アクリル素材は他の洗濯物と一緒に洗ってしまって、靴下やセーターが伸びてしまったら、もう着られなくなってしまいます。アクリル素材は全体的に均等には伸縮せず、元の形とタテヨコの比率が大きく変わってしまうほど一方向に伸縮してしまうのです。
でも、一度来て汗をかいたアクリル素材の靴下やセーターは洗濯しないと雑菌が増えて不潔ですよね。ここでは洗濯が難しいアクリル素材の洗い方を、わかりかすく解説します。
アクリル素材が伸びたり縮んだりしない洗濯方法11ステップ
■1 アクリル素材の洗濯表示を見る
服がアクリルかどうか知りたい時は、「洗濯表示」を見ましょう。アクリル100%、アクリル50%などと書かれています。
洗えるアクリルか洗えないアクリルかの区別は、服の加工方法で違います。特殊加工をしているアクリルは「手洗い可能」「水洗い不可」などのマークがついています。
アクリルは化学繊維でできているので、天然の毛であるウール(羊毛)よりも洗いやすいと思われがちですが、アクリルは水に濡らすと伸びる性質があるので注意してください。
■2 洗えるアクリル素材の洗濯表示はコレ
洗濯できるマークです。
水、もしくはお湯を使っての洗濯ができるというマークです。洗濯機もしくは手洗いで洗うことができます。
洗濯する時の温度に制限がある場合は、洗濯オケの中に30や40といった数字が書いてあります。30であれば30度以下、40であれば40度以下のぬるま湯で洗ってくださいという意味です。
手洗いで洗濯できるマークです。
水で洗濯はできるけれども、手洗いのみで洗濯機は使用してはいけないというマークです。数字は図には書かれていませんが、水温は40度以下で洗ってください。
■3 アクリル素材を洗う前に服を採寸しておく
洗濯する前に、どうして服を採寸するのか不思議に思いますよね。アクリルは洗うと伸びたり縮んだりする性質があるので、万が一縮んでしまった時にはアイロンの蒸気をあてながら、ゆっくり叩いて伸ばす必要があるからです。
伸びてしまった場合は縮める方法はありませんが、縮んでしまった時には引っ張らずに叩きながら伸ばす事ができます。
<採寸について>
セーターの場合、採寸するのは
① 右の肩と左の肩の間の肩幅
② 肩から袖までの腕の長さ
③ 背骨側の首の付け根から、服の一番スソまで
④ 袖口の直径
の4ヶ所を測っておけば良いでしょう。
■4 アクリル素材についたシミや血液汚れなどは前処理を
家庭で洗濯しても大丈夫なアクリルの場合、もしもシミや血液汚れなどがあれば前もって処理をしておきましょう。全体的に洗濯する前に、汚れた部分にだけ【おしゃれ着洗い用中性洗剤】をつけておきましょう。
ライオンのアクロン、花王のエマールといった洗剤が代表的な【おしゃれ着洗い用中性洗剤】になります。
アクリル繊維の中にまで汚れが入ってしまっている場合には、洗剤の原液をシミや汚れの部分につけた後に手で軽くたたきましょう。ゴシゴシもんだり、こすったりしてしまうと、アクリル繊維にダメージを与えてしまいます。
血液の汚れは、花王ワイドハイターのような液体酸素系漂白剤をつけておくのも良いでしょう。
■5 アクリル素材の服をネットに入れる
前処理ができたら、洗濯機でアクリルの服やマフラー、手袋を洗うために【洗濯ネット】に入れましょう。そのまま洗濯機に入れてしまうと、洗濯す時に力が強くかかりすぎて毛玉ができたり伸び過ぎたりしてしまいます。
洗濯ネットは『服を折りたたんだ時にピッタリの大きさ』のネットを選びましょう。洗濯ネットがだいぶ余った状態だと、洗っている最中にネットの中で服が右に左に移動してしまいますアクリルは羊毛以上に毛玉ができやすいのです。
洗濯中に服がネットの中で動くと、毛玉ができる原因となってしまうので注意してください。
より綺麗にアクリルを洗濯するには、洗濯ネットに入れる時に裏返しにして入れると良いでしょう。袖口や襟、スソなどが伸びたり毛玉ができたりするのを防ぎたい場合は、服の中に入れて洗ってください。
■6 アクリル素材は水温40度以下のぬるま湯で洗う
特に洗濯表示に水温の指示が無ければ、40度以下のぬるま湯で洗濯しましょう。水よりも、少しぬるめのお湯で洗ったほうが、汚れは落ちやすくなります。ウールやカシミヤが混ざっている場合は、あまり冷たい水につけてしまうと縮んでしまうので注意しましょう。
冷たすぎず、暖か過ぎない水温で洗うのがベストです。
■7 アクリル素材は洗濯機ならドライコースで洗う
洗濯機のコースですが、丁寧に洗う「ドライコース」を選びましょう。機械によっては「弱」となっていたり、「手洗い」と書かれている場合もあります。「手洗い」と「ドライコース」の二つがある場合は、より優しく洗ってくれる「ドライコース」を選んでください。
「ドライコース」は、通常の洗濯コースと比べて水があまり撹拌されません。細かい振動を与えて洗うようになっているので、服にダメージを与えないのです。洗濯機を見ていると、回転しないので浸け置き洗いをしているように見えますが、洗濯槽の中では細かく動いています。
■8 アクリル素材は手洗いなら3分以内で洗う
洗う時間ですが、手洗いなら水につけてからすすぎ洗いが終了するまでの動作を、「3分間」で行うようにするとスソや袖口の伸びや、毛玉のダメージを少なくすることができます。
洗濯機ではなく、手洗いでアクリルを洗濯する場合は、なるべく手早く済ませてください。洗濯機で洗える表示があっても、購入して初めて洗う場合は手洗いのほうが良いでしょう。もし手洗いであれば、色落ちしたり縮んだりしてきたら、すぐに洗濯をストップすることができるからです。
【おしゃれ着洗い用中性洗剤】を、40度以下のぬるま湯に入れて洗濯液を作っておきます。ゴシゴシもんだり、こすったりするとアクリルに毛玉ができてしまうので、ゆっくり押し洗いするようにしましょう。
全体に洗濯液が行き渡って洗い終わったら、水ですすぎます。繊維の中に洗剤が残っていると、肌荒れなどの原因にもなりますので流水で洗うと良いでしょう。お好みで最後に柔軟剤を入れると、洗い上がりがふっくらします。
■9 アクリル素材の脱水は、タオルに挟むか脱水機で30秒
アクリルの服やマフラー、手袋などは、洗濯機で脱水するよりも、大きなタオルに挟んで水を切るほうが型くずれしません。タオルのように絞ってしまうと、せっかく優しく洗ったのに形が崩れて台無しになってしまいます。
また、絞ると毛玉もできやすくなるので止めておきましょう。
脱水は、洗濯機で行うのであれば洗濯ネットに入れたまま30秒程度で済ませます。なるべく短い時間にしないと、アクリルが伸びてしまいますので気をつけてください。
■10 アクリル素材は日かげで平らにネット干し
セータなどアクリルの服を干す時には、ハンガーにかけっぱなしにすると肩にハンバーの跡がついてしまいます。また、アクリルは水に濡れると伸びやすい性質がありますが、水分を含んだアクリルのセーターは重くなっているので洗濯する時以上に伸びやすくなっています。
アクリルのセーター、マフラー、手袋などを干す時には、「吊るして干す」のではなく【平にして干す】ようにしてください。平干し用のネットも販売されていますので、活用すると良いですよ。
■11 アクリル素材にアイロンをかける場合の注意
アクリルをアイロンがけしたい場合には、低温で厚めのあて布をしてかけてください。アクリルは、スチーム無しでかけるのが普通です。通常あて布は綿の薄い布を使う場合が多いのですが、アクリルの場合は「タオル」をあて布にすると良いでしょう。
アイロンの温度を何度まで上げて良いかは、洗濯表示に記されています。アイロンの絵の中に「●」が三つある場合は、200度までの高温でアイロンがかけられます。
「●」が二つある場合は、150度までの中温でアイロンがかけられます。
「●」が一つの場合は、110度までの低音でアイロンがけをします。低音の場合はスチームは無しでかけてください。
アイロンの絵にバツ印が書かれていると、そのアクリルはアイロンがけはできませんので注意してください。
高温でのアイロンが可能です。
中温でのアイロンが可能です。
低音でのアイロンが可能です。
アイロンはかけられません。
アクリル素材を洗濯する時に必要なグッズ
洗濯ネット
洗濯用のネットは、アクリルのセーターやニットを洗濯する時の必需品です。洗濯ネットに入れて洗うことでアクリルの生地が痛まず、毛玉もできにくくなります。100円ショップで販売されている洗濯ネットでも十分ですが、無理やり小さい物に詰め込まず、丁度よい大きさのものを選んでください。
洗濯ネットは網の目が大きいものと、細かいものがありますが、汚れをおとしたい場合は目が大きいものを、洗濯した時の糸くずやホコリが中に入ってアクリルに着くのを防ぎたければ網目が細かいものを選んでください。
おしゃれ着洗い用中性洗剤
アクリル素材を洗う時には洗濯用の中性洗剤を使います。通常洗濯する時に使う洗剤を使ってしまうと、アクリルには刺激が強すぎて質が低下してしまう場合があるからです。おしゃれ着洗い用の洗剤で検索すると、さまざまな商品が出てきますので、香りの有無や、天然素材を使用しているか等、好みで選ぶと良いでしょう。
ライオンのアクロンや、花王のエマールなど、おしゃれ着洗い用洗剤は「中性」です。この「中性」とは「酸性でもアルカリ性でも無い」ということを示しています。「中性」の洗剤は、毛玉を作ったり、襟や袖口がヨレてしまわないようにケアしながら洗い上げてくれる洗剤なので、アクリル洗いにピッタリなのです。
通常洗濯する時の「弱アルカリ性」洗剤のほうが油や汚れは良く落ちますが、デリケートな繊維の場合は必要な成分まで洗い落としてしまう危険性があります。
エコ洗剤として知られている重曹は「アルカリ性」の洗剤で、クエン酸は「酸性」の洗剤です。洗剤を使用する時には、裏の成分表示を見て何性なのかをチェックしてから使うようにしましょう。
柔軟剤
アクリル素材は一度洗濯してしまうと、おしゃれ着洗い用中性洗剤で洗っても、どうしてもゴワゴワしてしまいます。洗った後も着心地を良くするために、好みによって柔軟剤を使うと良いでしょう。
アクリル素材はどんな生地?
アクリルはアクリロニトリルという石油から作られており、ナイロンやポリエステルように人工的に作られた化学繊維です。アクリルの原料を液体にして、小さな穴から押し出すことでアクリル繊維が作られるのです。
1950年にアメリカの化学会社デュポンが最初に作りました。羊毛のようでありながら、人工的に作られた繊維なので虫やカビに強いので、広く世界中で受け入れられています。
セーターやカーディガンといた服や、マフラー、手袋、防止といった防寒具にもよく使用されています。また、アクリル毛糸で編まれたタワシは、食器を洗う時のエコタワシとして使われています。
■アクリル素材の長所と短所
アクリルは化学繊維で作られているので、何と言っても虫やカビに強いという性質があります。一度へこんだり折れたりしても、シワにならず元に戻ってくれるので、扱いも非常に楽です。
その一方で、アクリルは羊毛、獣毛といった自然素材と比べると【毛玉ができやすい】特徴があります。そのため、洗う時にはゴシゴシしたり絞ったりしないよう、注意してください。また、【吸水性や吸湿性はあまり無い】ので、着ていると中に汗がこもってしまう場合があります。
アクリルのセーターを着る時には、インナーは吸湿性の高いものにしたほうが良いでしょう。
人工的に作られた繊維なので、静電気も起きやすくなっています。帯電しやすい体質の方は、静電気防止剤を使うと良いでしょう。
アクリル素材を洗濯する時の注意点3つ
■①アクリル素材は乾燥機で伸縮するので注意
アクリル素材の服は、熱で毛糸が伸びたり縮んだりしてしまいます。乾燥機で早く乾かしたいところですが、日陰の風通しの良い場所で乾燥しましょう。
■②アクリル素材は日光の熱で伸縮、色落ちする危険性も
乾燥機以上に失敗しがちなのが、日光が当たる場所での洗濯物干しです。日光が長時間当たることで、アクリルもかなり熱くなります。伸びたり縮んだりするだけでなく、色がまだらに変わってしまう原因にもなりますので気をつけましょう。
■③アクリル素材を干す時は、水分の重みで伸びる危険性も
アクリル素材は、大変毛糸が伸びやすいのが特徴です。ハンガーにかけて干すと、水分の重みで服の形が変わってしまう恐れがあります。一度伸びて形が崩れてしまうと、元にもどすのはほぼ不可能ですので、アクリル素材のセーターやカーディガン、防止などは、干す時は平らにして干すようにしてください。
まとめ
買ってすぐのアクリル素材の服や、まだ数回しか着ていないアクリルは、いきなり水で洗濯してしまうのではなくクリーニングに出したほうが安全です。水で洗う場合も、洗濯機で洗うよりも手洗いのほうが、繊維の色が変わってきたり伸びてきたりした時にはすぐ洗濯を止められます。洗濯機でアクリルを洗う場合は、もう何度も洗ったことのあるもので、多少繊維が傷んでもかまわないものにしておきましょう。