引越しをして荷物を全て運びだした家の中は、引越してきた当初と同じレベルにきれいにすることが大切です。これまで住んでいた家を最後にしっかりと掃除したほうが、気持ちも良いでしょう。
そこで、引越しの前に効率的に掃除を進めるためのポイントと、可能な限り多く敷金を返金してもらうための方法について解説します。
引越し前の掃除に必要なのは原状回復?
引越し前の掃除で重要なポイントは、原状回復をすることです。原状回復とは、引越してきた時の状態に戻すことを指します。部屋が元通りになっている場合には、敷金もそのまま返金される可能性が高いです。
しかし、壁や畳が日に焼けて変色しているといった場合や、自分が汚した物ではないものまで元通りにするのは困難だといえます。そのため、国土交通省のガイドラインでは「普通の生活を送っていて経年劣化したものについては元通りにする必要はない」と定めていることが特徴です。
可能な限り敷金を多く返金してもらうための掃除は、入居した時の部屋の状態ではなく、入居後、生活をする中で汚れてしまった部分について現状回復をすれば良いということです。部屋の中が自然に変色や変質した場合は、「経年劣化」と判断されます。
経年劣化と判断され、引っ越す人が買い換えたり掃除をしなくても良いものとしては、フローリングのワックスがけや、建物の構造が原因で雨漏りをしている場合、日が当たったことによる畳やフローリングの変色などです。
また、家具を置いたことによってカーペットや床がへこんだ跡、壁にポスターや絵を貼ったことによる日焼けの跡、壁にピンや画鋲を刺した穴が挙げられます。
引越し前の掃除のやり方6ヶ所【場所別】
家具や家電を運び出した後の、部屋は住んでいる時よりも汚れが目につきやすいものです。引越しの前後は非常に忙しいため、効率良く掃除を行うことが重要だといえるでしょう。そこで、キッチン、壁・天井、浴室・洗面所、床、ベランダ、トイレといった場所別に、掃除のやり方とコツを紹介します。
■①引越し前のトイレ掃除方法
トイレ掃除をする際には、最初に便器の汚れをトイレの掃除用シートで拭き掃除をします。便器の水が溜まった部分には黒ずみや黄ばみが発生しているケースが多いため、クエン酸や重曹を使って掃除をしましょう。
重曹やクエン酸を便器の中に入れて、掃除用のブラシでこすり洗いをするとスムーズに汚れを落とせます。黄ばみ汚れはアルカリ性の性質を持つため、クエン酸といった酸性の成分の掃除アイテム使用すると簡単に除去できることが特徴です。
タンク内部の汚れは頑固にこびりついているケースが多いため、引越しをする前に掃除をしましょう。タンクの掃除をする手順は、最初にタンクの水を止め、蓋を外して蓋の裏面に付いている汚れを洗剤で除去します。
次に、タンクの水を抜いて、洗剤を使って内部をブラシでこすり洗いしましょう。掃除を終えたら止水栓を開けてタンク内を洗い、最後に蓋を洗ったうえで蓋蓋を閉めたら完了です。
■②引越し前のキッチン周辺の掃除方法
キッチン周辺は、水垢が蓄積しやすいのでクエン酸を使用する方法がおすすめです。スポンジにクエン酸をつけてこすり洗いをするだけで、スムーズに汚れを落とせます。パイプや蛇口といった細かな部分も、クエン酸を使って掃除をしましょう。
また、荷物を出した後のシンクの下の部分は、扉を開けた状態で一定時間放置し、ニオイを取り除くことが大切です。油汚れや調味料のこびりつき汚れは、キッチンペーパーに洗剤を含ませて汚れを覆うようにパックをして、一定時間放置して汚れを浮かせてから拭き取ります。
キッチンは、ガスコンロや換気扇周辺の油汚れや、蛇口やシンクの水垢をしっかりと掃除することが大切です。水垢汚れはクエン酸の性質を持つアイテム、油汚れはアルカリ性の中性洗剤や重曹を使用しましょう。
■③引越し前の壁の掃除方法
家電や家具を運び出した後の壁は、紫外線が当たったことによって変色しているケースが多いです。壁紙が日焼けしていること自体は問題ないものの、タバコのヤニでついた汚れについては原状回復義務があるため、掃除をする必要があります。
さらに、窓付近の壁紙は風や雨による汚れやカビが付着していることもあるので注意が必要しましょう。毎日汚れが蓄積することによって変色している箇所は、中性洗剤を含ませた雑巾を使って拭き掃除をすれば、ある程度ほどの状態に戻すことが可能です。
ただし、一箇所だけこすり洗いをすると、周辺の壁の色と差が生じてしまう可能性があるので注意しなければなりません。
部屋全体の壁を拭き掃除するのは、時間も手間もかかります。日焼けすることによる変色については対処せず、目立つホコリや汚れだけを掃除するという方法も有効だといえるでしょう。
■④引越し前の洗面所・浴室の掃除方法
洗面所や浴室は、水垢が蓄積しやすく汚れが目立つ場所であるため、クエン酸を使用して掃除をします。さらに、洗濯機を置いていた場所や家具を置いていた場所の下にはホコリが蓄積しているケースが多いです。
水分を含んでいるホコリは頑固にこびり付いている可能性が高いため、床や壁を傷めないように丁寧に掃除をしましょう。除去しきれなかった部分については洗剤を希釈して、ふやかすように浮かせてから落とすことがポイントです。
目に見える場所を掃除した後、浴室の換気扇を掃除するのを忘れないようにしましょう。湿気を吸い込んでおり、長時間作動している換気扇は、水分を含んだホコリが蓄積しています。そのために、希釈した洗剤を含ませて浮かせた後に、丁寧に拭き取って掃除をしましょう。
また、浴室のタイルの間の黒カビは、カビ取り用洗剤を含ませたキッチンペーパーをで覆うようにして一定時間おき、カビを浮かせた後に擦り洗いをします。
しかし、古いタイルの場合は素材を傷つけてしまう可能性があるため、目立たない場所でカビ取り用洗剤を使用してみて、問題がなければ全体の掃除をすることが大切です。
■⑤引越し前の畳や床やカーペットの掃除方法
畳や床は、壁と同様に変色しやすい場所です。特に畳については日焼けが目立ちますが、経年劣化が原因であるため対処するのは難しいといえます。畳が日焼けすることによって変色している場合、日常生活を送っている中では避けられないものであるため、原状回復義務は生じません。
ただし、畳の上に物を置いたりラグを敷いたりしていたことによってカビが発生しているのであれば、除菌スプレーを使用して可能な限りカビを取り除いておきましょう。
カーペットの掃除は、熱いお湯を含ませてしっかり絞った雑巾で拭き掃除をします。カーペットの毛足が立つようにして掃除をすれば、消臭効果を得られます。全体をしっかりと拭いたら、生乾きにならないように乾燥させることが大切です。
家具を置いていた場所がへこんでいたりワックスが剥がれたりしている箇所については、生活している中で自然にできてしまう傷や変質であるため、掃除をする必要はありません。
ただし、黒ずみやカビ、子供が落書きをした跡などの汚れは掃除をしましょう。汚れの種類ごとに使用する洗剤を変えて、素材を傷めないように掃除をすることが重要です。
■⑥引越し前のベランダの掃除方法
室内の掃除をした後、ベランダの掃除を忘れてしまうケースがあるので注意が必要です。物を置いた状態で放置していた場合に、サビや黒ずみが発生していると原状回復義務の対象になるため、水拭きで汚れを落とす必要があります。
日頃ベランダを使用しない場合も、引越しの前にはホウキとちりとりを使って大きなゴミを掃いておきましょう。
洗濯物干していたり物を置いたりしていない場合でも、砂や落ち葉などで汚れます。バケツで水を流して、たわしやデッキブラシを使ってこすり洗いをすると簡単に掃除することが可能です。
引越し前の掃除の注意点7つ
引越し前の掃除では、借主負担になるものと貸主負担になるものがそれぞれ異なります。そのため、引越し前の掃除をする際には、どの程度原状回復義務があるのかを確認してして、掃除の範囲を見極めることが大切です。
■画鋲の穴は補修する必要はあるのか
原状回復に関するトラブルやガイドラインには、ポスターやカレンダーを貼る際に開けた画鋲の穴については基本的に貸主負担であると定めていることが特徴です。
しかし、ガイドラインは法律に基づいて作られたものではないため、画鋲の穴の数が非常に多い場合や、貸主が補修費用を保障すべきであると判断した際には補修費用を支払わなければならない場合もあります。
■壁のクロスがめくれている場合の注意点
壁のクロスを傷つけてしまい、めくれた場合には、借主に責任があるので借主が補修費用を負担する必要があります。ただし、経年劣化によってめくれているのであれば、どの程度の年数住んでいたのかによって負担する金額は変動することが特徴です。
ガイドラインには、2年入居でおよそ7割、6~8年入居であれば価値が下がるので借主が負担する必要はないと明記されています。
しかし、あくまでもガイドラインに記載されている負担額であり、借主がどの程度負担するのかは契約内容ごとに違いがあるので、詳細な金額は契約書をチェックしましょう。
■ペットと一緒に住んでいた場合の壁や柱の傷について
ペット入居可能な物件は、通常の契約とは異なり、特約が付いているケースが多いです。そのため、ペッドが柱や壁に傷をつけた場合には借主が負担しなければなりません。ただし、どの程度の傷なのかによって貸主が負担するケースもあるので、退去時に確認する必要があるでしょう。
■荷物を残して退去した場合の処分費用
基本的に、借主が荷物を残していった場合でも、貸主が勝手に荷物を処分することは違法行為にあたります。
契約が終了したから処分してくれる、一目で不用品やゴミであることが分かるものは処分してくれると考える人も多いですが、賃貸借契約が終わった後も部屋に残されている家電や家具、そのほかの物の所有者は引越しをした人であるため、勝手に処分した際には損害賠償請求を対象になるのです。
そのため、貸主や管理会社から必ず連絡が入り、処分することを希望した場合には処分にかかった費用を請求されます。また、万が一連絡が取れない場合には訴訟を起こし、強制的に荷物を処分するといった大きな問題に発展する可能性があるため、荷物は残していかないように注意しましょう。
■ふすまや障子、畳を傷つけた場合の注意点
ふすまや障子に穴を開けたり汚したりした場合には、借主負担になります。また、畳を交換しなければならない場合に全ての交換代金を請求されることがありますが、借主が負担しなければならないのは故意に汚してしまったと畳のみです。
畳を1枚だけ交換する場合には、他の畳との色が合わず不自然になるという理由で全て交換する必要があるとして代金を請求されるケースがありますが、不当な請求であるため認められません。そのため、畳を全て交換するための費用を請求された場合には断りましょう。
■タバコのヤニやニオイによる汚れ
タバコのヤニやニオイが室内の壁や床に付着した場合は、借主の負担で補修しなければなりません。基本的には、壁紙を全て交換する必要があります。タバコのヤニやニオイが壁につかないようにキッチンの換気扇の近くでタバコを吸う人も多いですが、ほとんど無意味です。
換気扇の下でタバコを吸った場合も、タバコのヤニやニオイは室内に広がるため、壁紙は全て張り替えするケースが一般的です。
■壁や床に大きな傷をつけた場合の注意点
フローリングや床に物を置いていた際にできるへこみや変色ではなく、荷物を運び込む際や移動させた際に大きな目立つ傷をつけてしまった場合には、借主負担で補修しなければなりません。
特に、引越しで荷物を持ち込む際や運び出す際に傷をつけてしまうケースがあるため注意が必要です。引越しをした後には室内全体をチェックし、大きな傷や汚れが付いていないか確認する必要があります。
もしも、傷を付けられた場合には、引越し業者や管理会社にする連絡をすることが重要です。
引越し前の掃除のタイミングはいつ?
キッチン周辺の油汚れやバスルームのカビといった汚れが目立つ場合は、2週間程度前から掃除を始めましょう。しかし、使用頻度が高い場所を早い段階で掃除をしても再度汚れてしまうため注意が必要です。
汚れが目立たない場合には、引越し1週間前程度から掃除を進めれば問題はありません。日頃掃除をこまめに掃除をしている場合や、入居してから年数が少ない場合は、ほとんど室内が汚れていないケースもあるでしょう。室内の汚れが目立たない場合には1週間程前から掃除を始めても良いでしょう。
引越し前の掃除と敷金の関係
原状回復義務の対象になるものを掃除していないと、入居の際に支払った敷金からクリーニング代金が差し引かれます。
敷金とは、部屋を借りる人が貸主に渡す保証金のことであり、住んでいる時に家賃を支払えなかった際に敷金で補填することが目的であるため、家賃の支払いが遅れていなければ入居している期間中預けていることになります。常識の範囲外の傷や汚れが付いている状態で引越した際には、敷金を使ってクリーニング費用支払い、残りを返金されるのです。
ただし、原状回復しなければならない傷や汚れが目立ち、クリーニング費用がかかる場合、返金される敷金の金額も少なくなるでしょう。
また、2020年4月の民法改正に伴い、敷金に関する規定が変わります。原状回復については、借主が普通に日常生活をしている中で損傷したり消耗したりした部分、経年劣化に関しては、借主に原状回復の義務がないとされるのです。
しかし、現状回復は賃貸契約の際に特約で決められているケースもあるので注意しましょう。掃除をする前に契約書をチェックしたり、管理会社に問い合わせたりすることが大切です。
敷金なしの場合引越し前の掃除をしないとどうなる?
敷金を支払っていない場合、預けているお金がないため、クリーニング費用を支払う必要がないと考える人が多いでしょう。実際に差し引くものがない状態ですが、一切掃除をしていなければ別途クリーニング費用を請求されることがあります。
そのため、敷金がない物件であったとしても、引越し前にはしっかりと掃除をしましょう。
まとめ
引越し前後は忙しいですが、退去する部屋を掃除することが大切です。長期間の汚れが蓄積していると掃除をするのにも時間がかかるため、荷物の片付けと同時にできる範囲で掃除を進めておく必要があります。
荷物を全て搬出した後であれば掃除を行いやすいので、洗剤やブラシなどを買い揃えて部屋をきれいにしましょう。
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