簡易的な椅子を適切な位置に取り付けします。
また、土間部分との段差が30cm以上ある場合には、式台などを設置して段差が15cm前後になる様にしましょう。
そして廊下の幅はできるだけ広げておいた方が何かと便利なので、間取りを変更する様なリフォームを行う際には、廊下幅を85cm以上に広げておくことをおススメします。

階段は架け替えると工事が大がかりになって高額な費用がかかるので、手摺を設置したり、滑り止めを取り付けたりするのが一般的です。
ただし健常なうちに手摺を設置してしまうと、幅が狭くなって大きな荷物を持って通りにくくなってしまうので、内装リフォームなどを行う際に手摺の取り付け下地を入れておくことをおススメします。
またその際には、足元照明を設置するのも良いでしょう。

階段手摺の設置費用は階段の形状や段数などによって異なりますが、一般的な階段用の木製手摺(既製品)であれば、下地があれば50,000~100,000円程度で設置する事が可能で、工事は半日程度で終了します。


バリアフリーリフォームに使える補助金とは?

バリアフリーリフォームや耐震リフォーム、省エネリフォームを行うと、国や自治体から様々な補助を受けることができます。
そしてバリアフリーリフォームの際に最も利用しやすいのが介護保険制度です。
「要支援」または「要介護1~5」と認定された人が居住する住宅の場合には、手摺の取り付け、段差の解消、浴室・トイレの改良などのリフォームが必要な方に対して、リフォーム費用の9割(最大18万円)が補助されます。
ただし補助の対象となる工事内容は決まっていて、工事開始前に市町村の担当窓口に必要な書類を揃えて申請する必要があるため、ケアマネージャーなどに相談の上計画を進める必要があります。
他にも各自治体ごとに「高齢者住宅改修費支援制度」や「障害者住宅改造費助成制度」があることが多いので、各自治体のホームページや担当窓口に問い合わせてみると良いでしょう。
またバリアフリー工事を行うとリフォーム減税制度の対象にもなるので、所得税や固定資産税の控除を受けることができます。

バリアフリーリフォームを業者に依頼する時の注意点

バリアフリーリフォームで最も重要なことは安全性の確保と、介護される方・介護する家族の双方が快適な暮らしができる様になることです。
また、将来のいざという時に大がかりな改修工事が必要にならない様に、別の目的のリフォームの際に「バリアフリーへの備え」をしておくことも重要になります。
バリアフリーリフォームは一般的なリフォームとは異なり、建築・リフォームの専門知識だけでなく、介護や福祉、医療に関する知識も求められます。
したがって、バリアフリーリフォームの施工実績が豊富な会社や、2級以上の「福祉住環境コーディネーター」が在籍している会社に依頼すると安心です。
口コミやホームページのバリアフリーリフォームの施工事例などを良く確認し、気に入った複数の会社から提案してもらって比較検討することをおススメします。


まとめ

住まいのバリアフリー化は、長く快適に暮らしていく上で欠かすことができないものです。
そしてリフォームは、住み慣れた空間を手直しして不便だったところを直すものなので、住まいに積み重ねられた思い出を残しながら暮らし続けることができるのが最大のメリットです。
特に高齢になるにつれて、住み慣れた住まいの中で暮らし続けることには安心感があります。
「バリアフリーリフォーム」は、一部の人のためだけの特別なリフォームではありません。
誰にも訪れる加齢による運動機能の低下に備えて早めに備えておくことが大切です。
本記事を参考に、現時点ではバリアフリー工事が必要でない場合でも、他のリフォームを行う際にはバリアフリー化を検討していただきたいと思います。

タクトホームコンサルティングサービス代表
亀田 融
東証一部上場企業グループの建設・住宅部門で、約33年間現場監督(注文住宅、賃貸マンション、官庁工事)及び住宅リフォーム事業の責任者として従事。その経験を活かし、会社設立。
東証一部上場企業グループの建設・住宅部門で、約33年間現場監督(注文住宅、賃貸マンション、官庁工事)及び住宅リフォーム事業の責任者として従事。その経験を活かし、会社設立。

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