雑草と聞くと、「厄介な存在である」「見た目は観賞用植物には劣る」といったマイナスイメージを持つ人も多いのではないでしょうか。しかし、雑草の中には、小さな可愛い花を付ける種類があります。
観賞用植物とは異なる魅力があり、群生する種類の雑草は美しく、人々の目を引くものも多いです。道や公園に咲いている、花を付ける種類の雑草に興味を持つ人もいるでしょう。そこで、白い花や紫の花を付ける雑草の種類、特徴を紹介します。
よく見る道端に咲く雑草の白い花の名前は?
道端に咲いている白い花の雑草は、ヒメジョオンやシロツメクサ、ハルジオンなどの種類が挙げられます。しかし、ナヨクサフジやクサフジといった見た目が似ている種類も存在するので、見間違えてしまうケースも少なくありません。
また、白い花を付ける雑草は、季節ごとに生える種類が異なります。そのため、道端で見かけた雑草がどの種類なのかをスムーズに判断するためにも、季節ごとの生える種類を知っておくと良いでしょう。
白い花の雑草一覧【春~夏】
春~夏にかけて生える白い花の雑草をご紹介します。特徴を知ることで、道端に生えている雑草が魅力的に見えるかもしれません。種類が異なる雑草でも、見た目が似ているものがあるため、それぞれの雑草の違いを写真でチェックしておきましょう。
■①ヒメジョオン(姫女苑)
ヒメジョオンが生える時期は6~10月で、科名はキク科ムカシヨモギ属、もともと北アメリカに生えていた雑草です。明治頃に日本に入り、現在では日本各地で咲いています。農村や都心の道端、山岳地帯にも生えている雑草です。
背の高さは0.3~1.3mと比較的背が高い雑草であり、茎には粗い毛が生えており茎の中には白い髄が存在します。
茎の下の方に生える葉は楕円形をしており、上の方に生える葉は先が尖っていることが特徴です。白い花は直径およそ2cmと小さく可愛らしい見た目で、茎の上の方の枝先に複数咲きます。
■②シロツメクサ(白詰草)
シロツメクサの科名はマメ科シャジクソウ属、4月頃から生え、葉の間から小さな白い花が咲きます。シロツメクサは常緑多年草と呼ばれ、国内で目にするケースが多いシロツメクサは3枚の小さな葉を付けた「クローバー」と呼ばれるものです。
濃い緑色の3枚の葉から、丸い小さな花が咲いています。道端で見かける以外にも、公園、牧草や河川敷きなどで、芝生として植えられることも多いです。背丈は10~15cm、丈夫な種類の雑草ですが暑さに弱く、夏の時期には枯れてしまうことがあります。
■③スズメノエンドウ(雀野豌豆)
スズメノエンドウの科名はマメ科ソラマメ属、生える時期は3~5月です。野原や花壇、植え込み、河原といった日の光が当たる場所に生えることが多いです。
スズメエンドウは、葉や花が2~3mm、背丈は20~40cmと非常に小さいため、しっかり観察していなければ見逃してしまうでしょう。白い花は、茎の先に4~6個程度咲きます。葉っぱも小さく、他の雑草が生えているようなところでは目立たない植物です。
1本1本は目立ちませんが、群生するため満開になると存在感があります。また、スズメエンドウは葉の先にあるヒゲを伸ばして、周囲に咲いている他の植物に絡んで伸びることが特徴です。
絡む植物がない場所でも独立しますが、真っすぐ成長するのではなく横や斜めに倒れるようにして成長します。
■④ヒメウズ(姫烏頭)
ヒメウズの科名はキンポウゲ科ヒメウズ属、生える時期は4~5月です。背丈は20~30cm程度であり、山や野原の日陰に生えます。
白い花は5mm程と小さく、しっかり観察しなければ見逃してしまうほどのサイズです。なお、花びらに見えるものはガク(萼)であり、花はガクの中に咲いています。種子が熟すと弾けて散りますが、散った後の花も小さく可愛らしいことが魅力です。
また、ヒメウズはデリケートな多年草で、地下で茎の塊を作ります。茎の塊は楕円形をしており、茎の先から花と葉を出します。成長すると枝分かれして花と葉を増やすことが特徴です。
■⑤ハコベ(繁縷、蘩蔞)
ハコベはナデシコ科ハコベ属の雑草で、背丈は10~20cm、ハコベ属の雑草はおよそ120種類存在します。ハコベが生える時期は3月~10月で、枝分かれして群生します。
夏の時期のみ休眠するものの、春~初夏の時期には沢山生えることが特徴です。道端のほか畑にも生えており、春の時期には茎の先に白い花を付けます。花びらの先に深い切り込みがあるため10枚の花弁が付いているように見えることもあるでしょう。
ハコベは、全種類にクロロフィルが含まれており、古くから食用植物として知られています。春の時期に生える茎や葉を茹でて食べるほか、小鳥の餌に使用することが多いです。
白い花の雑草一覧【秋~冬】
秋~冬の寒い時期に生える、白い花の雑草を紹介します。
■①オランダミミナグサ(阿蘭陀耳菜草)
オランダミミナグサの科名はナデシコ科ミミナグサ属、広葉雑草です。ヨーロッパ原産の雑草で、本州~沖縄まで日本全国に分布しており、日陰、日向と場所を問わず生えます。
背丈は10~30cmほどで、生える量が多いことが特徴です。10月頃から生えはじめ、年を越して翌年の春に茎が立ちます。秋に生えますが、寒い冬の時期には地上に生えている部分が1度枯れることが特徴です。
しかし、地下に生えている部分に栄養が残っており、翌年の春に芽が出て成長します。白い花はきれいですが、一般的な雑草と比較して駆除することが難しい種類です。
■②ハルジオン(春紫苑)
ハルジオンの科名はキク科ムカシヨモギ属、広葉雑草です。北アメリカ原産の雑草であり、背丈は50cm~80cmほどで10月頃から生え始めます。全国に分布している雑草で、白い花のほかピンクの細かな花びらを付けることが特徴です。
本来、ハルジオンは雑草ではなく観賞用植物として北アメリカから持ち込まれた植物であり、見た目が美しい雑草だといえます。大正時代の日本に持ち込まれた植物で、繁殖力が高いため、春の時期には市街地でも多く見られる種類です。
ハルジオンは、地上に生えている部分が枯れても根が残っていると再度生えることが特徴で、別名「貧乏草」ともいわれています。
■③ヒメムカシヨモギ(姫昔蓬)
ヒメムカシヨモギの科名はキク科イズハハコ属、キク科の広葉雑草です。北アメリカ原産の雑草であり、背丈は1.5m~2mほど、10月頃から生えます。本州~九州地方に分布しており、翌年の8~10月に白い花をつけることが特徴です。
ヒメムカシヨモギは、道端や空き地などに生えることが多く、茎には沢山の毛が生えています。葉は茎葉と根生葉があり、根生葉は楕円形で若干赤紫色です。
地面に種が落ちるとすぐに芽が出て成長するといった、非常に高い繁殖力があります。風や雨に乗って種が飛ぶため、広範囲で繁殖する雑草です。
ヒメムカシヨモギはすぐに成長しますが、すぐに枯れてることも特徴であり、いつも通る道端や公園で見かけても、気が付くと枯れてなくなっているでしょう。
■④オオアレチノギク(大荒地野菊)
オオアレチノギクの科名はキク科イズハハコ属、南アメリカ原産の雑草で、道端や空き地で多くみられる種類です。
夏の終わりから10月頃にかけて生える雑草であり、複数枝分かれした茎の先に花が咲きます。つぼみは成長すると下の部分が膨らみ、花が咲くと上の部分が開いて円筒状になることが特徴です。花の大きさは3~3.5cmほどと小さく、ガクに隠れてしまうので目立ちません。
花の色は白もしくは淡褐色で、花びらの形状は舌状です。舌状とは、多くの花びらが付いているように見えるものの、実際には複数の花びらが付いて1枚の花びらになったものを指します。
オオアレチノギクの茎は鮮やかな緑色で、成長すると背丈は1~2mになり、茎の上の部分は枝分かれしていますが葉が少ないことが特徴です。
紫の花の雑草一覧
白い花が咲く雑草だけではなく、紫の花が咲く雑草も存在します。鮮やかな紫の花を付ける種類もチェックしておきましょう。
■①ナヨクサフジ(弱草藤)
ナヨクサフジの科名はマメ科ソラマメ属、5~6月に生える雑草です。春の終わりから初夏の時期に花が咲き、河辺や野原に生い茂ります。
背丈は50~100cmで一般的に群生しており、花の筒部が長いことが特徴です。また、クサフジと呼ばれる種類に似ていることが特徴ですが、クサフジよりも濃い紫色の花を付けます。
■②クサフジ(草藤)
クサフジの科名はマメ科ソラマメ属、背丈は80~150cmでナヨクサフジに似ている雑草です。葉や紫の花の見た目は似ていますが、クサフジが生えるのは夏であり、生えるタイミングがナヨクサフジよりも少し遅いことが特徴です。
クサフジは北海道から九州地方全国に生息しており、道端、畑、山、河原といった日当たりが良い場所で見ることが多いでしょう。クサフジは肥料として使用されることがあり、牧場や畑では栽培していることもあります。そのため、農業が盛んな地方で目にする機会が多いです。
■③ムラサキケマン(紫華鬘)
ムラサキケマンの科名はケシ科キケマン属、4~6月に生える雑草です。春の時期に山や野原、道端などの半日陰に咲いています。
背丈はおよそ5cm、花の大きさは2cm程度で、ラッパに似た形状をしていることが特徴です。また、葉は淡い緑色をしています。花の変わった形状と、綺麗な紫色が魅力の雑草です。
■④マツバウンラン(松葉海蘭)
マツバウンランの科名はゴマノハグサ科マツバウンラン属、背丈はおよそ20~60cmで、4~6月に生える雑草です。葉は松の葉のように細く、花の形状がウンランと呼ばれる植物に似ていることから、マツバウンランと名付けられました。
マツバウンランが生える場所は、山といった人が立ち入らない場所や日当たりが良い斜面などが挙げられます。一般的には群生している雑草です。群生していると非常に綺麗ですが、見返る機会は少ないでしょう。理由は、新芽は非常に小さく細いため、成長する前に駆除されてしまうためです。
■⑤ツタバウンラン(蔦葉海蘭)
ツタバウンランの科名はオオバコ科ツタバウンラン属、4~6月の時期に生える雑草です。花の形状がウンランに似ているうえに、葉がツタのようになっているためツタバウンランと名づけられました。
道端、公園、駐車場などに生えていることが多いですが、アスファルトの隙間から成長することもあります。花は1cmに満たない小さなサイズで、背丈は20~100cmほどです。
北海道に咲く白い雑草って?
北海道に咲く白い雑草は、ノラニンジンと呼ばれる種類です。ヨーロッパ原産の植物であり、英名はワイルドキャロット(wild carrot)と呼ばれます。
ニンジンの原種であるなど諸説ありますが、いずれにしても栽培されていたノラニンジンが繁殖したものです。ヨーロッパでは一般的な雑草ですが、日本では北海道のみに生息しています。
白い花が咲きますが中心に濃い紫の小さな花が数個咲いており、暖かい場所や湿度が高い場所を嫌うことが特徴です。ノラニンジンの最大サイズはひと株2mにも達し、群生した姿は圧巻です。
雑草の除草方法
雑草を駆除する際には、熱湯を使用する方法が有効です。自然環境や人体にも悪影響を及ぼさず、すぐに駆除作業を行えます。雑草の量に合わせてお湯を沸かし、雑草に熱湯をかけるだけで簡単に駆除することが可能です。
熱湯では駆除しきれない場合には、除草剤を使用する方法も検討しましょう。除草剤は、雑草が気になる箇所に薬剤を撒くだけで雑草の駆除・対策を行えます。
除草剤には、除草剤を撒いた箇所や周辺の植物を全て枯らすタイプと、雑草のみを駆除するタイプがあるため、使い分けることがポイントです。
広範囲に雑草が生えている場合には、植物を全て枯らす除草剤、家庭菜園といった狭い範囲であれば雑草のみを枯らす除草剤など、用途によって使い分けましょう。
なお、近年開発された駆除剤は人体への影響が少ないですが、小さな子どもやペットが居る家庭では注意が必要です。
まとめ
白い花や紫の花を付ける雑草は、見た目が綺麗で可愛く、魅力的なものが多いです。一見雑草には見えないものもあるでしょう。公園や河原、芝生など、身近な場所に生えている雑草の種類を知っていると、白い花の雑草を観賞して楽しめます。
しかし、外来種も多いため、国内で増えすぎることが問題視されている種類もあるのです。芝生代わりに使用されている雑草や、私有地以外の場所の雑草は駆除できませんが、庭や住宅の敷地内に雑草が生えている場合には、駆除することも検討しましょう。