警察庁によると侵入窃盗による被害件数は毎年50,000件以上にのぼり、うち半数以上が住宅の「空き巣被害」だといわれていて、その多くが玄関からの侵入だそうです。
さらに侵入の手口では、ピッキングや工具による鍵の破壊など、鍵の防犯性に関わるものが多いようです。
年々防犯意識が高まり被害件数は減少傾向にあるとはいえ、いまだに多くの住宅が被害に遭っていることに変わりはなく、空き巣被害を予防するためには耐ピッキング性能の高い玄関鍵に交換することが非常に効果的です。
また他にも鍵の紛失や故障など、予期せぬ理由から鍵交換が必要になる場合があります。
しかし鍵の種類は様々で自分で鍵を交換する場合はもちろんのこと、業者に依頼する場合でも鍵の種類やそれぞれの特徴、選定方法、費用の相場などを知っておくと何かと役に立ちます。
そこで本記事では玄関ドアの鍵交換について詳しくご紹介します。
玄関ドアの鍵を交換する時ってどんな時?
玄関ドアの鍵は毎日使用するものですが、玄関ドアの鍵にも寿命があり、鍵や鍵穴は精密な構造になっているため、長年使っていると鍵が差しにくくなったり回しにくくなったりして不便さを感じるようになります。
また、鍵を紛失してしまった時や家を賃貸していた時などでは、その鍵を誰かに使われてしまう恐れがあるので、鍵交換をしておく必要があります。
家を賃貸する場合には退去時に鍵を返却してもらうのが基本ですが、入居者がスペアキーを作製している可能性があるので、特に注意が必要です。
しかしその様な必要に迫られて鍵を交換する以外でも、防犯性を高める目的で鍵交換を行うケースが増えています。
玄関ドアの防犯性は防犯意識の高まりから年々高くなっていて、中でも鍵の防犯性は格段に向上しています。
近年ではピッキング対策として有効なディンプルキーやワンキー・ツーロックのほか、カードをかざすタイプや指紋を認証するタイプ、暗証番号を入力するタイプなど様々な種類の玄関錠などがあります。
一時期窃盗団によって鍵穴から解錠するピッキング被害が続出したことから玄関錠の防犯性が注目される様になり、ディンプルキーをはじめとする防犯性の高い鍵に交換する需要が一段と高まりました。
玄関ドアの錠前の種類と料金相場
玄関ドアの鍵交換を業者に依頼する上では、まずは言葉の意味を正しく理解しておく必要があります。
鍵とはキー(Key)のことをいい、シリンダーとは鍵穴(円筒)のことを指します。
鍵と錠がセットになったものを「錠前」といいますが、鍵の交換費用は錠前ごと交換する場合と錠前を操作するシリンダーのみを交換する場合とでは大きく異なります。
一般的に鍵交換という場合には、シリンダーのみを交換する場合と、錠前ごと新しいものに交換する場合があるので注意が必要です。
鍵交換を行う際には錠前を引き続き使用してシリンダーのみを交換するのが一般的で、その場合の工賃は10,000~15,000円程度(部品代別途)です。
しかし、錠前の種類や規格によってシリンダーのみを交換できるかどうかが決まり、錠前全体の交換しかできない場合や交換可能なシリンダーが限定されてしまう場合があります。
この章では、玄関ドアの錠前やシリンダーの種類と錠前の部品代の料金相場をご紹介します。
尚、部品代については一般的な目安で、購入先や購入方法によって異なるため注意が必要です。
住宅の玄関ドアで現在一般的に使われている主な錠前は以下の5つになります。
交換する錠前がどれになるのかを確認しておくことが大切です。
1、プッシュ・プル錠
比較的新しい一戸建住宅の玄関に使われている錠前で、内側からはハンドルを押すだけ、外側からは引くだけでドアの開閉ができる錠前のことをいいます。
扉の開閉を行うハンドル(取っ手)に直接シリンダーが付いたものもあります。
部品代は15,000~80,000円前後で、メーカーや形状、仕様によって大きな価格差があります。
2.面付箱錠
マンションの玄関ドアに昔から多く使われているもので、ドアの室内側に錠ケースを取り付けるタイプの錠前です。
箱の様な錠ケースが室内側に露出しているので、容易に判別することができます。
部品代は5,000~20,000円前後になります。
3.ケースロック錠(箱錠)
玄関錠の主流になっているもので、ケースの中にデットボルト(かんぬき)とラッチボルト、開閉機構を一緒に収めた錠前で、ドアノブ(レバーハンドルまたは握り玉)とシリンダーが分かれています。
部品代は10,000~20,000円前後が目安です。
4.引き戸錠
引き戸に使われる錠前で、鎌状のデッドボルトが引っかかる様にしてロックします。
部品代は3,000~25,000円前後が目安です。
5. 引き違い戸錠
引き違い扉の玄関に使用される錠前で、2枚の引き戸の間に取り付けて使用します。
部品代は4,000~30,000円程度です。
尚、シリンダーにも種類があり、古くから国内の住宅で数多く採用されているディスクシリンダーやピンシリンダーのほかに、防犯性が高いディンプルシリンダーやロータリーディスクシリンダーがあります。
それぞれ鍵穴の形状に特徴があり、一般的にはディスクシリンダーの鍵穴は縦型でひらがなの「くの字」型、ピンシリンダーは縦型、ディンプルシリンダーは縦一列の形状、ロータリーディスクシリンダーは横型で鍵穴が一定でなく複雑な形を描いています。
シリンダー錠の中で最も防犯性に優れているのがディンプルキーで、最近建てられた住宅であれば標準仕様として採用されている可能性が高いものです。
複雑な構造で鍵の複製が難しく、ピッキングされにくいのが特徴です。
一方で、最も普及率が高いと思われるディスクシリンダーは容易にピッキングが可能だといわれているので、防犯上交換が望ましいといえます。
こうした鍵穴の種類によっても価格が異なり、最も安価なディスクシリンダーとディンプルシリンダーとでは、5,000~10,000円程度の価格差があります。
さらに近年では、鍵穴のないデジタル錠がシリンダー錠よりも防犯面で優れているといわれています。
暗証番号入力式やカードキー型、指紋・静脈・顔などで解錠できる生体認証錠、リモコンキーなどがあります。
暗証番号と指紋認証錠を組み合わせたものや、指紋認証とシリンダー錠のツーロックになったものなど、玄関錠の防犯性は日々向上しています。
玄関ドアの鍵を交換する時に依頼するのは?
玄関ドアの鍵を交換する際には、インターネットや電話帳などで探した鍵の専門業者(街の鍵屋さん)に依頼する方が多いと思います。
数多くの種類の鍵の在庫を持ち、緊急時にも対応してもらえるのが最大のメリットです。
鍵の紛失、鍵の故障などで玄関ドアを開けられなくなった時でも、鍵を開けてもらった後で鍵交換してもらうことができます。
また鍵の専門知識も豊富なので、ピッキングがしにくい鍵に交換したい、デジタル錠に換えたいなどといった相談にも応じてもらうことができるでしょう。
交換費用は部品代のほかに工賃や出張費が10,000~20,000円程度かかるのが一般的で、シリンダーのみを交換する場合では総額20,000~40,000円程度になります。
ただし特殊な鍵を使用している場合には費用が割高になることがあり、会社によっても料金設定が大きく異なる場合があるので、必ず事前に料金を確認する様にしましょう。
一方、賃貸物件にお住いの場合には、管理会社や仲介不動産業者に連絡して鍵交換してもらうのが一般的です。
契約時に、鍵交換を行う際には必ず管理会社に連絡することになっている場合が多いので、注意が必要です。
尚、その場合でも実際に鍵交換を行うのは、管理会社や不動産会社が手配した鍵の専門業者になることがほとんどでしょう。
元々付いていたシリンダーを保管しておけば、退去時に元に戻すことも可能です。
その他では、住宅を新築したハウスメーカーや工務店、リフォーム会社、生活関連サービスを行っている便利屋さんなどに依頼するケースもあるかと思います。
鍵交換と併せて、面格子の取り付けや防犯フィルム貼り、防犯カメラ、センサーライトの設置などの防犯対策を行う場合には一度に相談できるので便利です。
しかし緊急時の対応や特殊な鍵の取り扱いには難があるので、緊急性や専門性を要する場合にはあまり適しません。
玄関ドアの鍵交換を依頼する時の費用相場
この章では、鍵の専門業者に実際に玄関ドアの鍵交換を依頼する際の費用の相場をご紹介したいと思います。
前述した様に玄関ドアの錠前には様々な種類があり、種類によって価格相場も異なります。
錠前の種類ごとの交換費用は以下の通りです。
1.プッシュ・プル錠
同じプッシュ・プル錠でも使用する鍵の種類は様々なので、費用相場の幅が広くなります。
プッシュ・プル錠の鍵の交換費用は、工賃+出張費が10,000~15,000円かかるほか部品代が10,000~25,000円くらいかかるのが相場ですが、プッシュ・プル錠でハンドルと上下の鍵がワンセットになっている場合には、プッシュ・プル錠本体を丸ごと交換する必要があります。
2.面付箱錠
マンションなどの集合住宅で良く見られる面付箱錠の交換費用は、部品代が5,000~20,000円、工賃+出張費が10,000~15,000円で、合計15,000~35,000円ほどかかります。
3.ケースロック錠(箱錠)
ケースロック錠の交換費用は、部品代が10,000~20,000円、工賃+出張費10,000~15,000円で合計20,000~35,000円ほどです。
4.引き戸錠
引き戸錠の交換費用は、部品代が3,000~25,000円、工賃+出張費が10,000~15,000円くらいで合計13,000~40,000円程度です。
5.引き違い戸錠
引き違い戸錠の交換費用は、部品代4,000~30,000円、工賃+出張費が10,000~15,000円程度で、14,000~45,000円くらいになります。
ただし引き違い戸の鍵は、鍵の種類や扉によって構造が大きく異なることが多いので、費用が相場と大きく異なる場合があります。
6.トステム(リクシル)玄関ドアの錠前
トステム(TOSTEM)は以前はトーヨーサッシというサッシメーカーで、現在はリクシル(LIXIL)グループの建材メーカーです。
玄関ドアもトーヨーサッシ時代から数多く製造販売していますが、玄関ドアの鍵自体は他メーカーの玄関ドアと同様にMIWAやSHOWAなどの鍵メーカーの商品が使われています。
したがって鍵メーカーのシリンダーへ交換することが可能で、鍵の専門業者に交換を依頼することもできますが、トステムの玄関ドアに対応する商品を選ぶ必要があります。
シリンダーの交換費用は一般的な鍵交換の費用と同等で、工賃+出張費が10,000~15,000円、部品代が10,000~25,000円が相場になります。
玄関ドアの鍵交換を自分でする方法
玄関ドアの鍵交換を自分で行えば業者に支払う工賃や出張費の支出が抑えられるので、費用の節約につながります。
更に交換する部品をインターネットで購入すると、格安価格で入手できることがあります。
玄関ドアの鍵交換には特殊な工具は必要なく、どこの家にでもある簡単な工具のみで作業することが可能なので、DIYの経験がなくてもそれほど心配ありません。
ただし、鍵交換は玄関ドアを開けた状態で行うため、鍵を紛失してドアが開かない場合には、鍵の専門業者に頼んで鍵を解錠してもらう必要があります。
この章では、玄関ドアのシリンダーを自分で交換する手順をご紹介します。
1.現在付いている鍵のメーカーや型番を調べる
最初に新たに取り付ける鍵を準備しなければなりませんが、玄関ドアの鍵はどんな鍵でも取り付けできるわけではないので、現在付いている鍵のメーカーや型番を調べる必要があります。
ドアを開けて、ドア側面のプレートやドアの室内側に付いている錠箱にある刻印を見て、そこに書いてあるメーカー名と型番をメモします。
2.現在の型番に適合する鍵を探す
メモしたメーカー名と型番をもとに、インターネットの錠前販売店のサイトなどを利用して、現在の鍵の型番に適合する鍵をピックアップします。
適合するものが複数記載されている場合もあるので、その場合には現在のシリンダーを一度取り外して鍵の形状を確認し、掲載されている画像とよく見比べた上で適切なものを選びます。
3.自分の要望に合ったものを購入する
適切なものとして選んだものの中から価格や防犯性能などを考慮して、自分の要望に合ったものを購入します。
インターネットでそのまま購入するほかに、ホームセンターなどで現物を確認してから購入するのも良いでしょう。
3.鍵を交換する
ここでご紹介するのは、一般の住宅に数多く使用されているケースロック錠のシリンダーの交換方法です。
作業に必要なプラスドライバーとマイナスドライバーを用意して作業を始めます。
可能であれば他にペンチがあると便利です。
鍵交換の大まかな手順は、➀ドアを開けて扉の側面にあるプレートを固定しているビスを外してプレートを外す→➁シリンダー側にあるピンを引き抜いてシリンダーを外す→➂新しいシリンダーを取り付ける→➃外したピンやビスを外した時と逆の順序で取り付ける→➄鍵をシリンダーに差し込んで作動確認を行う となります。
詳しくはYouTubeの動画などで見ることができるので、参考にすると良いでしょう。
同じ規格の錠前であればこの様に簡単に交換が可能ですが、新たに取り付ける錠前によっては取り付けの手順や取り付けパーツが異なることもあります。
付属の説明書を見ながら落ち着いて作業するようにしましょう。
玄関ドアの鍵交換を自分でする時の注意点
玄関ドアの鍵交換は同じ規格のものに交換するのであれば素人でも10~15分ほどで交換が可能ですが、間違ったものを購入してしまうと取り付けができなかったり、取り付けるためにドアの加工が必要になってしまったりします。
したがって現在付いている鍵のメーカーや型番をきちんと調べて、それに適合する鍵を購入することが何よりも重要です。
しかし交換作業が複雑な「プッシュ・プル錠」や「電子錠」などの場合は専門的な知識が必要になるので、専門業者に依頼することをおススメします。
また玄関の鍵にはビスやピンなどの細かな部品が多いので、作業中に紛失しない様に注意が必要です。
そして万一作業途中で自分で交換するのが難しいと感じたら、決して無理をせずに鍵の専門業者に依頼する様にしましょう。
まとめ
鍵を交換する目的は様々ですが、いざ交換するとなるとどんなものに交換したら良いのかわからないという方が多いと思います。
錠前には様々な種類があり、国内にはMIWA、GOAL、SHOWA、KABA、WEST、HORIなどの多くの鍵メーカーがあって、それぞれが様々な製品を販売しています。
本記事では基本的な錠前やシリンダーの種類、交換費用の相場などをご紹介してきましたが、他にも電子錠や電気錠などの特殊な鍵がたくさんあります。
現在使用している鍵に特に使用上の問題がない場合でも防犯性の低い鍵を使用されている場合には、本記事を参考に防犯性の高い鍵に交換することを是非おススメしたいと思います。