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火災保険で屋根の修理ができる!全額でるの?経年劣化は適用される?【プロ監修】

火災保険で屋根の修理ができる!全額でるの?経年劣化は適用される?【プロ監修】

住宅を新築したり購入したりするとほとんどの方が加入する火災保険。しかし自然災害により建物被害を受けて修理を行う際に、修繕費用の全額、または一部を保険会社に負担してもらえる可能性があることを知らない方が多い様です。そこでどんな時に火災保険が適用できるのか、またその場合の申請方法などを詳しくご紹介します。


タクトホームコンサルティングサービス代表
亀田 融
東証一部上場企業グループの建設・住宅部門で、約33年間現場監督(注文住宅、賃貸マンション、官庁工事)及び住宅リフォーム事業の責任者として従事。その経験を活かし、会社設立。
東証一部上場企業グループの建設・住宅部門で、約33年間現場監督(注文住宅、賃貸マンション、官庁工事)及び住宅リフォーム事業の責任者として従事。その経験を活かし、会社設立。

昨今は自然災害による大きな住宅被害が頻発しています。

災害で壊れた屋根修理は保険の条件次第では、火災保険をつかって無償で修理できる可能性があります
しかし保険の適用条件や申請方法など注意すべき事柄が多く、中には屋根修理をめぐってトラブルや詐欺に巻き込まれてしまうケースもあります
上手に火災保険を利用して屋根修理を行うためには、最低限の知識を身に付けておかなければなりません。
そこで本記事を参考にして火災保険の基本的な知識を身に付けておきましょう。

屋根の修理は火災保険が全額おりる?

「屋根の修理は火災保険を使えば無料でできる!」という話をよく耳にしますが、本当の話なのでしょうか。
実はこうした話を悪用した業者によるトラブルが全国的に発生しているので注意が必要です

まずは加入している火災保険の補償内容を確認してください。
屋根工事と関連がある補償内容には「風災、雹(ひょう)災、雪災」があり、これらの内容が補償内容に含まれていれば火災保険を利用して無償で屋根修理を行うことができる可能性があります
風災とは台風や暴風、竜巻などの自然災害のことをいい、他に雹による被害や積雪・雪崩などによる被害などが該当します。

火災保険を適用するためには被害が風災などの自然災害によるものと認められることが条件で他にもいくつかの条件があり、それらの条件を全て満たさなければなりません
また修繕の内容によっては、必ずしも全額保険金で賄えるとは限らないので注意が必要です。

屋根の修理に火災保険を適用するための条件

この章では、屋根の修理に火災保険を適用するための条件をご紹介します。
屋根修理で保険金を受け取るための条件は以下の通りです。

・屋根の破損が「風災、雹災、雪災」などの自然災害によるものと認められること
具体的な被害の内容には雨漏り、屋根材の割れやズレ・剥がれ、棟板金の浮きや剥がれ、漆喰の崩れ、雨樋の破損、屋根材を固定する釘やビスの浮きなどがあり、火災保険会社の鑑定人による鑑定が必要になります。

・屋根の修理が必要になってから3年以内であること
屋根の修理が必要になって3年以内に保険会社に保険申請しないと失効になることになっていますが、実質的には3年に1度くらいは風災の対象になる突風や強風が吹くことがあるので、3年が過ぎてしまっても保険申請は可能と考えて良いでしょう。

・屋根の修理費用が20万円以上であること
修理費用には修理を行うために必要な足場代などが含まれます。
ただし加入している保険によっては20万円未満でも修繕費用の一部を受け取ることができる場合があります。

・申請は火災保険の加入者自身で行うこと
屋根修理業者による代行申請は認められないので注意が必要です。

これらの条件を全て満たすことが必要になり、一つでも条件を満たさない場合には保険適用にはなりません

経年劣化による屋根修理は火災保険が適用されない?

屋根修理で火災保険を適用するためには、前章でご紹介した様に破損の原因が自然災害によるものと保険会社に認めてもらう必要があります
したがって経年劣化によるものと判断された場合には保険金を受け取ることができません

経年劣化とは年月の経過に伴う色褪せや変形、ひび割れなどで、製品が本来の機能を発揮できなくなることをいいます。
この様な場合には火災保険の補償範囲に該当しないとはいえ、変形やひび割れは風害でも起きるものなのでその判断は非常にデリケートです。
したがって保険会社は破損や不具合の原因が自然災害によるものなのか、経年劣化によるものなのかの判断が微妙な場合には、経年劣化によるものと判断することがあります。

しかし、経年劣化と思われる場合でも、どこかのタイミングで風災被害を受けている可能性は否定できません。
特に急に雨漏りが発生した場合などは、その可能性が高いといえます。
風災と経年劣化を見分けるのは、プロの鑑定人であっても決して容易なことではありません。
鑑定結果に納得がいかない場合には、再鑑定を依頼するなどして粘り強く交渉することが必要です。

一方、あまりにも長期間メンテナンスを行っていない場合には、自然災害が原因で屋根が破損しても経年劣化によるものと判断されてしまう恐れがあります。
火災保険を正しく適用してもらうためにも、日頃の適切なメンテナンスが重要です。

屋根の修理で火災保険を申請する流れ

この章では、屋根修理を行う際の具体的な火災保険の申請の流れについてご紹介します。

1.屋根修理業者に修理費用の見積を依頼する
申請に必要になるものなので、事前に屋根修理業者から見積書を取得しておくと手続きがスムーズに行えます。
また同時に、申請に必要な被災箇所の写真撮影なども依頼します。

2.火災保険会社(代理店)に連絡する
火災保険会社に連絡して屋根の被害状況を伝えると共に、申請に必要な書類を入手します。
保険金請求書、事故内容報告書、屋根修理の見積書、風災を証明する写真が一般的ですが、必要書類は保険会社によって異なる場合があるので注意が必要です。

3.保険会社に申請を行う
申請書類は屋根修理業者に依頼して作成してもらうことも可能ですが、申請は必ず保険契約者自身で行う必要があります。

4.保険会社の鑑定人の鑑定を受ける
保険会社の鑑定人が現場で調査・鑑定を行います。
鑑定人の調査には保険申請者の立ち合いが必要になります。

5.鑑定結果の報告を受ける
鑑定の結果、保険が適用できるかどうかが決まり、適用できる場合には受け取ることができる保険金額が確定します。
尚、保険金額は必ずしも申請時の見積書の金額と同じになるとは限りません。

6.保険金の受取
保険会社から保険金が指定の口座に入金されます。

概ね以上の様な流れになりますが、火災保険の保険金の額は実際に工事を行った費用ではなく、工事を行う前の状況を見て判断されるので、必ず工事を行う前に申請する必要があります。
また保険金の申請代行業者を名乗る屋根修理業者に申請を依頼するとトラブルの原因になるため、絶対にやめましょう

そして保険金が出たとしても、実際に工事を行うかどうかの判断は申請者の自由なので、工事を全く行わなかったり、見積書の一部の内容しか工事を行わなかったりすることができます。
ただし火災保険の契約内容に「復旧義務」について明記されている場合には、申請後に認定された保険金を使って修繕を行わなければならないので注意が必要です。
なお、修繕工事を行う際には、保険金を費用の一部に充てて、屋根を全面的に葺き替えることも可能です。

屋根の修理で火災保険を申請する時によくある質問

この章では、火災保険を利用して屋根修理を行おうとする際によくある質問をQ&A形式でまとめてみました。
是非参考にしてください。

Q1:屋根修理にはどこの保険会社の火災保険でも対応しているのでしょうか?
A1:一般的な保険会社や共済の火災保険であればほとんどの場合が対応していると思いますが、ごく稀に対応していないケースもあるので、加入している火災保険の補償内容を確認してみましょう。

Q2:火災保険の保険金が申請額よりも低くなることはありますか?
A1:火災保険の保険金の額は保険会社の査定によって決定するので、申請金額よりも低くなってしまうことがあります。

Q3:火災保険を利用してできる屋根修理の工事範囲はどの程度まで可能ですか?
A3:屋根修理を行うために必要になる足場代や、雨漏りの原因調査の費用なども火災保険の対象になります。
しかし火災保険の目的はあくまでも被害箇所の原状復旧なので、屋根の葺き替えや塗り替えなどの全面的なリフォームは保険の対象外になります。

Q4:火災保険を利用して屋根修理を行った場合、保険料は値上がりしますか?
A4:火災保険には自動車保険の様な等級制度がないので、保険を使って屋根修理をしても保険料が上がってしまうことはありません。
何度でも修繕を行うことが可能です。

屋根修理で火災保険を利用する際のトラブルとは?

自然災害が原因で屋根の修理が必要になった際には、火災保険を使って自己負担なしで工事を行うことができるというのは非常にありがたいことです。
しかし、この様な制度を悪用した悪質な業者によるトラブルが全国で多発しているので注意が必要です。
火災保険を利用して屋根工事を行う際のトラブル事例には、次の様なものがあります。
【トラブル事例】
・「火災保険の申請は必ず通る」といわれて工事請負契約を締結した後で保険会社への申請が却下されてしまったため、業者に解約を求めたら多額の解約金を請求された
・保険金が出るといわれて業者に工事代金を前払いしたところ、結局保険金を受け取ることができずに自己負担になった
・代理で保険申請するといわれて申請を依頼したら、高額な手数料を請求された
・保険申請後に追加工事が次々と発生して、最終的には保険金を上回る高額な追加工事代金を請求された

このような事例が数多く発生していて、消費者センターや国民生活センターなどが注意を呼びかけています
「火災保険を使ってタダで屋根修理ができる」「保険金は必ず受け取れる様にするので、申請から全てお任せください」などといって勧誘してくる業者は信用できません
中には故意に屋根を壊して台風被害のせいにしてしまったり、保険の申請時に虚偽の申告を指示されてしまったりするなど、詐欺まがいの業者もいるので、十分に注意する必要があります。
特に訪問販売でいきなり訪ねてきて、「無料」を強調したセールストークを行う業者は疑ってかかることが大切です。

屋根の修理で火災保険が出なかった時

屋根を修理するために火災保険の申請をしても、経年劣化と判定されたり、その他の適用条件を満たしていなかったりすると保険金を受け取ることができません
そのため、修繕費用は自己負担になります。
そんな時には屋根工事で利用できる自治体の補助金・助成金制度がないかどうかを調べてみることをおススメします

特に台風で多くの家が被災した場合などでは、自治体の補助金制度や法律に基づく支援制度の対象になることが多いので、自治体のホームページで調べるか担当窓口に問い合わせてみましょう。

屋根の修理に対応している火災保険会社一覧

ここまで火災保険を利用して屋根修理を行う際の適用条件や申請方法、注意点などをご紹介してきました。
最後に火災保険で屋根修理を行うことができる保険会社をご紹介しておきましょう。

【風災による屋根修理に火災保険が利用できる保険会社】
・三井住友海上火災保険株式会社
・富士火災海上保険株式会社
・損害保険ジャパン日本興亜株式会社
・あいおいニッセイ同和損害保険株式会社
・東京海上日動火災保険株式会社
・セコム損害保険株式会社
・セゾン自動車火災保険株式会社
・朝日火災海上保険株式会社
・AIU損害保険株式会社
・エース損害保険株式会社
・SBI損害保険株式会社
・大同火災海上保険株式会社
・日新火災海上保険株式会社
・共栄火災海上保険株式会社
・現代海上火災保険株式会社
・ジェイアイ傷害火災保険株式会社

多くの保険会社が火災保険の「風災」を補償していることがわかると思います。

その他では、全労済が運営するこくみん共済や全国生協連が運営する県民共済などが台風・降雪などの際の風水害に対応しています。
これらの保障事業は「保険」ではなく、「共済」と呼ばれています。
火災保険と共済の目的は、災害に対する補償という意味では同じですが、火災保険が保険会社(営利団体)と契約者が1対1で契約するのに対して、共済は加入者全員がお金を出し合って災害に備え、運営母体である非営利団体がそのお金や加入者を取りまとめています。
したがって共済は一つの契約を加入者全員で共有している様な形態になるため、支払い限度額が小さく、補償の範囲も狭くなる傾向があります。


まとめ

近年のゲリラ豪雨や台風による甚大な被害の増加のため、大手の損害保険会社は2021年1月から火災保険料を値上げすることを発表しました。
自然災害の増加を考えると火災保険は必要性の高いものといえますが、台風被害を受けた屋根の修理などに火災保険が使えることを知らない方が少なくありません。
せっかく高いお金を支払って火災保険に加入しても、それを利用しないのは本当に勿体ないことです。
ちょっとした屋根の修理でも20万円以上かかってしまうことが多いので、火災保険に関する知識を身に付け、有効に活用して欲しいと思います。

タクトホームコンサルティングサービス代表
亀田 融
東証一部上場企業グループの建設・住宅部門で、約33年間現場監督(注文住宅、賃貸マンション、官庁工事)及び住宅リフォーム事業の責任者として従事。その経験を活かし、会社設立。
東証一部上場企業グループの建設・住宅部門で、約33年間現場監督(注文住宅、賃貸マンション、官庁工事)及び住宅リフォーム事業の責任者として従事。その経験を活かし、会社設立。

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