「お仏壇」は、家具のように右から左にヒョイヒョイと動かしてはいけません。
元々、仏壇は家の決まった場所にずっと置いておくべきものなので、引越しでの移動は考えて作られてはいないのです。
引越しの時に「お仏壇」を現在住んでいる家から、引越し先の家に移動させる場合、しなくてはいけないことがあります。
それは「魂抜き」と「魂入れ」と呼ばれるもので、現在の家で「魂抜き」を行い、引っ越してから新しい家のお仏壇に「魂入れ」を行います。
それぞれの宗派によって「魂抜き」と「魂入れ」の呼び方は異なり、「遷座法要(せんざほうよう)」や「遷仏法要(せんぶつほうよう)」と呼ぶ宗派もありますし、「閉眼法要(へいがんほうよう)」や「開眼法要(かいがんほうよう)」と呼ぶ宗派もあります。
ここでは説明のため、「魂抜き」と「魂入れ」と呼ばせていただきます。
お仏壇の引越しを行うためには、まず自分の家の宗派が何であるかを確認しましょう。
自分の家だけではわからなかったら、お墓のあるお寺が何宗かを調べてみると良いでしょう。
それでは、具合的な仏壇の引越方法を見ていきましょう。
1 仏壇とドアのサイズを測る

まずは仏壇のサイズの採寸をしましょう。
普段、お仏壇は押入れの横などにあって、奥行きについては意識していないかもしれませんが、意外と奥行きもあるものです。
先祖代々から伝わる立派なお仏壇の場合、冷蔵庫やタンス以上にサイズが大きくて動かせないものもあります。
家によっては、そのような大きなサイズのお仏壇が二階にあるケースも見られ、仏壇を移動させるよりも、新居に新しくお仏壇を作ったほうが良い場合もあります。
部屋のドアのサイズよりもお仏壇のほうが大きかったり、古くなっていて動かすだけで壊れてしまいそうな場合には、今あるお仏壇を新居に持っていくのではなく、仏様に新居で新しいお仏壇に入っていただくという方法も考えてみましょう。
また、新居のドアのサイズも測っておきましょう。
大抵が、押入れの場所を改造してお仏壇が入る場所を作ることになりますが、サイズによって押入れの中板を使用できる場合と、押入れの中板も外さないと入らない場合があります。
どのように新居に仏壇を入れるかも、よく考えてから引越し計画を立てましょう。
2 仏壇の移動方法を決める

■自分でやる場合
お仏壇の引越しで、一番良いのが家族自身で移動させることです。
「魂抜き」と「魂入れ」さえ、家の宗派のお寺のご住職に行っていただければ、自分たちで行っても失礼にはなりません。
引越し業者では、荷物の持ち運びに慣れているとは言っても、仏様とは知り合いではないので気持ちはどうしても入りにくいものです。
もしも引越し業者がお仏壇を壊してしまった場合、家具が壊されてしまったケースとは別に、家族の気持ちも後味悪いものになってしまいます。
せっかく新しい家に住むのに、幸先が悪いスタートにもなりかねません。
うっかり落としたり、ぶつけたりする可能性は、自分たちで移動させた場合もあります。
そのリスクをどう考えるかは、仏壇のサイズや重さとあわせてご家族で相談してください。
自分たちでお仏壇の引越しを行う場合は、古い家の一番最後にお仏壇を出すようにしましょう。
また、新しい家には一番最初にお仏壇を入れてください。
仏壇の移動方法としては、乗用車の助手席に固定させるのが一般的です。
助手席に置くだけでは、急ブレーキをかけた時に前に倒れてしまいますので、助手席とお仏壇はヒモでしばっておきましょう。
その上でシートベルトをすれば万全です。
また、ワゴンの座席を倒して、立てた状態でまっすぐ入れられれば運びやすくなります。
仏壇を乗用車の後ろのシートに寝かさないと入らない場合は、破損の危険性がありますので専門家に頼むことをオススメします。
■引越し業者にやってもらう場合
引越し業者は何件もの引越しを行っていますので、お仏壇の引越しにも慣れています。
他の引越し荷物に加えてお仏壇も運んでもらう場合、1万円から2万円ほど料金が加算されるのが相場です。
お仏壇の引越しに慣れていない業者の場合は、高く見積もる傾向があるので注意しましょう。
1万円から2万円以上に料金がかかると言われた場合は理由を聞くか、自分でやるか仏具店に頼んだほうが安く済むかもしれません。
引越しのシミュレーションで、あらかじめ「お仏壇」という項目がある業者もありますし、オプションでお仏壇を選ぶ場合もあります。
■仏具店にやってもらう場合
仏具店によっては、お仏壇の引越しだけを専門に行なってくれる業者もあります。
自分の店のエリア内であれば、取り外して移動させるだけでなく、引っ越した先への設置も行ってもらえます。
仏具店に仏壇の移動を頼んだ場合、近距離でも最低2名のスタッフが必要なので3万円は費用としてかかります。
引っ越す先が、同じ都道府県なのか隣の都道府県なのか、距離によっても値段が違います。
また、お仏壇を移動させる時に必要なスタッフの数によっても料金が変わってきます。
2階にある場合など、クレーンなどの特殊車両が必要になる場合は、オプション料金がかかります。
前のお仏壇も古くなったし、引越しを機会にご本尊様にも新しいお仏壇に引っ越していただきたいという場合も、仏具店に相談すると良いでしょう。
3 仏壇を移動させる時のやってはいけない注意事項

■床や畳の上に直置きしない
台の上に乗っていたり、高い場所にあったお仏壇を、床や畳の上に直接置いてはいけません。
魂抜きをした後であっても、引っ越した先は御本尊様が再び入られる場所になるので、運ぶ人が上から見下げてしまわないように注意しましょう。
■横にして運ぶと壊れる場合も
お仏壇は縦長なので、ついつい横倒しにして運んでしまいたくなります。
しかし、お仏壇の横板や裏板は、あまり丈夫にはできていません。
横にして運ぶと、斜めの力が入ってお仏壇が壊れる原因ともなりかねません。
また、横にしたままトラックで運ぶのも破損の危険があります。
移動させる時も縦のまま平行移動させるようにしてください。
お仏壇を横置きにして、横板の上に物を乗せてしまうのも大変危険です。
引越し業者がどのように運ぶか、当日チェックするようにしてください。
■引き出しは全て奥までチェックを
毎日お仏壇を見ていても、中の細かい引き出しまでは開けて見ることもあまり無いでしょう。
中から手紙や家系図、写真などが出てくる場合もあります。
御本尊様や仏具、写真といった見えるものだけに気を取られがちですが、引き出しの中も調べておきましょう。
手前の引き出しの奥に、隠し引出しがある仏壇もあります。
昔の通帳や証書、現金や貴金属類といった大切なものが入っているかもしれません。
最近では粗大ゴミの収集業者が、中に大切なものがあるのに気がついたというケースも見られます。
昔の仏壇ほど、隠し扉や隠し引き出しがあるので、家族全員でチェックすることをオススメします。
4 魂抜きをしていただく

どの宗派の仏壇でも一番目立って広く取られているスペースに、「ご本尊」が祀ってあります。
彫刻の仏像や、掛け軸はど、宗派によってさまざまですが、大抵一番上の段にご本尊様がおられます。
それぞれの仏壇の魂が、このご本尊様に入っているため、引越しのときに一度お仏壇の外に出ていただくのです。
そのための法要が必要なので、これは自分ではできないため、お寺のご住職にお願いするというわけです。
「魂抜き」と「魂入れ」は、自分の家の宗派に沿った方法で行います。
お仏壇の中に入っているものや、お墓があるお寺で自分の家の宗派がわかったら、普段からお世話になっているお寺のご住職に「魂抜き」をしていただきましょう。
まったくお世話になっているお寺もわからないようであれば、同じ宗派のお寺に相談してみるとアドバイスしてもらえます。
「魂抜き」や「魂入れ」の時にお支払するお布施ですが、1万から5万円程度が平均的です。
お布施の他に、家とお寺との往復の交通費や、お茶代なども一緒にお支払します。
いくらか心配なようであれば、直接お寺に伺うと答えてくれる場合もありますので、不安なようであれば聞いてみると良いでしょう。
魂抜きにかかる時間ですが、前後のお茶の時間もあわせて1時間程度になります。
お寺にたのんで、自分の都合の良い日時にすぐに来ていただけるわけではないので、前もって予約をしておきましょう。