日本各地に生息する「たぬき」。里山付近はもちろんのこと、近年は環境問題により住宅街にも出没することが増え、目撃したことがある方も多いのではないでしょうか。
たぬきは見た目はかわいらしいものの、野生動物なので「農作物や住宅に被害が及ぶ危険性はない?」「近づいたり触ったりしても大丈夫?」「ケガをしている場合は保護したほうがいいの?」などいろいろなことが気になりますよね。
今回は、たぬきを見つけたらどうするべきか気になる素朴な疑問に答えていきます。
たぬきの生態や特徴は? たぬきってそもそもどんな生き物なの?
まずはじめに、たぬきの生態と特徴について見ていきましょう。
たぬきの生態・特徴1 ■大きさ・重さ
たぬきの標準的な大きさは体長約40cm~60cm、体重は約3kg~10kg程度です。季節による差が大きく、夏季にはイメージしているよりも痩せて見えます。ずんぐりとした体型で足はそれほど長くありません。
たぬきの生態・特徴2 ■食べ物
たぬきは典型的な雑食性で、果実や種子などの植物のほか、昆虫やミミズ、ネズミ、カエルなどの小動物も食べます。また、人間が出した残飯などの生ゴミやドッグフードなども食べ、都市部のたぬきの多くが生ゴミをあさっているようです。
たぬきの生態・特徴3 ■すみか
たぬきのおもな生息地は山林ですが、開発によって山林が減少したことなどにより、近年は市街地に出没することも増えています。
たぬきの生態・特徴4 ■行動
たぬきは基本的に夜行性で、人が寝ている間に活動し、人間が住む家の周辺までエサを探しにやってきます。単独または家族単位の群れで行動し、なわばりは持ちません。
また、たぬきは臆病で警戒心が強い生き物です。「たぬき寝入り」という言葉がありますが、ひどく驚いたときに一時的に気を失って相手を欺くことがあることも知られています。
たぬきの生態・特徴5 ■繁殖
たぬきは年に一回、5~7月ごろに4~6頭ほどを出産し、オスメスともに子育てに参加します。
たぬきとアライグマとの違い 本当にたぬき?アライグマとの見分け方
たぬきとアライグマは体格も体毛の色もよく似ているため、一見しただけでは見分けにくく見つけたときに混同する場合も多いです。たぬきとアライグマのそれぞれの容姿には、以下のような違いがあります。
【たぬきの容姿の特徴】
・顔‥‥目のまわりだけが黒い個体が多い
・手‥‥指が短い
・しっぽ‥‥短くてしま模様がない
【アライグマの容姿の特徴】
・顔‥‥目のまわりが帯状に黒く、白く長いひげがある
・手‥‥指が長い
・しっぽ‥‥太くて長く、黒いしま模様がある
たぬきとアライグマを見分ける際に、もっともわかりやすいのはしっぽのしま模様の有無。たぬきのしっぽにはしま模様がないため、見つけた生き物のしっぽにしま模様があればたぬきではなくアライグマです。
アライグマの駆除方法6つ!報奨金がある?業者依頼時の費用も | タスクル
https://taskle.jp/media/articles/494近年では住宅地に出現し、東京都23区にまで生息域を広げている「アライグマ」。あのなんとも愛くるしい顔をしたアライグマの正体は、立派な「害獣」です。わたしたちができるアライグマの駆除方法や、アライグマの駆除を業者に依頼した場合の相場についてまとめていきます。
たぬきを見つけたらどんな被害が考えられる? たぬきによって想定される4つの被害
たぬきは見た目もかわいらしく親しみやすい動物ですが、野生のたぬきは人間のくらしに大きな被害を与えるおそれがある害獣です。たぬきによる被害にどのようなものがあるか見ていきましょう。
たぬきによる被害1 ■農作物への被害
畑や家庭菜園を持っているような場合、注意したいのが農作物への被害。農林水産省が取りまとめた資料によると、イノシシやシカにくらべると被害額は少ないものの、たぬきによって毎年全国で1.3億円超の農作物被害が発生しています。
サツマイモやトウモロコシ、スイカ、ミカン、ブドウなど多くの野菜、果樹で被害が発生しますが、とくに糖分の多い野菜を好む傾向にあるようです。たぬきを見つけたら、畑などに近付けないよう対策をすることが大切です。
<参考>
農林水産省『野生鳥獣による農作物被害の推移(鳥獣種類別)』
たぬきによる被害2 ■その他の食害
たぬきの食害は、畑などで作物を育てている場合だけではありません。たぬきによって家畜の飼料や犬・猫などペットフードが食べられてしまうこともあるので注意しましょう。
また、民家や学校にたぬきが侵入し、水槽で飼っている魚や飼育小屋の鳥が食べられてしまうケースもあります。
そのほか、たぬきは人間が出した生ゴミも食べるため、ゴミがあさられるのも難点です。都市部ではたぬきがカラスのようにゴミ箱をひっくり返したり袋を破ったりして周囲にゴミをまき散らかすことも問題になっています。
たぬきによる被害3 ■フンによる環境被害
たぬきには決まった場所に何度もフンをする「ためフン」と呼ばれる習性があります。ただでさえ臭い雑食性のたぬきのフンが一カ所にまとまっているため、そのニオイは強烈です。
ためフンは仲間との情報伝達手段と言われていて、たぬきにとっては重要な行為。しかし、住宅街の一角や田畑の周辺でためフンが行われると、人間にとってはたまったものではありません。
また、たぬきは人間の家屋の天井裏などに侵入して定住してしまうことがありますが、家のなかにためフンをされると悪臭に悩まされるだけでなく天井が腐って崩れる危険性もあります。
たぬきによる被害4 ■健康への被害
野生のたぬきにはダニやノミが寄生していることがあります。ダニやノミは感染症を媒介することがあり、たぬきによる健康被害の可能性にも注意が必要です。
たとえば、たぬきに寄生していることがあるヒゼンダニは人畜共通の感染症「疥癬症(かいせんしょう)」という皮膚病を引き起こす原因になります。
また、たぬきが病原菌に感染していることもあり、犬や猫などのペットにジステンパーという致死率が高い病気などを感染させる危険があるのも怖い点です。
思わぬ病気にかからないよう、たぬきを見つけてもむやみに素手で触ったり、エサを与えたりしないようにしましょう。
たぬきを見つけたらどうする|捕獲・駆除したい場合1 被害対策1:自治体に相談
たぬきは生態系を構成する大切な野生動物として、「鳥獣保護管理法」によって保護されています。たぬきを見つけて被害が心配だからと許可なく捕獲や駆除をしてはいけません。法律違反にあたり罰則や罰金の対象になるおそれがあります。
たぬきの被害に悩み駆除や捕獲をしたい場合は、まずは住まいの自治体に相談してみましょう。捕獲には原則として狩猟免許が必要なため一般の方にはハードルが高いものの、申請して許可を得れば捕獲が可能になります。
また、自治体によっては小型の箱わななど駆除グッズの貸出をしてくれるケースもありますし、害獣駆除業者を紹介してくれる場合も多いです。
たぬきを見つけたらどうする|捕獲・駆除したい場合2 被害対策2:害獣駆除業者に依頼
市役所や保健所など、行政に相談してもたぬきの捕獲や駆除を実際に行ってくれることはほとんどありません。
たぬきの捕獲・駆除を自分で行う場合、噛みつかれてケガをしたりフン尿から感染症にかかったりするリスクが伴います。また、捕獲後のたぬきの処分や駆除後のフンの清掃・消毒方法にもついても考えなければなりません。
たぬきを捕獲・駆除したい場合は、害獣駆除専門の業者に駆除を依頼するのもひとつの手段です。害獣駆除業者では、たぬきの駆除だけでなくフンの撤去や屋根裏の殺菌消毒、侵入経路をふさぐなどの再発防止対策も同時に行ってくれます。
たぬきを見つけたらどうする|被害予防の方法 自分でできるたぬきの被害予防の5つの方法
たぬきの許可のない捕獲・駆除は鳥獣保護管理法で禁止されていますが、たぬきを傷つけずに追い払うことで被害を防止することはできます。
たぬきを見つけたら行いたい、自分でできる被害防止の方法について見ていきましょう。
自分でできるたぬきの被害予防の方法1 ■侵入経路をふさぐ
たぬきは登ることがあまり得意ではなく、力もそれほど強くありません。住宅や畑のまわりなど、たぬきに侵入されたくない場所は柵などで囲っておくと被害予防に役立ちます。
柵は噛み切られたり押し広げられたりしにくい金網フェンスを使用しましょう。飛び越えられないよう高さは1.5m以上あることが望ましいです。
また、電気柵も有効。体に触れると軽い感電が起こり、恐怖心を植え付けることでたぬきを近付けにくくなります。
そのほか、たぬきは7.5cmほどの小さなスキマも通れるため、たぬきを付近に見つけたら窓を開けっぱなしにしないことも大切です。屋根や壁などにスキマがある場合も、パテで埋めたり金網フェンスや防獣ネットでふさいでおきましょう。
自分でできるたぬきの被害予防の方法2 ■隠れる場所をなくす
たぬきは臆病な性格なので、身を隠せる場所がないと寄り付きにくくなります。たぬきの隠れ場所はおもに藪のなか。田畑のまわりなどエサ場になりそうな場所はこまめに草刈りをしてすっきりさせておきましょう。
自分でできるたぬきの被害予防の方法3 ■たぬきのエサになるものを除去する
たぬきのエサになるものが多いとたぬきが寄り付きやすくなります。畑や家庭菜園などでは野菜や果物はこまめに収穫し、できるだけ採り残しがないようにしましょう。
また、野菜くずや生ゴミなどを放置しないようにすることも大切です。たぬきは夜行性のため、夜にゴミを出しておくと荒らされる可能性が高まります。ゴミ出しの時間帯に注意し、防鳥ネットなども使用して対策をしましょう。
そのほか、家畜の飼料やペットフードなどもたぬきのエサになります。狙われないようきちんと管理することが大切です。
自分でできるたぬきの被害予防の方法4 ■忌避剤を設置する
たぬきが嫌うニオイの成分が入った忌避剤を使用してたぬきを追い払う方法もあります。
たぬき対策に使われる忌避剤は、おもに天敵とされるオオカミの尿の成分が入ったものです。たぬきの通り道に撒いたりペットボトルなどに入れて吊るしたりすることでたぬきが嫌がって寄り付きにくくなります。
自分でできるたぬきの被害予防の方法5 ■音・光で威嚇する
臆病なたぬきは大きな音がニガテです。ロケット花火や爆竹など音を使った撃退法も対策としてよく行われています。
また、たぬきは夜行性のため急激に強い光を当てるとびっくりして逃げることがあります。害獣撃退用ライトの設置なども対策として効果が期待できるでしょう。
たぬきを見つけたらどうする|ケガをしている場合 ケガをしているたぬきを見つけたら?
野生の生き物は人間が一度育ててしまうと自然界に戻るのが難しくなります。また、保護するためであっても捕まえようとすることで抵抗されてケガをするおそれもありますし、触ることで病気をうつされてしまう危険性も否定できません。
たぬきなどの野生動物が自然の中で死ぬことは生き物の大切な役割のひとつでもあります。ケガをしているたぬきを見つけても、むやみに触れずにそっとしておくのが基本です。
しかし、なかには神奈川県の「自然環境保全センター」や福岡県の「福岡市動物園」など、傷ついたり弱ったりした野生動物を保護している施設もあります。どうしても放っておけないという場合は地域の窓口等に相談してみるといいでしょう。
たぬきを見つけたらどうする|毛が抜けている場合 毛が抜けたたぬきを見つけたら?
見つけたたぬきが毛が抜けている場合、疥癬症という皮膚病に感染している可能性が考えられます。
疥癬症に感染すると免疫力が落ち数週間ほどで衰弱死することが多いですが、疥癬症は人間や犬、猫なども感染するため病気をうつされないよう注意が必要です。
エサになりそうなものは片付ける、ペットは放し飼いにしないなどたぬきとの接触を避ける対策をしましょう。
また、なかには東京都のように疥癬症の拡大とまん延防止のために疥癬症にかかった野生動物の回収事業をおこなっている自治体もあります。
たぬきを見つけたらどうする|子どもだけの場合 たぬきの子どもを見つけたら?
たぬきの親が見当たらず子どもだけがいるような場合も、人間が手出しをするのはあまり望ましくありません。親の帰りを待っているだけのことも多いため、そのままそっとしておきましょう。
たぬきは警戒心が強く人間が近くで見ていると出てこないことが多いです。心配でもその場を離れましょう。