
孤独死が起きた時大家さんはなにをする?
アパートや貸家などの賃貸で孤独死が起きた時、大家さんは状況を確認し遺族・連帯保証人に連絡しなければなりません。
その後は警察による検視に立ち会ったり、特殊清掃を依頼したりする必要があります。
本記事では、孤独死発覚後のタスクと、最後に賃貸借契約の解除を行うまでの流れを解説していきます。
本記事は大家さん向けの記事として、孤独死発見からの流れの他、早期発見のコツや孤独死保険についてなど、孤独死における費用負担を軽減するためのポイントを紹介していきます。
孤独死が起きた時誰に連絡を入れる?
孤独死の現場を発見した時は、まず警察に連絡を入れます。ご自身で生死の判断がつけられない状態なら、救急車でも構いません。
入居者が亡くなっていると分かった場合、相続人・連帯保証人に連絡を入れます。
相続人がいれば、後の対応をお任せすることができます。保証人がいる場合も、遺品の整理以外はお願いしてOKです。
ただし、孤独死は相続人がいない場合も多く、その場合は家庭裁判所に申請して誰かが相続財産管理人という相続人の代理人になる必要が出ます。
いない場合
部屋にあるものは入居者が亡くなった時点ですべて遺品になります。
例え壊れた家電などの不用品であっても、勝手に整理することはできませんので、注意しましょう。
孤独死が起きた時の大家の対応
孤独死が起きた時、ご遺族・相続人・連帯保証人のいずれにも連絡がつかない場合は、大家さんが主体になって対処していくことになります。連絡がつく場合でも、ご遺族や警察などにするべき対応は多々ありますので、1から説明していきます。
警察か救急車を呼んで確認する ■1.入居者の生死を確認する
孤独死は他の入居者や近所から連絡が来ることで発見されるパターンが多いです。
異常を知らせる連絡を受けたら、まずは電話で安否を確認しましょう。電話に出ない・インターフォンにも反応がないようでしたら、合鍵を使って室内に入り、入居者の状況を確認します。
ここでご遺体を発見したら必ず警察に連絡を入れ、生死の分からない場合は救急車を呼びましょう。
孤独死が発覚した際に注意することは、孤独死の現場は現場検証・家宅捜査が行われるということ。
お一人で亡くなった方は、事故・自殺・他殺・自然死の区別がつきません。死因を調べるために警察の指示に従い、事情聴取に応じる必要があります。
そのために、大家はできるだけ部屋に立ち入らず、物を動かさないようにしておきましょう。
遺品を整理する権利は相続人にしかありませんので、物を持ち出すのもNGです。
亡くなった事実と費用生産の必要を連絡する ■2.連帯保証人・ご遺族に連絡する
入居者の死亡が確認された後は、警察への通報の後に連帯保証人に連絡を入れます。ご遺族に連絡を入れるのも、このタイミングがおすすめです。
この時に連帯保証人に伝えるのは、下記の事項になります。
- 入居者が死亡されたこと
- 賃貸借契約の解除手続きをが必要があること
- 相続人による遺品整理が必要があること
- 特殊清掃による原状回復の必要があること
- 残りの家賃・原状回復費用の清算があること
連帯保証人はほとんどの場合が親族ですが、友人の場合もあります。この場合、費用を払ってくれない可能性もありますのでご遺族にも連絡をしておきましょう。
原状回復費用は、ご遺族に請求できた事例もあります。
連帯保証人・ご遺族に連絡した後に業者を選ぶ ■3.特殊清掃に依頼する
連帯保証人・ご遺族への連絡が終わったら、特殊清掃業者に現場の原状回復作業を依頼をしておきましょう。
発見まで間が空いていない場合、一見すれば「特殊清掃まではいらない気がする」と思うパターンがあります。
しかし、人が亡くなった段階で気づかぬ程度の異臭がしみついていたり、数日放置されたことで害虫が発生しているリスクがあります。
見た目は異常が無い場合でも、一度特殊清掃業者を呼んで、臭気・部屋の状況を確認してもらいましょう。
状況によっては部屋にいるだけで健康被害がありますので、プロにお任せしましょう。
特殊清掃業者の仕事内容や選び方についてはこちらの記事で解説しています。
基本的に大家さんはノータッチ ■4.ご遺族に遺体を引き渡す
警察の現場検証や検視が終わり、事件性が無いと判断されればご遺族のもとにご遺体が帰っていきます。
遺体の引き渡しは警察の担当ですので、大家さんは現場検証の立ち合い・事情聴取などを要求された時に協力すればOKです。
とはいえ、ご遺族と故人の関係性によっては遺体の引き渡しが拒否されることもあり得ます。
この時も、大家さんが焦る必要はありません。引き取り手のない遺体は、死亡した土地の自治体によって火葬・埋葬が行われることになっています。
相続人や相続財産管理人に解除の手続きを依頼する 5.賃貸借契約の解除を行う
入居者が亡くなっても、賃貸借契約は終了しません。相続人が新たな賃借人となります。
この場合、相続人に解除の解除の手続きをしてもらえばOKです。
相続人がいない場合は、連絡をとっていない親族がいないかを自治体が調べ終わるのを待ちましょう。親族が見つかれば、相続人になってもらえるパターンもあります。
とはいえ、親族の方が相続を放棄することも十分にあり得ます。
この場合、第三者に相続財産管理人となってもらって契約を解除する必要があります。家庭裁判所が選定する管理人であり、候補者がいなければ弁護士が選ばれるパターンが多いです。
相続人・ご遺族を集めて話し合う ■6.原状回復費用や家賃などの協議・請求を行う
孤独死のお部屋の原状回復費用や家賃は、故人の保険金・預金で払ってもらうことになります。
それでは足りない場合、請求先は原則は相続人です。
とはいえ、ご遺族は家族を亡くした立場になります。その心境に配慮し、キツイ言葉やしつこい連絡は避けましょう。
逆に「縁を切っていたのに今更関わりたくない」というパターンもあり、連絡そのものがご遺族の負担になることもあります。
どちらの場合も、言葉と連絡頻度には気をつけていきましょう。
亡くなった入居者に相続人・ご家族がいない場合は、大家さんや管理会社が家賃を負担する流れになります。
この負担を減らすためには、後ほど紹介する孤独死保険への加入がおすすめです。
遺品の整理・管理ができるのは相続人のみ ■7.遺品の引き渡しを行う
原状回復や家賃の請求終わったら、遺品の整理をご遺族にお願いすることになります。
お部屋の状況によっては特殊清掃業者が行い、ご遺族が立ち会うといった形になります。
いずれの場合も遺品の所有権は相続人にあります。大家さんが整理することはできませんので、注意してください。
大家さんが孤独死に対応する際の注意点
お持ちの賃貸で孤独死が起きた時は、ご遺族との連絡や法的な決まりごとによく気をつけていく必要があります。ここでは、トラブルの事例と注意点を紹介しておきます。
故人との関係性に関わらず連絡は慎重に ■ご遺族・保証人への連絡は慎重に行う
孤独死が発生した時、ご遺族・保証人に連絡を取る機会は多いです。死亡を知らせる以外にも、遺品整理や諸費用請求など、ご遺族側にとっても時間的・精神的な負担が大きい連絡が多いのも特徴です。
孤独死は突然起きることなので、誰にも心構えができていないことはよくあります。「疎遠だったのに家賃を請求されても」「相続放棄をするから勝手にやってほしい」等、非協力的なご遺族もいれば「一人で死なせてしまった」と落ち込むご遺族もいらっしゃいます。
どんな場合でも、費用面について必要以上に急かすのはNG。冷静に対応していきましょう。
相続人がいない場合も勝手に整理はNG ■勝手に遺品を整理するのは違法行為
特殊清掃業者による原状回復作業が終わったら、ご遺族に遺品を引き渡すことになります。状況によっては特殊清掃業者が遺品の整理・処分をするパターンもあります。
この時注意したいのは、大家さんにが遺品を整理するのは違法だということ。遺品を整理できるのは相続人だけになっています。
相続人がいない場合は、家庭裁判所にお願いして相続財産管理人を選任する必要があります。
孤独死による原状回復費用を安く抑えるポイント
孤独死による原状回復費用は、民法に照らせば入居者の財産や相続人の負担になるもの。とはいえ、孤独死ですので大家さんが負担するパターンは少なくありません。
具体的には、入居者側に請求できる最小損害額は5,400円で最大損害額は1,528,329円。平均損害額は389,594円となっています。この範囲で納めるために、原状回復費用を安く抑えるコツを解説していきます。
放置時間・季節などで遺体の状況は悪化する 早くご遺体を発見する
孤独死されたご遺体は腐敗が進んでしまいます。発見場所や季節、放置時間によって状況は変化しますが、早く発見できれば確実に清掃箇所を減らすことができます。
普段から挨拶する習慣をつけるなど、早めに異変に気付けるようにしておきましょう。なお、孤独死で起きる異変は下記の記事で解説しているので、ご参照ください。

孤独死が起きた部屋の特徴は?発見箇所・清掃箇所はどこ? | タスクル
https://taskle.jp/media/articles/1769/孤独死が起きた部屋は、家族・発見者・大家さんのいずれかが特殊清掃を呼ぶことになります。本記事では部屋の特徴や清掃箇所、孤独死された方の生活習慣について解説していきます。「これからお部屋を貸すけど、孤独死される方がいたらどうしよう」と不安な大家さんに向けた記事になっているので、ぜひご覧ください。
家賃や回覧板を手渡しにしたり、外部の見守りサービスへの加入することも効果的です。
孤独死による大家さんの費用負担をカバー ■孤独死保険に入る
孤独死が発生した際には、連帯保証人や相続人と原状回復費用を協議・清算していきます。
原状回復費用は本来借主負担になっていますが、孤独死は通常住んでいても起こり得るできごとであり、費用のすべてを借主側に請求できるのは極めて稀です。
相続人が遺産を放棄するパターンや、そもそも相続人が見つからないパターンも多々あります。
そうなれば、諸々の損害を負担するのは大家さんになります。これは誰を責めてこ仕方ないことであり、損害に対する備えを持つしかありません。
孤独死保険に加入しておけば、原状回復費用・遺品整理費用・家賃の損失分をカバーしてくれます。ご自分の物件にあった補償内容を探しましょう。
火災保険に加入する際、家主費用特約をつけることでも同様の効果を見込めます。
詳しくは下記の記事でも解説しているので、孤独死保険を選ぶ際にはご覧ください。

孤独死の原状回復費用は誰が払う?相場と見積り方法3つ | タスクル
https://taskle.jp/media/articles/1774孤独死の原状回復費用に関して、わからないこと不安に思うこと、は多いと思います。「孤独死の現状復旧費用は誰が負担するのか?」「費用相場はいくらぐらいかかるのか?」そして、「見積もり方法はどうするのか?」など、孤独死の現状復旧費用に関して、保険適用ケースや見積もりのコツなどを踏まえて詳しく解説します。
孤独死発生時の大家さんの対応に関してよくある質問
■すぐに遺体が見つかれば特殊清掃はいらない?
遺体の状況に関わらず、特殊清掃業者に依頼した方が安心です。
気づかないレベルの異臭が残っているかもしれないので、一度特殊清掃を呼んで臭気測定を行ってもらいましょう。数日でもゴミが放置されることで、害虫被害が発生している可能性もあります。
■孤独死の原状回復は誰負担?
基本的には入居者側の負担です。故人の保険金などで間に合うパターンもあります。その他、連帯保証人・相続人・ご遺族に支払いの義務がありますが、原状回復費用のすべてを入居者側が払うというわけではありません。
賃貸で孤独死が起きた際は、大家さんが事前に「原状回復費用を請求します」と入居者側に連絡し、特殊清掃後に協議で費用負担を決める流れが一般的です。
■遺体の引き取りを拒否されたらどうすればいい?
亡くなった地区の自治体が他の親族を探してくれます。この間、ご遺体は警察・葬儀社に安置されています。見つからない場合は、自治体が火葬・埋葬を行うので、大家さんがやらなければいけないことはありません。
「引き取り手がいないなら気の毒だから」と大家さんが葬儀を行う事例自体はあるようです。
■孤独死の際の遺品整理は誰がするの?
遺品整理を行えるのは相続人のみです。大家さんが勝手にすることはできないので注意しましょう。
■孤独死の告知義務はある?
ご遺体の状況・死因によります。自殺・殺人・火災は告知義務があると考えられています。自然死でも発見まで長い時間がかかり、遺体の損傷が激しかった場合も告知した方が安全です。詳しくは弁護士に相談しましょう。