アナグマが近年、害獣として注目されるようになりました。
農家が育てた農作物を荒らしたり、家の物置小屋などに入り込んだり、一般家庭の菜園や花壇を荒らす行為が目立つようになってきたためです。
スイカやミカン、サクランボなどはアナグマの大好物なので、収穫の時期に録画できる監視用トレイルカメラを設置しておくと、アナグマがやって来るのを確認することができます。
タヌキに見た目は似ているので間違えられやすいのですが、あなたの菜園や庭で悪さをしているのはもしかしたらアナグマかもしれません。
ここでは、穴掘りが得意な動物「アナグマ」の駆除方法について調べてみました。
アナグマの生態
アナグマは、「穴」グマという名前のとおり、大きな穴を掘って住み家にしています。
1つの穴に大家族で住む習性があるので、一匹見つけたら複数匹いると思ったほうが良いでしょう。
アナグマの穴に時々タヌキが入って休んでいることもあるため、よくタヌキとアナグマは間違えられるのです。
アナグマは大きさとしてはタヌキやハクビシンに似ていますが、「イタチ科」の動物です。
その昔は「ムジナ(狢・貉)」とも言われていました。
日本だけでなく、ヨーロッパやアジアの温帯地域に生息していて、ヨーロッパアナグマ、アジアアナグマ、ニホンアナグマなどの種類がいます。
ヨーロッパアナグマは顔の白と黒の色分けがハッキリしています。
一方、ニホンアナグマは目のまわりは黒いダイヤ型ですが、ヨーロッパアナグマのように白と黒にハッキリと色は分かれていません。
(上)ヨーロッパアナグマ、(中)アジアアナグマ、(下)ニホンアナグマ
日本では、アナグマは北海道以外、どこにでも存在しています。
体重は小さいものは5キロ、大きなものは15キロ前後あります。
尾は模様は無く、10センチから15センチ程度で、太く短い形をしています。
3月から4月にカップルが誕生し、次の年の3月から4月にかけて子どもが生まれます。
一度に1頭から3頭を産み、親離れするまで1年から2年程度かかります。
同じパターンの道を歩くことが知られており、一度気に入った場所は自分の通り道にします。
自分の家の庭や畑がアナグマの散歩コースや、食事コースにならないよう、気をつけなくてはいけません。
アナグマは何でも食べます。
アナグマは土の中にいる昆虫や、果物、木の実、ミミズやカエル、モグラなどの動物などを食べる雑食性の動物です。
目はあまりよくないので、人間の前にはあまり姿を見せずに夜中ゴソゴソと動き回ります。
ニホンアナグマ
アナグマの駆除対策方法7選
ヨーロッパアナグマ
■1 箱わなにアナグマの好きなものを入れて駆除する
アナグマは夜行性なので、昼間に捕まえることは困難です。
そのため、箱ワナを仕掛けておいて、夜歩いている時に捕獲できるようにします。
1頭の縄張りは1平方キロメートルから4平方キロメートルで、その中に自分の決めたルートが何通りかあります。
そのルート上に箱ワナをしかければ良いのですが、どこが通り道かわからなければ被害にあった場所に置くようにします。
箱ワナに入れるものとしては、アナグマの好きな「バター」「ピーナッツ」「トウモロコシ」「スイカ」などがオススメです。
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箱ワナで捕獲する場合は、狩猟免許や自治体への許可申請が必要です。
日本にいる鳥や動物は「鳥獣保護法」という法律で守られているので、勝手に捕まえることができないからです。
しかし、自治体ではアナグマを有害鳥獣に指定している場合がありますので、お住いの自治体に問い合わせてみましょう。
■2 電気柵で駆除する
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電気柵は、害獣に入ってほしくない場所を、ぐるりと囲んで守るための道具です。
基本的に、壁のように線で設置するのではなく、周辺を囲うようにしてください。
地面に4メートルおきに支柱を立てて、電線をぐるっと固定します。
電線は電気柵の本体とつなげておきます。
乾電池や車用のバッテリーで動くものが販売されていますので、野菜や果物の収穫前に設置してください。
アナグマの場合は、電気柵の下をすり抜けてしまわないように、低めの位置で20センチおきに3箇所ほど電線を設置すれば良いでしょう。
電気柵であることを示す「危険表示版」も、忘れずに設置してください。
■3 アニマル・ピー、ウルフ・ピーで駆除する
アナグマやハリネズミには天敵がほとんどいないのですが、コヨーテなどオオカミ類が苦手と言われています。
動物はウンチやオシッコで自分の縄張りを主張するので、アナグマの行動範囲内にオオカミのオシッコのニオイがついていればアナグマは寄り付かなくなります。
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近年注目されている「アニマルピー」もしくは「ウルフピー」は、中身はオオカミのオシッコです。
オオカミのオシッコを小分けに容器に入れ、数メートルおきにぶら下げておくのです。
雨が容器の中に入ってしまうと、効き目が弱くなってしまうので、雨粒よけがあるもののほうが日本の気候に適しています。
■4 犬を飼って駆除する
アナグマはオオカミが嫌いなので、同じイヌ科の動物を番犬として飼っておくのも1つの方法です。
「ダックスフント」は、元はドイツ語でアナグマを示す「ダックス」と、イヌを示す「フント」という意味で、巣穴の中にいるアナグマを狩るための猟犬として、手足が短く改良されました。
アナグマだけでなく、ネズミやアナウサギの猟でも活躍していました。
普通のダックスフントは、もう猟犬として訓練されていないのでアナグマを狩ることは難しくなりました。
しかし野生動物は自分に害を与えそうな他の動物との接触はなるべくしたくないので、犬を飼うだけでも効果がありそうですね。
■5 ミント系のニオイで駆除する
殺虫剤のような強い薬は使いたくない人向けの駆除方法は、「ミントの香り」です。
アナグマはネコ目イタチ科なので、ネコが嫌いなものはアナグマも得意ではありません。
人間にはいい匂いと感じられるハッカやミント、レモンなどの香りはネコは苦手なので、それらの香りを撒いておくと有効です。
害獣スプレーの多くは、ハッカの香りが入っています。
アナグマ駆除専用のスプレーは販売されていませんが、イカリ消毒の「コウモリ忌避スプレー」や、アース製薬の「イヌ・ネコのみはり番スプレー」には、ハッカの香りが入っています。
アナグマの通り道にスプレーしておくことで、通りにくい道にしていきましょう。
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■6 ゴミはしっかりとフタをする
人間にとっては生ゴミでも、野生動物にとっては美味しいごちそうです。
一度、ゴミ箱の中には美味しいごちそうが入っていることを覚えた野生動物は、何度も同じことを繰り返します。
ゴミ箱を倒したり、フタを開けたりと、美味しいもののためには手段を選びません。
アナグマは、コヨーテと戦うほどの鋭い爪の持ち主です。
その爪でバリバリ壊されそうなゴミ箱であれば、もっと丈夫なものに取り替えましょう。
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■7 野菜や果物は外に置かない
誰しも美味しいものは大好きですが、野生動物も美味しいものには目がありません。
熟して食べられなくなった野菜や果物でも、アナグマにとってはごちそうです。
形が小さすぎたり変形していたりして人間は食べないものも、そのまま放置しているとアナグマにエサをやっているのと同じことになってしまいます。
野生動物が食べ物にしそうな野菜の茎や葉は、生ごみ処理機やコンポストで処理して、肥料にしてしまいましょう。
アナグマを捕獲器でつかまえる時の注意
ヨーロッパアナグマ
畑のイチゴを食い荒らしたり、好き勝手に菜園を荒らすアナグマですが、鳥獣保護管理法で守られているので勝手に捕まえたり殺したりすることはできません。
また、アライグマなどの特定外来生物でもありませんので、勝手に駆除することはできないのです。
アナグマのような野生動物を捕獲するには、狩猟免許もしくは市町村長への許可申請が必要です。
【狩猟】としてアナグマを箱ワナで捕獲する場合は、その都度の申請はいりませんが、11月15日から2月15日の狩猟期間にしか捕獲できません。
【有害捕獲】としてアナグマをワナで捕獲する場合は、農林水産物への被害がある地域に限られます。
また、これから被害が出そうな場所ではなく、既に被害が出ている地域でないと許可がおりません。
許可がおりれば、3ヶ月の間もしくはそれ以下の期間、箱ワナを設置することができます。
近年は、捕まえて殺すのではなく、共生する方法を探す方法が選ばれる傾向です。
箱ワナではなく、電気柵などで農作物を守るほうが現実的でしょう。
ハクビシンとアライグマ、タヌキ、アナグマの見分け方と対策の違い
ヨーロッパアナグマ
アナグマはイタチ科、タヌキはイヌ科に属しています。
ハクビシンはジャコウネコ科、アライグマはアライグマ科です。
日本にいる【アナグマ】は、目のまわりのダイヤ型の黒い模様が特徴です。
体の割に顔も耳も小さいのですが、鼻は黒く大きい形をしています。
【アライグマ】は、尻尾にシマシマ模様があるのが特徴です。
また、顔は耳のフチが白く、頬から目にかけての黒い模様が左右につながって見えます。
【ハクビシン】は、顔の真ん中に白い筋がとおっていて、鼻がピンク色や黒色をしています。
ひょろっとして細長く、尻尾が長いのが特徴です。
【タヌキ】は、鼻先が犬のように長くなっています。
目の周りの黒い模様はつながっていません。
行動ですが、【タヌキ】や【アナグマ】は、木に登ったりしません。
ひたすら地面を歩いたり、土を掘ったりしています。
【ハクビシン】と【アライグマ】は、木によじ登ったりフェンスを登ったりします。
幻のジビエ料理として人気のアナグマ肉
※ 画像はイメージです
実は、アナグマの肉は大変美味しいことで昔から知られています。
「ムジナ汁」は、猟師の間でも人気の料理です。
知る人ぞ知る、アナグマ肉をすき焼きにして食べさせてくれるお店が渋谷にあるほどです。
また、最近はシカが増えたことで、「ジビエ料理」に興味がある人も増えました。
ジビエとは、フランス語で、狩りで取った鳥や獣の肉のことを言います。
イノシシの肉や、ウサギの肉、キジやカモといた鳥の肉などもジビエです。
アナグマの肉は幻のジビエ料理とも呼ばれ、西洋料理の食材としても人気があります。
狩猟免許を持っている方の中には、アナグマを取った場合に料理店に肉として売ったり、捌いて自分で食べたりしている方もいます。
しかし、狩猟免許を持っていても、アナグマをさばいてジビエ肉にするのは注意が必要です。
スーパーで売っている豚肉や鶏肉は管理された環境で育った動物なので、病気などの心配はありませんが、野生動物は寄生虫やウイルスを持っている可能性があります。
ウイルスによっては肝炎になる危険性もありますので、十分注意してください。
よく加熱して食べるようにしてください。
また、アナグマが直前に食べたものによって、肉のニオイも変わってきます。
果物を食べていればフルーティーな香りですが、直前にニオイのきつい動物などを食べた後だとニオイがキツくて美味しく感じられなくなります。
アナグマの皮は、ブラシや筆として使われています。
特に理髪店などで、ひげ剃り用のクリームを泡立てるブラシはアナグマのものがよく使われています。
駆除をたのんだ時の相場と内容
ヨーロッパアナグマ
うちの畑や庭に何か動物が来て、野菜や果物を食い散らかしている!
ネズミよりも大きそうということまではわかっても、何の動物かわからないというケースは多く見られます。
アナグマの駆除の相場は、全てを含めて合計で5万円から8万5,000円ほどが平均的な価格になります。
害獣を駆除する業者は、駆除方法によって料金が変わりますので、動物によっては料金はほとんど差はありません。
アナグマなのか、ハクビシンなのか、アライグマもしくはイタチなのか、動物の種類がわからなくても、とりあえず害獣駆除業者に調査を依頼してみましょう。
その日にすぐ追い出せる場合もありますが、場合によってはアナグマが家の外に出ていったタイミングの場合もあります。
もし留守の場合は再び家の中や敷地内に入ってこられないように、侵入口を金網などでふさぎます。
ふさぐ穴の数が多いほど、料金はかかりますが、だいたい1箇所につき数千円です。
また、屋根裏や物置にアナグマが糞尿をしている場合もあります。
野生動物の糞尿は強烈な臭さがあるので、早く取り除かないとシミになったりニオイが取れなかったりします。
最後に、アナグマがいた場所や、糞尿があった場所を殺菌消毒して終わります。
箱ワナを仕込んだ場合は、アナグマもしくは他の動物がひっかかたら家の人が業者に連絡をするのか、業者に定期的にワナにかかっていないかチェックしに来てもらうのかによって料金も違ってきます。
鳥獣保護法がありますので、個人ではワナは設置できないので注意してください。
まとめ
アナグマなど野生動物の駆除については、自治体でも被害状況を集約しています。
アナグマの被害で困ったら、自治体の環境局や環境創造局といった場所に駆除方法を聞いてみましょう。
アナグマが有害捕獲動物に指定されている場所であれば、箱ワナをかしてくれる場合もあります。
イチゴやスイカの他にも、とうもろこしや栗、柿などもよく食べるので、収穫前には気をつけましょう。